インピンジメントとは「衝突」を意味する英語です。
肩のインピンジメント症候群での「衝突」とは、腕を挙げたり捻ったりしたときに肩甲骨の一部の肩峰と上腕骨の骨同士が衝突することです。

肩のインピンジメントのイラスト

肩峰と上腕骨がインピンジメント「衝突」を繰り返すことで腱板断裂の危険が高まります。つまり肩のインピンジメント症候群は肩腱板断裂の前段階の病気です。

肩腱板断裂に至ると断裂程度によっては、手術になることもあります。手術後も入院してリハビリが必要です。
肩を挙げたり捻ったりしたときに引っかかり感や痛みを覚えるようでしたら、肩のインピンジメント症候群の可能性が疑われます。
なるべく早めに病院で診察を受けることをおすすめします。

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肩のインピンジメント症候群 なりやすい方と原因

肩のインピンジメント症候群になりやすい方は、野球の投手など投げる動作が多いスポーツをしている方や肩を酷使してきた高齢者などです。

野球の投手など投げる動作が多いスポーツをしている方は、繰り返し腕を挙げる動作をすることで肩峰と上腕骨の間に挟まれる肩峰下滑液包や肩腱板の一部に炎症や損傷がおきます。

ボールを投げるピッチャーと痛みのイラスト

高齢者の方は、肩峰にできた骨棘(こつきょく:尖った突起物)が年齢とともに大きくなり、腕を挙げたときに骨同士が衝突するようになるケースが見られます。

肩のインピンジメント症候群の症状は肩に生じる引っかかり感や痛み

肩のインピンジメント症候群で肩峰下滑液包や腱板に炎症や損傷がおきると、腕を挙げる動作や捻じる動作で肩関節に引っかかり感や痛みが生じます。

安静にしていると痛みは軽減しますが、安静せずに腕の挙上動作を繰り返していると慢性化します。症状が悪化すると夜間痛や肩腱板断裂につながります。

肩のインピンジメント症候群の検査

まず、問診で肩を酷使するようなスポーツやお仕事をしているか、どのような動作で肩が痛むか、どの程度の痛みかなどをお聞きします。

つぎに、X線(レントゲン)検査で骨棘の有無、MRI検査で肩峰下滑液包の炎症や腱板の損傷の有無、造影検査で損傷範囲を確認して肩腱板断裂などの他の病気と区別します。

肩のインピンジメント症候群の治療とは?

肩のインピンジメント症候群の治療は、基本的に保存的療法です。保存的療法で改善が見込めない場合は、関節鏡視下肩峰下除圧術などの手術療法を考慮します。

肩のインピンジメント症候群の保存的療法

痛みが強い時は安静第一です。薬や注射などで痛みが収まれば、リハビリで周囲筋を強化して代替できるようにすることが保存的療法の目的です。

安静
原因とされるスポーツや仕事を控え、肩関節の安静につとめる。日常生活では疼痛が生じる動作を控えることが大切。
薬物療法
痛みを抑えるため消炎鎮痛剤を内服する。
注射療法
痛みが強い場合は、鎮痛目的でヒアルロン酸や副腎皮質ステロイドを局所注射する。
物理療法
肩甲骨周囲の筋力トレーニングで肩甲骨の安定性を増したうえで、肩腱板を鍛えるインナーマッスルトレーニングを行う。