インスリンは、すい臓のランゲルハンス島β細胞で生成されて分泌される体内で唯一血糖を下げることのできるホルモン。細胞に対して血液中の糖分の取り込みを働きかけて血糖値を調整します。
血糖を下げるために必要なインスリン。このインスリンを外部から補う必要がある糖尿病患者様の治療法が、インスリンの自己注射です。
対象になるのは、すい臓からインスリンがほとんど分泌されない1型糖尿病患者とすい臓を刺激してインスリンを分泌させる薬が効かなくなった2型糖尿病患者です。
不足したインスリンを注射で補うことで、健康な方のインスリン分泌の状態に近づけます。
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インスリン療法とは?
インスリン分泌には、基礎分泌と追加分泌の2種類があります。24時間常に分泌されて血糖値を調整する基礎分泌。食事などによって上昇する血糖値に応じて調整する追加分泌。
糖尿病になると、この2種類の分泌が正常に機能しなくなります。
1型糖尿病は、基礎分泌と追加分泌の両方が障害されている状態。
2型糖尿病では、追加分泌が障害されているが、基礎分泌はある程度保たれている状態。さらに進行すると基礎分泌も障害される場合があります。
基礎分泌も追加分泌も障害されている1型糖尿病患者、インスリンを分泌させる薬が効かなくなった2型糖尿病患者には、不足しているインスリンを注射で補う必要があります。
インスリンを注射するインスリン療法は、患者様の血糖値とインスリン分泌の状態に応じて、1~2種類のインスリンを1日1~4回注射します。
基礎分泌と追加分泌によるインスリン分泌パターンが健康な人と同じようになるように、必要なタイミングに必要な量のインスリンを注射で補い、血糖コントロールを良好な状態に近づけます。
インスリン療法が適応となる方 絶対的適用と相対的適用
インスリン療法が適応となる方は、基本的に必須な方(絶対的適応)と望ましい方(相対的適応)の2つに分けられます。
インスリン療法が必須な方(絶対的適応)
- インスリン依存状態:自身によるインスリン分泌がほとんどなく、インスリン補充が必須の方。
- 高血糖が理由の昏睡時:糖尿病ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖状態など。
- 重症の肝障害や腎障害を合併している。
- 重症の感染症や外傷がある。中等度以上の外科手術を行う場合。
- 糖尿病合併妊婦。妊娠糖尿病で食事療法だけでは血糖コントロールが不十分な方。
- 静脈栄養時の血糖コントロールのため。
インスリン療法が望ましい方(相対的適応)
- インスリン非依存状態でも、著しい高血糖(たとえば、空腹時血糖値250mg/dL以上、随時血糖値350mg/dL以上)を認める場合。
- 血糖値を下げる飲み薬では良好な血糖コントロールが得られない場合。
- やせ型で栄養状態が低下している場合。
- 糖尿病以外の病気で、血糖値が上がる治療薬を使用しなければいけない場合。
- 内服での血糖コントロール不良の糖毒性状態を積極的に解除する場合。膵臓を休ませることで、肝機能を保持・回復させるため。
日本糖尿病学会 編・著:糖尿病治療ガイド2018-2019, 文光堂, 61-62, 2018より改変