この度、城内病院では終夜睡眠ポリグラフィー検査装置を導入しました。睡眠時無呼吸症候群(SAS)やナルコレプシーなどの睡眠障害に対して正確な診断を可能にします。
終夜睡眠ポリグラフィー検査は、睡眠障害に対する世界共通で確立した検査法です。

終夜睡眠ポリグラフィー検査とは

終夜睡眠ポリグラフィー検査
終夜睡眠ポリグラフィー検査

患者様に個室で1泊入院していただきます。8時間ほど眠っている間に睡眠障害の正確な診断に必要なデータを採取するため、さまざまな電極やセンサーを患者様の全身に取り付けます。

睡眠障害の原因を総合的に評価するために必要な検査項目は、寝ている間の脳波や眼球・筋肉の動き、パルスオキシメーターで測る酸素飽和度、心電図、いびきの有無・いびき音、鼻の気流などです。

どのような睡眠障害を検査できますか?

たとえば、日中に眠気に襲われると訴える患者様は、睡眠時無呼吸症候群以外にも、ナルコレプシーや概日リズム睡眠障害のような他の病気も考えられます。
つまり、睡眠障害のさまざまな病気の中から患者様の病気を特定するには、終夜睡眠ポリグラフィー検査の精密性が必要とされるのです。

終夜睡眠ポリグラフィー検査で特定できる病気

  • 睡眠呼吸障害:睡眠時無呼吸症候群(SAS)、上気道抵抗症候群
  • 過眠症:ナルコレプシー、突発性過眠症
  • 概日リズム睡眠障害:睡眠相後退症候群、時差ボケ、シフトワーク睡眠障害
  • 睡眠時随伴症:レム睡眠行動障害、睡眠時遊行症(夢遊病)、周期性四肢運動障害

終夜睡眠ポリグラフィー検査で取得するデータとは?

患者様が寝ている間に、体に付けたさまざまな電極やセンサーから診断に必要なデータを取得します。

  • 脳波:睡眠の深さ、睡眠のリズム
  • 眼球運動:レム睡眠の有無やリズム
  • 鼻と口に付ける温度センサー:無呼吸(10秒以上の気流停止)の評価
  • 鼻圧センサー:低呼吸(呼吸による換気が10秒以上50%以下に低下する)の評価
  • オトガイ筋電図(下あごの近くにある筋肉):レム睡眠の有無
  • いびきモニター:いびきの有無、気道の狭窄の有無
  • 胸部と腹部に付けたセンサー:胸部と腹部の換気運動(空気の流れ)
  • 心電図:心拍数の変化を測る。不整脈などの発見につながる。
  • パルスオキシメーター:指先に付けた装置で血中酸素飽和度を測る。
  • 前頚骨筋(足の脛付近の筋肉)筋電図:睡眠中の四肢の動き
  • 体位センサー:睡眠中の体の動き

人間の眠りはノンレム睡眠とレム睡眠で成り立っています

通常、人間の夜間の睡眠はノンレム睡眠に始まり、約60~90分間に段階的に深いステージに移行するノンレム睡眠が続いた後、最初のレム睡眠が現れます。
その後はノンレム睡眠とレム睡眠が約90分間の周期で繰り返して現れます。

このノンレム~レム睡眠の周期は、一晩に4~5回繰り返されます。とくに脳の休養に必要な深いノンレム睡眠は入眠して間もない前半に多く現れ、朝に向けて浅いノンレム睡眠が増加します。
また、朝に向けてレム睡眠の持続時間が次第に延びるのが正常の生理的な睡眠状態です。

ノンレム(NREM:Non Rapid Eye Movement)睡眠:急速眼球運動を伴わない睡眠。脳波に徐波(slow wave:低周波・高振幅の脳波)がみられ、特徴的な脳波のパターンと徐波の量によって4段階にわけられる。とくに4段階目は徐波が最も出現する深いノンレム睡眠。

レム(REM:Rapid Eye Movement)睡眠:脳波に非常に浅い睡眠のパターンがみられ急速眼球運動を伴う睡眠。睡眠中でも急速に眼球が動き、この時夢体験が現れることが多い。 手足の筋肉の緊張は抑制がかかり、下あごの近くにある筋肉のオトガイ筋の活動が消失するのが特徴。

終夜睡眠ポリグラフィー検査の解析 睡眠時無呼吸症候群の場合

睡眠障害の中でも患者数の多い睡眠時無呼吸症候群も、検査で得られたさまざまなデータを解析して特定されます。
データがどのように睡眠時無呼吸症候群の特定に使われるか、例をあげてみていきましょう。

脳波や眼球運動のデータ

脳波や眼球運動のデータを解析することで眠りの深さ・リズムが分かります。通常の方は、眠り始めの1~2時間に深い眠りの状態であるノンレム睡眠が現れます。
一方、睡眠時無呼吸症候群の患者様は、この時間帯に深いノンレム睡眠が現れず眠りが浅くなります。

鼻と口に付けるセンサー

鼻と口に付けるセンサーでは、睡眠中の1時間の無呼吸と低呼吸の合計回数である無呼吸低呼吸指数(AHI)を評価できます。AHIは睡眠時無呼吸症候群の重症度の評価につながります。

ダイエットや生活習慣の指導だけでいいのか、マウスピース療法、あるいは夜間睡眠中に鼻から酸素を機械で送り込むCPAP(持続陽圧呼吸)療法にするかなどの治療方針の選択において、AHIは重要な判断要素となります。

胸部の呼吸運動センサー

胸部の呼吸運動センサーのデータからは、閉塞性睡眠時無呼吸症候群であるか、あるいは中枢性睡眠時無呼吸症候群であるかを区別できます。
その理由は、閉塞性は息をしようとする胸部の動きにセンサーが反応してデータに現れます。一方、中枢性は呼吸司令自体が止まるため胸部に動きがなくデータに現れないからです。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群:顎が小さい、扁桃腺の肥大・肥満や老化による上気道の開きを維持するための喉周りの筋肉の低下などの原因により、睡眠時に口から酸素が入る上気道が狭窄あるいは閉塞する。
その結果、いびきが多くなったり呼吸が止まると、呼吸が苦しくなって正常の深い睡眠が障害される。

中枢性睡眠時無呼吸症候群:心不全や脳卒中、腎疾患などにより、脳からの呼吸司令が止まり反復性の無呼吸や低呼吸が出現する。

(関連リンク)
睡眠時無呼吸症候群(SAS)(3) 城内病院での検査と治療

検査当日と翌朝のスケジュール

終夜睡眠ポリグラフィー検査は1泊入院していただきます。
患者様にプライベートかつ静かな環境でぐっすりと眠っていただくために、お部屋は個室となります。

16:30~18:00
来院 / 受付
18:00~19:00
着替え / シャワー
身体に多くのセンサーや頭にヘッドギアを装着するため、体と髪を洗って下さい。
19:30~20:30
検査準備 / 電極・センサー装着
22:00~
消灯・就寝/検査開始
~7:00
検査終了 / 電極・センサー取り外し
7:00~8:00
シャワー / 着替え / 退院
そのまま会社に出社できます。

終夜睡眠ポリグラフィー検査でよくある質問

Q1 検査のために用意するものはありますか?
A. 特にございませんが、次の日に会社などに行ける準備をして来院してください。
Q2 病院で夕食をいただけますか?
A. 患者様のご希望があれば夕食をご用意します。ご予約下さい。
Q3 週末の夜も検査をしていますか?
A. 城内病院では、月曜日から金曜日まで検査を行っています。
Q4 検査に緊張してなかなか眠れないときはどうすればいいですか?
A. どうしても眠れないときは睡眠薬を使うことがあります。
Q5 検査中にトイレにいけますか?
A. トイレは自由に行くことが可能です。
Q6 入院検査費用はどのくらいかかりますか?
A. 健康保険が適用されますので、3割負担で個室代を含め2~3万円程です。
Q7 検査の解析結果が出るのはいつですか?
A. 解析結果が出るのは7~10日後です。

(関連リンク)
睡眠時無呼吸症候群(SAS)外来
睡眠時無呼吸症候群(SAS)(1) 危険性とメカニズム
睡眠時無呼吸症候群(SAS)(2) なりやすい方、症状、予防法