肩が痛くなった患者のイラスト足立康夫さん(仮名)50代男性

受傷時の状況
仕事中、大きな材木を運んでいる際バランスを崩し倒れて、右肩を直接地 面に強打されました。
仕事
建築業
家族構成
妻・長男・長男嫁と4人暮らし
趣味
釣り 

受傷時はひどい痛みではなかったため、そのまま仕事を続けたそうです。
ところが、その日の夜中、右肩にうずくような痛みが走り、なかなか眠ることができなかったため症状が長引くと仕事に支障をきたすと思い、翌日に城内病院整形外科を受診されました。

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レントゲン検査では異常はみられませんでしたが、医師は以下の2つのテストを行いました。

  • 右腕を内側に捻り、肘を伸ばしたまま上に挙げる。 
  • 右腕を直角に挙げて、肘も直角に曲げる。そのまま内側に捻る。

2つのテストどちらとも、足立さんは肩に違和感を訴えられました。
医師は、「念のため、MRIを撮り精密検査を行いましょう。」と勧め、後日、オープン型MRI装置で患部を撮影しました。その結果、肩腱板断裂と判明しました。

医師は手術を勧めましたが、足立さんはすぐには返答せずに、職場や家族と相談したうえで手術を行うことにされました。

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手術前日に、肩を固定するウルトラスリング(外転装具)の仮合わせを行い、手術後の入院生活の準備を済ませます。

手術直後のリハビリは患者様の痛みに対する不安に気遣うことが大切

無事に手術が成功した翌日、担当リハビリスタッフが部屋に伺うと、足立さんは、「手術翌日からリハビリ!?まだ、傷や肩が痛くて無理なんですけど!」と驚かれていました。手術翌日ということで、足立さんは痛みに対して不安で一杯だったのです。

リハビリスタッフは、「足立さん、なるべく力を抜きましょうね」と声をかけ、リハビリを始めます。
「足立さんは力を抜いてくれるかな?」、「痛みはどのくらい強いのかな?」と気遣いながら、痛みを軽減する目的で、首・肩や肩甲骨周囲の筋肉などをマッサージして少しずつ肩関節周りを動かします。

当初は、苦手意識がひどく、痛みに対しても不安だった足立さんもリハビリに慣れてくると、いつの間にか脱力することを覚えられました。
肩自体も徐々に痛みが減り、夜もぐっすりと眠れるようになりました。

患者様の状態に応じた筋力訓練を施します

手術後7週目、ウルトラスリング(外転装具)を外すことが可能になります。リハビリ時以外はウルトラスリングを装着していた足立さんは、「今日まで、寝返りもうまくできずに辛い日々だった」と。

手術後8週目、少しずつ筋力訓練をスタート!
初めは、足立さんはどんなふうに力を入れていいのかわからず、無理やり手を挙げようとするも上がりません。
担当スタッフは、「肩甲骨の位置が正常よりもずれているし、筋肉自体も細くなっているから、挙がりにくいだろうな。まずは肩甲骨の位置を修正していこう。」と方針を立てます。

筋力訓練を開始して数週間後、足立さんは徐々に力の入れ方もわかるようになって、肩も挙がるようになってきました。
そこで担当スタッフは、「以前より筋肉自体も力を発揮できるようになってきたから、体幹の筋力訓練を取り入れて、身体全体の筋力を向上させていきたいな。」とリハビリを進展させます。

退院後に備えたリハビリが重要

医師と話合う患者のイラスト足立さんは、「退院までには、仕事のために重たいものを持てるようになりたいな」と希望されました。

実際は手術後12週経過し、やっと2kgのものを持つことができる状態です。現状ではそれ以上の重たいものを持つことを医師は許可していません。
ですから担当スタッフは、「退院してすぐに仕事復帰し、以前と同じようになるにはまだ期間が短いです」と説明しました。

説明を聞いた足立さんは納得されるものの、「重たいものが持てないのなら仕事は難しいな」と落ち込んでいました。
足立さんの悩みを医師に伝えると、「職場復帰=重たいものを持つではなく、肩や腕に負担のかからない仕事ならOK」と。

仕事復帰すると、「重たいものを持つのか、持たないのか」の足立さんの判断が大事になります。
担当スタッフは、足立さん自身に再断裂のリスクをきちんと把握してもらう事が重要と考えて、退院後の注意点などをきちんと指導しました。

退院後もリハビリを継続することが大切

退院後は、外来でのリハビリを継続し、日常生活や仕事復帰の際に必要な動作・筋力を向上していきました。
入院中は毎日していたリハビリも、退院した後は週に2~4回なので、「初めは肩や腕周りが硬くなったりしたが、徐々に痛みや硬さを感じる時間が短くなってきた」と足立さんから報告を受けました。

現在は医師の許可が出たため、足立さんは職場でも木材を抱え、何とか仕事はできるようになったそうです。

足立さんが実際に行ったリハビリとその目的

  • ポジショニング確認:
    再断裂のリスクを低下させるために、ウルトラスリング(外転装 具)のポジションを確認する。寝ているときの上下・左右の傾き、立っているときはウルトラスリングに頼るように力が抜けているのか、紐の長さは適切かなど。
    また、枕の高さは合っているかどうかも確認する。
  • マッサージ:
    肩関節周囲の筋肉の柔軟性の獲得を目指す。
  • 関節可動域訓練:
    肩関節・肩甲骨・肋骨などの関節の硬さの改善や正常な骨の位置への修 正。
  • 筋力訓練:
    肩甲骨周囲や肋骨、腰部、両足の筋力を向上させ、ウルトラスリング固定中の不良姿勢の修正や日常生活が困らないようにするために筋力を向上させる。
  • 自主訓練:
    病室でできる肩甲骨訓練(可動性維持)や体幹のストレッチング(背中や腰など の筋肉の柔軟性の維持) など。