これまでこの城内病院ホームページでは、糖尿病の概説や早期発見の必要性などについてお話をしてきました。
いよいよ糖尿病の治療がテーマとなります。本記事では治療の目的、血糖値コントロールについてお話しします。

(関連リンク)

糖尿病治療の目的とは?

体操をする高齢者の男女 症状を自覚しにくい糖尿病は、気づかないうちに進行する病気。慢性的な高血糖によりおこる神経、目や腎臓などの合併症は生活の質(QOL)が低下させます。
さらに血管の動脈硬化が進行すれば、心臓病や脳卒中などのリスクの高い心血管イベントがおこるリスクがあり、健康寿命を保つことが困難になります。

つまり糖尿病治療の目的は、合併症による生活の質(QOL)低下を防ぎ、健常な人と同じように健康寿命を保つこととなります。
そのためには、食事療法、運動療法や生活改善を基本とし、さらに状況に応じた薬物療法を組み合わせた治療で、血糖値を正常値により近づけて良好な状態にコントロールする必要があります。

血糖コントロールと指標HbA1cについて

血糖値を正常値により近づけて良好な状態にするための血糖コントロール。
食事療法、運動療法や生活改善、薬物療法を組み合わせた治療で、血糖値を適切な範囲でコントロールすれば、合併症の予防、またはすでに合併症のある方では症状の悪化を防ぐことが可能です。

この血糖コントロールの最も重要な指標としてHbA1cが用いられます。
HbA1cとは、血液中の糖化ヘモグロビン量を示す数値で、検査前1~2カ月間の平均血糖値を示しています。つまり検査前の1~2カ月の血糖値が高いほどHbA1c値も大きくなります.

血糖コントロールの具体的な目標値について

患者様の治療方針は年齢、生活環境、症状の進行度などに応じて決定されます。治療による血糖コントロールの目標値も患者様それぞれに合わせたものとなります。

例えば、高齢者や合併症が進行して治療を強化することが困難な患者様では、血糖コントロール目標値を少し緩やかなHbA1c 8.0%未満に。
若い方や食事療法や運動療法で改善が見込まれる方の目標値はHbA1c 6.0%未満。
そして、糖尿病の合併症をおこさない、または症状を悪化させないためには、目標値のHbA1c 7%未満にしておくことが重要とされています。

HbA1c 6.0%未満:血糖正常化を目指す目標値
適切な食事療法や運動療法だけで達成可能な場合。または薬物療法中でも低血糖などの副作用なく達成可能な場合の目標とする。
HbA1c 7%未満:合併症予防のための目標値
合併症予防の観点からHbA1cの目標を7%未満とする。対応する血糖値としては、空腹時血糖値130mg/dL未満、食後2時間の血糖値が180mg/dL未満をおおよその目安とする。
HbA1c 8.0%未満:治療強化が困難な際の目標値
低血糖などの副作用、その他の理由で治療の強化が難しい場合の目標とする。

日本糖尿病学会 編・著 糖尿病治療ガイド2016-2017 27頁 文光堂 2016 より