城内病院リハビリテーション部は、高齢患者様のリハビリテーションにおいて、認知症予防のための作業療法を行います。
この作業療法には、シングルタスクトレーニングとマルチタスクトレーニングを取り入れています。

トレーニングでシングルタスク能力とマルチタスク能力を強化することで認知能力は向上します。とくにマルチタスク能力の向上は、認知症予防はもちろん、高齢ドライバーの安全運転にも繋がると考えられています。

認知能力の低下している高齢ドライバーの交通事故の増加は、大きな社会問題となっています。
自動車運転には、マルチタスク能力(同時に複数の動作を行うこと)が求められます。ハンドル・アクセル・ブレーキ・方向指示器などの操作、他車両・歩行者・信号の確認など。
ですから、マルチタスクトレーニングで認知能力を向上させることは、高齢ドライバーの安全運転にも繋がるのです。

今回は、認知症予防のための作業療法で行うマルチタスクトレーニングについて紹介します。

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シングルタスクについて

1つの作業を行うことをシングルタスクといいます。
2つ以上の作業を同時に行うマルチタスクは、1つのものに対して意識が分散され注意力・集中力が低下してしまいます。
しかし、1つの作業を行うシングルタスクでは、1つのものに意識が集まるため、注意力や集中力が分散されません。さらには生産性まで向上すると言われています。

まずは、認知症予防のための作業療法においてもマルチタスクから始めるのではなく、シングルタスクから始めることが大切になります。

マルチタスクについて

マルチタスクとは、複数の作業を同時もしくは短時間に並行して切り替えながら実行することをいいます。例えば以下のような行動です。

  • 音楽を聴きながら本を読む。
  • 電話をしながらメモを取る。
  • 会話しながら歩く。

みなさんは、これらのマルチタスクのほとんどの行動を日常生活の中で無意識に行っています。

マルチタスクトレーニングの効果とは?

マルチタスクを用いたトレーニングは認知症予防に有効とされています。
脳の思考など司る前頭葉と体の動きを司る小脳を、認知課題と運動を組み合わせたマルチタスクトレーニングで鍛えることは、認知症予防に繋がるとされています。
そのため、多くの高齢者施設ではレクリエーションの中にマルチタスクを組み込んで、認知症予防のトレーニングとして活用しています。

マルチタスクは、2つの作業を同時に実行するので注意力や集中力の低下を招くと言われることがありますが、マルチタスクの組み合わせ方によって判断力や生産性の低下を防ぐことも可能です。

マルチタスクトレーニングを紹介します

では、城内病院で行っている高齢者の認知症予防のためのマルチタスクトレーニングから2つ紹介します。

マルチタスクの音楽体操

課題1 音楽を聴く。
課題2 音楽に合わせて全身を動かす。

患者様が真似できるように、見本となるリハビリスタッフがしっかり患者様からみえる位置にいること。
そして、童謡など昔聴いたことがある音楽に合わせて、腕振りや足踏みなど行います。

キーボードの写真
キーボードに合わせて全身を動かす様子

マルチタスクの指体操

課題1 数字を数える。
課題2 指を動かす。

数字を数えながら指を折ります。まず片手で1から5を数え、次は両手で数えます。数字や指の動きに変化を加えることで、様々なパターンの指体操ができます。
例えば、片方の手だけ指を1本折った状態から両手で行うなど、難易度を難しくすることも可能です。

数字を数えている手のアップ
数字を数えている手のアップ2