現在のところ「認知症にならない方法」は発見されていません。しかし、「認知症になりにくい生活習慣」が最近の研究により徐々にわかってきました。

認知症は糖尿病、高血圧や脂質異常症などの生活習慣病がある方のほうが発病・進行しやすく、とくにアルツハイマー型認知症は生活習慣病との関連性が強いと言われています。

今回は、食生活、運動、対人習慣、知的行動習慣、睡眠をテーマとして「認知症になりにくい生活習慣」を紹介します。

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食生活は認知症の予防や進行に深く関わっています

青魚のイラスト近年研究により、食生活が認知症の予防や進行に深く関わっていることがわかってきました。
つまり糖尿病、高血圧や脂質異常症などの生活習慣病を食生活で予防・改善することが重要となります。

たとえば、鯖、秋刀魚、鰯などの青魚に多く含まれる不飽和脂肪酸DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)は、血中コレステロールを減少させて血管の老化を防ぎ生活習慣病を予防・改善します。

体内に増えすぎると細胞を酸化する活性酸素は、血管も酸化させ傷つきやすくするため、アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβタンパクの蓄積にも関連しています。

この活性酸素の増加を防ぐためには、抗酸化成分を多く含む食材(緑黄色野菜、果物、ナッツ類、オリーブオイル、ワインなど)が有効です。
また、喫煙、過度な飲酒、食品添加物、ストレスなどは活性酸素を増やす原因となります。なるべく避け排除しましょう。

アルツハイマー型認知症を予防する食事法「マインド食」とは?

アメリカの研究で、アルツハイマー型認知症を予防する食事法「マインド食」を厳密に実践すると、発症リスクが53%減少することが発表されました。

「マインド食」とは心疾患や高血圧症を予防するために、積極的に摂るべき食材10品となるべく控える食材5品に分けて、食べる頻度も紹介したものです。

積極的に摂るべき食材10品

  • 緑黄色野菜(週6日以上)
  • その他の野菜・根菜類(1日1回以上)
  • ナッツ類(週5回以上)
  • ブルーベリーやイチゴなどのベリー類(週2回以上)
  • 豆類(週3回以上)
  • 魚類(なるべく多く)
  • 鶏肉(週2回以上)
  • 全粒穀物(1日に3回以上)
  • オリーブオイル(普段使う油にする)
  • ワイン(1日にグラス1杯ほど)

なるべく控える食材5品

  • 赤身の肉やその加工食品(牛・豚)(週4回以下)
  • チーズ(週1回未満)
  • バターやマーガリン(1日大さじ1杯未満)
  • お菓子やスイーツ(週5回未満)
  • ファストフードや揚げ物(週1回未満)

有酸素運動は記憶を司る海馬の機能を向上させます

タオルを首にかけ、運動する高齢者のイラスト1日30分以上で週3回以上の有酸素運動は、記憶を司る海馬の機能を向上させ認知症の予防法として効果があるとされています。高齢者にはウォーキングがお勧めです。

ただぼんやりとウォーキングなどの運動をするのではなく、同時に脳を使うように手を複雑に動かしたり、歩きながら計算などを同時に行うと効果的です。

他人と積極的にコミュニケーションを図りましょう

デイケアや地域の奉仕活動などの社会活動で、家族以外の方と積極的にコミュニケーションを取ると、脳と心が活発に働くために認知症の予防効果が期待できます。

とくに退職後に何もやることがなく、社会や地域から孤立すると認知症のリスクが高まります。
退職する前から趣味などを準備して、社会や地域に積極的に関わりましょう。

知的行動習慣は脳を刺激して活性化させます

ゲームに興じる高齢者のイラスト趣味や複数の人数で行うゲームで頭を使いながら指先を動かしたり運動することは、脳を刺激して活性化させます。研究で認知症予防に有効と発表されています。

好奇心を持って新しいことを見たり聞いたり挑戦することは、より脳を活性化させ脳機能の維持に効果を示します。

  • 調べ物をしながらの読書、推敲しながら文章を書く。
  • 手順で頭を使い、作業で手先を使う料理。
  • 他人とコミュニケーションを取りながらの囲碁、麻雀、カードゲームなど。
  • 好奇心を持って美術館、博物館、音楽会に通う。
  • 新しい趣味を開拓してコミュニティーを広げる。

良質な睡眠はアミロイドβタンパクを排出します

良質な睡眠は、アルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドβタンパクを脳から排出する能力を高めることがわかってきました。
反対に、睡眠不足、夜中に何度も起きてしまう浅い睡眠、睡眠時無呼吸症候群は、生活習慣病を引きおこし認知症のリスクを高めます。

1日5~6時間ほどの睡眠時間を確保しましょう。
夜の決まった時間に眠り朝の決まった時間に目を覚ますという規則正しい睡眠のリズムを作ることが大切です。
睡眠時無呼吸症候群が疑われる方は病院で検査を受けて治療しましょう。

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