糖尿病は、すい臓から分泌されるインスリン量が足りなかったり、働きが悪くなったりすると、摂取した食物エネルギーを正常に代謝できなくなり血糖値(血液中のブドウ糖量)が慢性的に高い状態になる疾患。
この糖尿病を大きく分けると「1型糖尿病」と「2型糖尿病」があり、そのほかには「妊娠糖尿病」や「特定の原因によるその他の糖尿病」があります。
本記事では、日本の糖尿病患者の90%以上を占める2型糖尿病を中心に、糖尿病の種類について解説します。
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2型糖尿病は日本の糖尿病患者の90%以上を占めています
日本の糖尿病患者の90%以上が2型糖尿病です。
40歳を過ぎた中高年で発症する場合がほとんどで高齢になるにつれて発症率が高くなります。65歳以上の約26%が2型糖尿病患者です。
一方、かつては小児期や青年期の2型糖尿病はまれでしたが、最近は増加する傾向が見られます。
2型糖尿病になると、インスリン分泌低下やインスリン抵抗性がおこり、血糖値が高くなります。
インスリン分泌低下は、すい臓の機能低下により十分な量のインスリンがランゲルハンス島β細胞から分泌されない状態。
インスリン抵抗性は、十分な量のインスリンが分泌されているけれども、効き目が鈍くなってブドウ糖の取り込み能力が低下して高血糖になる状態。
2型糖尿病の原因は?
2型糖尿病の原因には、遺伝的要因、加齢や悪習慣などの環境的要因が複合的に関与しています。
遺伝的要因は原因の一つ。すい臓のランゲルハンス島β細胞で生成されて分泌される体内で唯一血糖を下げることのできるインスリンが、日本人は遺伝的に弱い人が多いといわれています。
また、家族に糖尿病患者がいる方は同じ遺伝子や体質を受け継いでいる可能性があるため、検査を受けるなど注意が必要です。
遺伝的要因や加齢に加え、2型糖尿病は食べ過ぎ、運動不足、肥満、ストレスなどの日常生活習慣に要因があるとされています。これが2型糖尿病が生活習慣病といわれる所以です。
とくに、肥満の人はインスリンが効きにくくなり(インスリン抵抗性)、正常な血糖値を維持するのに大量のインスリンが必要となります。2型糖尿病の患者様の80~90%が過体重もしくは肥満です。また、肥満には至らない内臓脂肪が増える「メタボリックシンドローム」と呼ばれる状態でも発症しやすくなります。
2型糖尿病の症状
2型糖尿病の症状は初期段階では現れないこともあり、気が付かないうちにゆっくり進行し悪化します。
症状が現れにくい2型糖尿病ですが、以下のような症状がある方は糖尿病の可能性があります。病院で検査を受けるなど注意が必要です。
- 疲労感:インスリンの働きが悪くなると、ブドウ糖をうまくエネルギーに変換できないため疲れやすくなる。
- のどの渇き:糖尿病の典型的症状。よくのどが渇き、水分を多く摂りたくなる。
- 目のかすみ:目の奥の網膜変化や眼底出血などが原因で目がかすみやすくなる、視力が低下する。
- 頻尿・多量:尿からでる糖分が多くなり、のどが渇き飲水が多くなることで排尿の回数や尿の量が多くなる。
- 足のしびれ・むくみ:足の感覚を司る神経の障害で足に軽いしびれやむくみなどがおこる。
1型糖尿病は免疫反応の異常が原因
インスリンを出すすい臓に自分への免疫反応が起こり、β細胞が壊されてそれに遺伝的因子や何らかの環境因子が加わって、インスリンが出なくなる(インスリン分泌低下)のが1型糖尿病です。
世界全体では糖尿病患者の約5%が1型糖尿病と言われていて、10代の若い世代を中心に幅広い年齢で発症します。
遺伝的要因、加齢や悪習慣などの環境的要因が複合的に関与する2型糖尿病とは、原因や治療法が大きく異なります。
1型糖尿病でβ細胞が壊される原因はよくわかっていませんが、免疫反応が異常になり自分攻撃することが原因と考えられています。
免疫反応が異常になることで、自分の体のリンパ球がすい臓のインスリンを作り出すβ細胞を誤って攻撃して大部分が破壊されます。
β細胞が破壊されるとインスリンを作りだすことができないため、血液中のブドウ糖を細胞に取り込むことかできずに高血糖となります。
インスリンを自分の体内で作り出すことができないため、インスリンを補う治療が必須となります。毎日数回のインスリン自己注射、あるいはインスリンポンプという医療機器による注入が必要となります。ほかにはすい臓移植やすい島移植などの治療法もあります。
妊娠糖尿病とは?
妊娠糖尿病とは、妊娠中に初めて判明したあるいは発症した糖尿病には至っていない血糖上昇のこと。
妊娠中は軽度の高血糖でも胎児に影響を与えるため、糖尿病に至っていない方でも妊娠糖尿病と診断されることがあります。
妊娠糖尿病は、肥満の方、高齢出産や2型糖尿病の家族がいらっしゃる方におこりやすいといわれ、妊婦の約7~9%が該当するとされています。
妊娠中に胎盤から分泌されるホルモンにはインスリンの働きを抑える作用があります。そのため食後の血糖値が上がりやすくなります。とくに胎盤が発達する妊娠中期以降は血糖値が上昇しやすくなります。
妊娠糖尿病と診断された方は妊娠中の血糖値をしっかり把握し、血糖を健康な妊婦に近い状態にコントロールすることが必要です。
血糖値をコントロールにするために、食事の工夫やインスリン注射が必要になることがあります。
多くの場合出産後に高い血糖値は改善しますが、妊娠糖尿病を経験した方は将来に糖尿病をおこしやすいこともわかっています。
特定の原因によるその他の糖尿病
遺伝子の異常、糖尿病以外の病気や治療薬などが原因で、血糖値が上昇し糖尿病を発症することがあります。
- 遺伝子の異常:すい臓のβ細胞機能に関わる遺伝子異常。インスリン作用の伝達機構に関わる遺伝子異常。
- 他の病気が原因:すい炎やクッシング症候群、先端肥大症、グルカゴノーマ、甲状腺機能亢進症、ダウン症候群などの病気。
- 治療薬が原因:血糖値に影響を及ぼすステロイド剤や利尿薬などの長期使用。