高血圧の治療は食生活改善と生活習慣改善を基本に、患者様のリスクの度合いによって薬物療法が加えます。

本記事では、食生活改善と生活習慣改善のポイントをまとめて紹介します。
高血圧治療中の患者様はもちろん、現状高血圧ではない方の予防にも役立つ記事になっています。

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食生活の改善ポイント

減塩を意識して食事をとる女性のイラスト高血圧の原因となる食事の内容や方法を見直して改善することは、高血圧治療の基本です。
とくに、塩分摂取量の制限つまり減塩は、食生活改善の最重要項目です。

減塩は食生活改善の最重要項目

厚生労働省の2019年の国民健康・栄養調査では、日本人は1日に10g塩分を摂取していると報告しています。
この塩分の過剰摂取が、塩分感受性の高い方の多い日本人には高血圧の最大の原因とされています。
そのため、日本高血圧学会のガイドラインは、1日の塩分摂取量を6g未満にすることを強く推奨しています。

日本食は味付けが塩分中心なため、日本人は塩分を摂りすぎる傾向があります。毎食のメニューや調味料で減塩を心がけることが大切です。

  • 調理で使う塩、醤油、味噌、ソースの量を減らす。
  • 食卓でのかけ醤油やかけソースをやめて、小皿に出して付ける。
  • 薄味の物足りなさを、だしの旨み、こしょうや唐辛子などの香辛料、酢や果物の酸味で補う工夫をしましょう。
  • ラーメンやうどんなどのスープをできるだけ残す。
  • 外食を減らして、自炊で塩分量をコントロールしましょう。
  • 塩分量の多い漬物、レトルト食品やインスタント食品などの加工食品を控える。

カリウム、マグネシウム、カルシウムをしっかり摂りましょう

カリウム、マグネシウムには塩分の排泄を助ける働きがあります。カルシウムには血圧を安定させる効果があります。

カリウム:
腎臓から余分な塩分(ナトリウム)排出することで降圧効果がある。
野菜や果物、海藻類、豆類などに多く含まれる。
腎臓疾患がある方のカリウム摂取は制限されることがあるため、医師に相談してください。
マグネシウム:
塩分(ナトリウム)を排出するカリウムの働きを助ける。カルシウムの吸収も助ける。
海藻、豆・ナッツ類などに含まれる。
カルシウム:
カルシウム不足は副甲状腺ホルモンやプロビタミンDを分泌し、心臓や血管を収縮させて血圧上昇を招く。
小魚や牛乳・乳製品はカルシウムの吸収率が高い食品。

飽和脂肪酸を摂らずに不飽和脂肪酸を摂りましょう

飽和脂肪酸を多く含むバターなどの動物性脂肪を調理に使わないようにして、不飽和脂肪酸を含む植物油(コーン油、亜麻仁油、しそ油、えごま油など)に変更しましょう。血圧が低下するという調査結果があります。

サバ、イワシ、サンマなどの青魚に多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)なども不飽和脂肪酸です。積極的に食べると高血圧の改善が期待できます。

減量も血圧低下の効果あり

肥満またはメタボリックシンドロームは高血圧の原因となるため、食生活で減量を図り血圧を低下させる必要があります。
個人差はありますが、カロリー制限で体重を4~5kg減量すると、血圧を低下させる効果がみられます。

生活習慣を改善して血圧を下げましょう

生活習慣病の高血圧は、食生活はもちろん運動不足や喫煙などの悪い生活習慣も因子となります。生活習慣を見直し改善することで降圧効果が期待できます。

有酸素運動による高血圧改善

ウオーキング二人の男女のイラスト運動とくに有酸素運動は高血圧改善に効果があります。
継続的に運動することで、交感神経の働きの低下による血管の拡張、インスリンの働きの活性化、利尿作用の活発化がおこり、血圧が下がります。
さらに運動により減量できれば、減量による降圧効果も期待できます。

ウオーキングのような有酸素運動を軽く汗ばむ程度に、なるべく継続的に毎日30分以上行うことをお勧めします。

喫煙と過度な飲酒のリスク

喫煙時、血管の収縮や交感神経の緊張により血圧は一時的に上昇します。
喫煙は動脈硬化を促進して、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症や脳卒中などの原因となるリスクがあるため、高血圧の方は禁煙しましょう。

過度な飲酒は血圧を上げます。
禁酒する必要はありませんが、適量の範囲を守り、毎日飲まないようにしましょう。
男性はビール中ビン1本以内、日本酒1合以内、焼酎半合以内。女性は男性の半量程度を健康の目安となる適量とします。

冬のヒートショック、夏の水分不足は要注意

気温の変化によって血圧が上下し、心臓や血管の疾患がおこることをヒートショックと呼びます。
寒い冬の起床時や入浴時によくおこります。

起床時に室温が低いと急激に血圧が上昇することがあります。エアコンのタイマーを利用して部屋を暖めておきましょう。

入浴時、暖房の効いた部屋から寒い脱衣所・浴室に移動すると寒さに対応するため血圧は上昇します。そして、浴槽に入ると急に体が温まるため、血圧が下降します。
冬はこのように血圧の変動が大きくなりヒートショックを起こすリスクが高くなります。

脱衣所や浴室を入るまえに暖めておく、風呂温度を高くしすぎない、湯冷めしないようにするなどに注意すれば、ヒートショックのリスクを軽減できます。

夏に高血圧の方が水分不足になると、血液がドロドロに粘度を増して血管が詰まりやすい状態になり、心血管イベントのリスクが高まります。
高血圧の方は、夏には意識的に水分を補給することを習慣付けてください。