説明する医師イラスト動脈は、体の隅々の細胞に酸素や栄養素を運びます。人体にとって重要な役割を果たす血管です。
動脈硬化とは、老化や糖尿病、高血圧をはじめとする生活習慣病や喫煙などさまざまな原因で血管の弾力性を失い、動脈内にさまざまな物質が沈着して、血管の中が狭くなり血液の流れが悪くなる状態のことです。

動脈硬化は、あなたが気づかないうちに進行します。さらに恐ろしいことに、突然、心筋梗塞や脳梗塞などの危険な病気につながる可能性もあります。今回は、基礎情報を知ることで動脈硬化に対して理解を深めましょう。

血管の構造について

血管断面図まず、血管の構造の説明からはじめましょう。動脈も静脈も、基本的には「内膜」「中膜」「外膜」の3層で構成されています。血液と接している「内膜」の表面を覆っている「内皮細胞」は、血液が固まるのを防ぎ、血管を拡げるなどの動脈硬化を防ぐ働きをします。特に「内膜」と「内皮細胞」は、動脈硬化に関係する重要な部分です。

動脈とは

動脈は、心臓から押し出される血液とともに、酸素や栄養素を体の隅々に運ぶ役割を持つ血管です。さらに、収縮や弛緩することで、血液をスムーズに流す働きもあります。健康な動脈は、ゴムのように弾力性に富み、血圧による血液の圧力も一定に保たれ、内膜もきれいな状態で傷みがありません。血管の狭いところもないので、破れたり、詰まったりしません。

動脈硬化の要因

動脈硬化は、血管の老化現象なので、年を取れば、ある程度は避けられません。しかし、その進行速度には個人差があり、危険な要因を多く持っている人ほど、早く進行します。

  • 脂質異常症:増えすぎたLDL(悪玉)コレステロールが血管の内膜に入り込み、動脈硬化を促進。また、中性脂肪が多いことや、HDL(善玉)コレステロールが少なすぎることも、動脈硬化のリスクを高める。
  • 高血圧:高血圧は血液の圧力で内皮細胞を傷つけ、内皮細胞の動脈硬化を防ぐ働きも失われ、LDL(悪玉)コレステロールが内膜に入り込みやすくなる。
  • 糖尿病:高血糖状態が続くと、内皮細胞の動脈硬化を防ぐ機能が失われ、LDL(悪玉)コレステロールが酸化LDLに変わりやすくなり、動脈硬化が進行。
  • 肥満:肥満で内臓脂肪が多いと、血液中のトリグリセライド(中性脂肪)が過多になる。特に、腹部の内臓脂肪が多い方は、メタボリック症候群といって、脂質異常症や高血圧、糖尿病を合併しやすい傾向がある。
  • 喫煙:体内の活性酸素を増やす喫煙は、内膜に入り込んだLDL(悪玉)コレステロールが酸化LDLに変化することを助長する。喫煙は血が固まりやすくなり、血栓症を起こすリスクを高める。さらに、タバコに含まれるニコチンには、血管を収縮させる作用があり、高血圧のリスクも高める。

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動脈硬化が引き起こす病気

動脈硬化は、ほとんどの場合、痛みなどの自覚症状がないために、静かに症状が進行します。危険な病気や発作を起こした後に動脈硬化だったと、気づくケースはよくあります。ゆえに、動脈硬化は恐ろしい病気なのです。

動脈硬化は、内膜や中膜が比較的よく発育した動脈に起きやすいために、心臓の冠動脈、大動脈、脳、頚部、腎臓、内臓、手足の動脈などによく起こります。

  • 狭心症:動脈硬化により心臓の冠動脈が狭くなって血流が悪化し、心臓が一時的に酸欠状態になること。胸を締め付けるような痛みの発作が起こる。
  • 心筋梗塞:動脈硬化により心臓の冠動脈が詰まって、心筋への血流がなくなり、心筋の一部の細胞が死んでしまうこと。突然死に至ることもある危険な病気。
  • 脳梗塞:脳の血管に動脈硬化が生じ、血栓で完全に詰まって、脳細胞が死んでしまい、その機能を失ってしまうこと。会話に障害を生じ、片側の手足の麻痺が起こることがある。後遺症が残るケースも多く、死に至るケースもある病気。
  • 閉塞性動脈硬化:脚の血管が、動脈硬化で狭窄あるいは閉塞し、血液の流れが悪くなる病気。足がしびれたり、足先が冷たく感じる。歩行時に必要な血液や酸素が足にいきわたらず足が痛む。最悪のケースは、足先が壊死してしまい、足の切断が必要ことも。

大切なことは、動脈硬化を知り理解を深め、自分の血管の状態を正確に把握すること

今回は、動脈硬化の基礎情報を解説しました。動脈硬化は、実は、30代から始まるといわれています。自覚症状のない動脈硬化は、気づかないうちに進行して、恐ろしい病気につながります。大切なことは、動脈硬化について知り、より理解を深め、自分の血管の状態を正確に把握することです。

以下の項目に当てはまる方は、一度、城内病院の循環器科を訪れて、循環器専門医の検査と診断を受けてはいかがでしょう。

  • 健康診断などで脂質異常症が疑われる方。
  • 高血圧や糖尿病の症状をお持ちの方。
  • 肥満や喫煙習慣などの悪い生活習慣があり、血管状態が不安な方。

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