説明する医師イラスト肩腱板断裂の症状と断裂のメカニズム”では肩関節の仕組み、五十肩(肩関節周囲炎)との違い、症状、原因について解説しました。今回は、肩腱板断裂の城内病院での問診・検査・治療についてお話しいたします。

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問診

まず、問診で、どのような状況で肩の痛みを覚えるようになったかを医師は質問します。スポーツ・事故による怪我、転倒して肩を打ったなどの痛むきっかけを特定します。次に、肩の痛みがどの程度か、肩の力が入りにくいか、可動域はどうか、などを調べます。

検査

初診時に、X線(レントゲン)検査を行います。X線検査では、腱は映りませんが、老化現象でおきる肩峰のところに骨棘(尖った突起物)が腱板を刺激しているか、関節の隙間が狭くなっていないか、骨折や他の症状はないか調べます。

MRI検査も行って確定します。腱板断裂の有無、程度の確認をすることができます。断裂した時期、筋肉の萎縮、腱の性質も推測できます。

画像診断(X線検査・MRI検査)

城内病院での治療について

治療の目的は、肩の痛みをなくし、日常生活での支障をなくすことです。腱板断裂の治療方法には、大きく分けて保存的療法と手術療法があります。どちらを選ぶかは、断裂程度を3つに分け、患者様の性別、年齢、仕事や趣味、生活スタイル、断裂の程度などを考慮して、医師が総合的に判断します。

肩腱板断裂の保存的療法

痛みが強い時は、安静第一です。薬などで痛みが収まれば、切れた腱板以外の筋肉をリハビリで強化して、代替できるようにすることが保存的療法の目的です。
小断裂の場合、腱板は断裂したままですが、痛みも和らぎ、日常生活動作に問題無いほどに修復できます。印象としては約90%の患者様が、3ヶ月間、週2~3回の通院で回復します。

  • 日常生活指導:初期の段階では、浮腫や炎症を生じており、スポーツや労働を控え、肩関節の安静に務める。日常生活では、疼痛を生じる肩関節内旋位での腕を上げることを控えることが大切。
  • 薬物療法:消炎鎮痛剤を内服する。初期に痛みを抑えるため。
  • 注射療法:夜間痛が強い場合は、鎮痛目的で水溶性副腎皮質ホルモンと局所麻酔剤を肩峰下滑液包内に注射する。夜間痛がなくなればヒアルロン酸注射に変更して、関節の軟骨の滑りを良くする。
  • 運動療法:リハビリのこと。落ちた筋力を回復させ、代償する筋肉を鍛えるため、肩関節のストレッチ や筋力強化訓練(腱板機能訓練)を行う。

3ヶ月ほど保存的療法を続けてもなお、痛みが変わらず取れない場合、再度検査をして手術療法を検討します。

手術療法 唐津市で唯一、肩腱板断裂を関節鏡視下手術で行う病院です

肩腱板断裂の患者様のうち、最終的に手術する方は約30%(はじめから手術を選択する患者様も含めて)です。手術には関節鏡視下手術と直視下手術(通常手術)があります。

城内病院では、ほとんどの患者様に対して、関節鏡視下手術を行ないます。その理由は、関節鏡視下手術の方が、患者様にとってメリットが多いからです。2023年10月現在、唐津市で唯一、肩腱板断裂を関節鏡視下手術で行う病院です。直視下手術に比べ、技術的に難しいため、関節鏡視下手術を選択する病院は少ないようです。

肩腱板断裂を関節鏡視下手術で行うメリットは、傷が小さく、体に対するダメージが少ないこと。術後の痛みが少ないため、術後早期にリハビリができ、早い回復が期待できます。  デメリットは、アンカーという特殊なネジを使うこと。骨にアンカーを打ち込み、アンカーに通した糸で腱板を縫合するため、体内にアンカーが残ります。ただし、体内にアンカーが残っても身体に対する悪影響はありません。

腱板断裂の手術方法

手術時間は2~2.5時間程。手術技術、および、器具が進歩しているため、以前に比べ、手術時間が短縮されています。術後3ヶ月ほど、入院していただいて、約6週間の装具固定と3ヵ月間のリハビリを行ない、完治したうえで退院していただきます。

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痛みを放置せず、病院で検査・治療を受けましょう

城内病院を訪れる患者様の中で、肩腱板断裂は患者数が多い症状です。したがって、保存的療法において、医師と病院スタッフは、肩腱板断裂の治療に対して経験豊富です。手術療法においても、関節鏡視下手術の技術を備えた医師により、患者様のダメージをより少なくすることができます。

肩が痛み生活に支障があるのに、放置するのは危険です。すでに腱板が断裂しているかもしれません。放置を続けると断裂が大きくなることもあります。
病院で検査して、肩腱板断裂なのか、五十肩(肩関節周囲炎)なのか、それ以外の症状なのか、正確な診断を受けましょう。そして、医師の指導のもと、症状に応じた適切な治療を受けましょう。