からだと脳を休めるために不可欠な睡眠。その睡眠を良質にするには、2つの睡眠を司るリズムが正しく機能することが必要です。
- 概日リズムが正しく機能する。
- 睡眠中のノンレム睡眠とレム睡眠が、リズムよく繰り返される。
概日リズムとは、脳の視交叉上核という所にある体内時計によって、体のさまざまな臓器が約24時間の周期で動くこと。
毎日ほぼ同じ時間に寝て同じ時間に目覚める健やかな睡眠は、この概日リズムが正しく機能しているからです。
睡眠中の脳は、完全に活動を休止しているわけではなく、ノンレム睡眠とレム睡眠という異なる2つの睡眠状態を約90分間の周期で繰り返しています。ノンレム睡眠とレム睡眠をリズムよく繰り返すことで、良質な睡眠が生み出されています。
概日リズム ~規則正しい睡眠のリズムを作る3つの仕組み~
からだと脳を休めるために不可欠な睡眠。その睡眠のメカニズムには、恒常性維持機構と体内時計機構と覚醒調節機構の3つの仕組みが関わっています。
この3つの仕組みが、それぞれきちんと機能することで、夜の決まった時間に眠くなり朝の決まった時間に目が覚めるという規則正しい睡眠のリズムが作られます。
恒常性維持機構
恒常性維持機構とは、目が覚めている間に疲労が脳に蓄積すると、脳の活動が低下して眠くなる睡眠欲求のことです。
睡眠欲求は覚醒時間とともに強くなります。たとえば、徹夜して長時間おきていると、次の晩にぐっすりと長時間眠れるのはこの仕組みのためです。
体内時計機構
体内時計機構とは、夜暗くなると脳から分泌される睡眠ホルモン・メラトニンが体温や血圧を下げて、自然な眠りに導く仕組みです。
反対に、夜に明るい光を浴び続けるとメラトニンが分泌されずに不眠の原因となります。
覚醒調節機構
覚醒調節機構とは、日中に覚醒物質であるオレキシンが分泌され覚醒状態を維持する仕組みです。夜暗くなると覚醒物質であるオレキシンの分泌量が減少することで、眠くなります。
ノンレム睡眠とレム睡眠のリズムが良質な睡眠につながる
通常、睡眠はノンレム睡眠に始まり、約60~90分間に段階的に深いステージに移行するノンレム睡眠が続いた後、最初のレム睡眠が現れます。
その後はノンレム睡眠とレム睡眠が、約90分間の周期で繰り返して現れます。このノンレム~レム睡眠の周期は、一晩に4~5回繰り返されます。
ノンレム睡眠は、昼起きている間に蓄積した脳の疲労を、睡眠の前半に集中的に冷却し脳を休養させる睡眠。
レム睡眠は、全身の筋肉を弛緩させることで省エネしてからだを休める睡眠。
約90分間の周期でリズムよく繰り返すこの異なる2つの睡眠状態が、からだと脳を充分に休養させることで良質な睡眠を生み出します。
- ノンレム(NREM:Non Rapid Eye Movement)睡眠
- 急速眼球運動を伴わない睡眠。脳波に徐波(slow wave:低周波・高振幅の脳波)がみられ、特徴的な脳波のパターンと徐波の量によって4段階に分けられる。とくに4段階目は徐波が最も出現する深いノンレム睡眠。
- レム(REM:Rapid Eye Movement)睡眠
- 脳波に非常に浅い睡眠のパターンがみられ急速眼球運動を伴う睡眠。睡眠中でも急速に眼球が動き、この時夢体験が現れることが多い。手足の筋肉の緊張は抑制がかかり、下あごの近くにある筋肉のオトガイ筋の活動が消失するのが特徴。
概日リズムとノンレム睡眠・レム睡眠が機能しないと睡眠障害につながります
睡眠を司る概日リズムとノンレム睡眠・レム睡眠が正しく機能することで、睡眠は良質なものとなって私たちの健康を支える基盤となります。
その反対に、概日リズムとノンレム睡眠・レム睡眠の1つでもしっかりと機能しないと睡眠障害を引き起こします。
(関連リンク)
睡眠障害 城内病院の検査・診断と治療について
たとえば、寝ている間に呼吸が止まったり、気道の空気の流れが悪くなったりする睡眠時無呼吸症候群の方は、何度も目が覚めてしまうことで、睡眠のリズムが崩れて睡眠が浅くなり、睡眠の質も低下します。
そのために、糖尿病や高血圧などの生活習慣病につながるだけでなく、さらには、脳梗塞や心筋梗塞といった心血管イベントを引き起こす可能性もあります。
また、社会問題となっている睡眠時無呼吸症候群の方による重大事故の原因は、自分では睡眠時間を充分にとっているつもりでも、しっかりと良質な睡眠が取れないために起こる強い眠気による居眠りや集中力の低下です。
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睡眠時無呼吸症候群(SAS)外来
睡眠時無呼吸症候群(SAS)(1) 危険性とメカニズム
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終夜睡眠ポリグラフィー検査装置を導入しました
城内病院は睡眠時無呼吸症候群に積極的に取り組んでいます