高血圧とは、安静状態での血圧が慢性的に正常値よりも高い状態のこと。
慢性的な高血圧状態は血管に持続的な圧力をかけます。すると血管は内膜が傷ついたり、しなやかさが失われて固くなったりするため、動脈硬化が促進されます。
動脈硬化は脳、心臓、腎臓などに影響を与え、リスクの高い病気がおきやすくなります。

最近の研究で、病院の診察室で測定する血圧に加えて家庭で測定する血圧が、とくに臓器障害や脳心血管イベントの発症などの重症度に関わっていることがわかってきました。
本記事では、家庭で測定する家庭血圧のメリットや測定方法を中心にお話します。

(関連リンク)

血圧とは?

血圧とは心臓から送り出された血液が、血管の内壁を押す力のこと。血圧が一定以上に高い状態を「高血圧」と呼びます。

血圧を決める要因は、おもに心拍出量と血管抵抗です。
心拍出量は、ポンプの役割をする心臓が1分間に血液を送り出す血液量。心拍出量の上昇は血圧を上げる要因です。
血管抵抗は血液が血管に流れ込む際に受ける抵抗のこと。血管が固くなったり細くなったりして流れにくくなることも血圧を上げる要因です。

高血圧はサイレントキラー

高血圧はサイレントキラーとも言われます。
その理由は、自覚症状がほとんどないため治療せずにいると、血管内壁に高い圧力がかかり続けて気づかないうちに動脈硬化が進行するからです。

血管は全身を巡っているので、高血圧による動脈硬化は全身に悪影響を与え、リスクの高い病気をおこしやすくなります。
とくに脳、心臓、腎臓は動脈硬化による影響を受けやすい臓器です。

脳:脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など。脳卒中と呼ばれる病気は高血圧によって最もリスクが高くなる。

心臓:心筋梗塞、狭心症、心臓肥大による心不全など。高血圧は血液を送り出す心臓に負担をかけるため。

腎臓:腎不全、慢性腎臓病など。血圧が高いと腎臓にも大きな負担がかかり、腎臓の組織自体が固くなる。尿を濾しだす力がなくなって最終的には透析が必要になることも。

高血圧の基準とは?

日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン」により、成人における血圧値が分類されています。

収縮期血圧(最高血圧)とは、心臓が収縮して血液が送り出されているときの最も高い血圧のこと。
拡張期血圧(最低血圧)とは、心臓に血液が戻ってきているときの最も低い血圧のこと。

診察室血圧とは、病院の診察室で医師や看護師が測る血圧。家庭血圧とは、自宅で自分で測る血圧。
一般に家庭での測定値は病院よりも低めになるため、基準値も少し低く設定されています。

高血圧の基準の表
(日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」より)

高血圧には段階があります

赤字部分が一般的にいう高血圧です。Ⅰ度・Ⅱ度・Ⅲ度の3段階に分類され、医師はこのガイドラインを目安に患者様の年齢や生活習慣を考慮してリスクを判断します。
収縮期高血圧とは、動脈硬化の進んだ高齢者に多くみられ、収縮期血圧だけが高いタイプです。

生活習慣指導はどの高血圧レベルでも行われますが、薬物療法を行うか行わないかは、医師のリスク評価により決定されます。

正常高値血圧と高値血圧は、「高血圧の一歩手前で、注意が必要なレベル」という意味で高血圧予備軍です。生活習慣の改善を要します。
病気になるリスクが高い場合は、正常高値血圧と高値血圧でも薬物治療の対象となります。

継続的に治療経過を観察して、状況に応じた治療をする必要があるため、血圧数値がどこに分類されても一定期間内に医師による再評価が必要です。

家庭で血圧を測るメリットとは?

血圧を測定する高齢者女性のイラスト最近の高血圧学会のガイドラインでは、診察室血圧に加えて家庭血圧にもとづくデータ、とくに早朝の血圧を重要視する方向になってきています。
その理由は、心筋梗塞や脳卒中などの心血管病の発症を予測するデータとして、診察室血圧に比べて家庭血圧が上昇する方が脳心血管イベントの発症や臓器障害に関わっていることが最近の研究でわかってきたからです。

同様に高血圧のリスク判断でも診察室のデータと家庭血圧のデータを参考に治療を考えていく方向とされています。

家庭血圧のデータを医師に提供することはデータ分析・リスク評価に有効で、早期かつ的確な生活習慣指導や薬物治療を可能にします。
家庭での血圧測定をできるだけ長期間継続しておこない、毎日の測定値を記録しておくことが大切です。
家庭で血圧を測るメリットを以下にまとめました。

  • 時間を決めて毎日同じ条件、安定した状態で測ることで信頼性の高いデータを収集できる。
  • 医師による正確なデータ分析・リスク評価を可能にして、早期に正確な生活習慣指導や薬物治療ができる。
  • 治療中の患者様にとっては現在の治療の効果を確認できる。健康管理の目安にもなる。

家庭血圧の測定方法

医師は患者様の年齢や生活環境を考慮に入れて、日本高血圧学会のガイドラインに沿って家庭血圧の測定方法を指導します。
可能であれば、職場などでの昼間の測定もおすすめします。

  • 測定する位置:上腕部。心臓の高さに近い上腕部での測定値が最も安定しているため。
  • 測定回数:朝と夜の1日2回。朝・夜とも 2回ずつ測って平均値をとる。
  • 測定時の条件:朝は起床後1時間以内、排尿後、朝の服薬前。夜は就床前。座った姿勢で1〜2分間安静にした後に測る。