城内病院は、唐津市で唯一、肩腱板断裂の手術を行っています。あらゆる断裂度(小・中・大・広範囲断裂)の手術をしています。症例数も多く、数多くの経験が、リハビリスタッフの肩関節の解剖学・運動学などの知識・スキルを深めています。

関節鏡視下腱板修復術後に、医師の指示のもと、経験豊かなリハビリスタッフとともに、患者様が、どのようにリハビリテーションを進めていくか、詳しくみていきましょう。

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肩腱板断裂について
関節鏡視下手術は、体に対するダメージが少ない手術です

肩腱板断裂の手術後のリハビリについて

城内病院では、手術後から6週間は、ウルトラスリング(外転装具)という固定装具を用いて、患者様に入院生活を送っていただきます。6週間の装着期間は、再断裂のリスクをなるべく低くするためです。再断裂した場合の患者様の精神的苦痛・不安は、多大なものです。患者様にとっては、不自由で、長い6週間です。しかし、再断裂のリスクを下げるためには必要な期間です。

ウルトラスリング(外転装具)前 ウルトラスリング(外転装具)横 ウルトラスリング(外転装具)後

手術により断裂した肩腱板は修復されました。次に、修復した肩腱板を改善し、肩関節機能の再獲得を目指します。術後の痛みや修復した腱板が治癒していく過程を考慮して、リハビリを行います。

肩腱板手術後1~12週までのリハビリスケジュール

リハビリ自体がマイナス要因にならないように、治癒過程にあわせた適切なリハビリを行います。

  1. 術後1~2週間
    愛護的に、肩関節や肩甲帯周囲筋のマッサージ、痛みの無い範囲で他動的に関節可動域訓練(他動運動)を行います。また、病室でも行える自主訓練を指導し、術後に起きる肩甲帯周囲筋硬化を予防します。 他動運動とは、筋肉に力を入れずに行う運動で、リハビリスタッフが患者様の腕をサポートしながら行う運動のことです。 炎症期は頻繁にアイシングを行い、術創部周囲の熱感・腫脹などを抑制します。
  2. 術後3~5週間
    術後3週間以降のリハビリは、炎症期と同じように、愛護的にマッサージや他動的に関節可動域訓練を行います。少しずつ動く範囲を広げ、患者様が痛みを我慢をするような動きにならない範囲で、リハビリを行います。
    炎症期以降は、患者様の疼痛や炎症症状に応じて、リハビリ後や運動後にアイシングを行います。
  3. 術後6週間
    ウルトラスリングのクッション部分のみを除去し、患者様ご自身の力で、肩を動かしてもらいます。リハビリでは、自動運動での関節可動域訓練を追加し、自主訓練もレベルの高いものとなります。
    まだ、自力では、肩を動かすことが大変な時期です。無理に動かすと、痛みはなかなか落ち着かず、関節の硬さも取れにくくなるため、無理をせず肩関節の動きを広げるようにしましょう。
    自動運動は、筋肉に力をいれて行う運動です。はじめは、すこししか腕を挙げることができませんが、徐々に腕が上がるようになります。
  4. 術後7週間
    ウルトラスリングのアームスリングという袋状の物を除去します。
    固定していた時の姿勢が癖となっていて、なかなか直らないので、歩行する際も腕を振りながら歩行していただく必要があります。その都度、リハビリスタッフが指導します。
  5. 術後8~9週間
    断裂していた筋肉や肩関節の深層にある筋肉を鍛える時期です。
    低負荷・高頻度で行うことで、筋力向上を図ります。
  6. 術後10~11週間
    1kg未満のおもりやゴムバンドなどを使用して、肩甲帯周囲筋の筋力訓練を追加し、肩甲骨などの傾きなどを調整していく時期になります。
  7. 術後12週間
    主治医の許可にて、2kgのおもりが持てるようになります。痛みなどがある場合は、主治医やリハビリスタッフと話し合いながら重さを検討します。
肩腱板手術後のリハビリスケジュール表
肩腱板手術後のリハビリスケジュール表

根気よくリハビリを継続しましょう

回復には数ヶ月の時間が必要です。多くの場合、4ヶ月から6ヶ月で筋力や動きが、十分に回復します。肩腱板自体は、とても繊細な組織なため、修復部分の回復は非常にゆっくりです。不安な気持ちにならずに、根気よくリハビリを継続することが大切です。

運動療法について

他動運動と自動運動

関節可動域訓練には、他動運動と自動運動があります。その訓練の目的は、関節可動域の維持および増大です。

他動運動
他者のサポート、機械など他からの介助や外力を用いて、身体の部位を動かすことです。他動運動は、拘縮を予防する良い方法であり、関節可動域訓練の原則とされています。
自動運動
自分の意思による筋収縮を用いて、目的とする身体の部位を動かすことです。

自主訓練について

肩甲帯自体の動きが悪くなることで、関節の硬さ、筋力低下(車でいうエンスト状態)や不良姿勢につながることがあります。自主訓練は、肩腱板修復部分には、ほとんどストレスが掛からないため、不安な気持ちにならずに、時間があるときに行いましょう。

自主訓練のペンギン体操・タオル体操を ”肩腱板断裂手術後の自主訓練は早期回復のカギ” にて写真付きで詳しく紹介しています。ぜひ、御覧ください。

手術後に大切な4つのこと

アイシングで炎症を抑え、治癒の遅れを予防する

手術後は痛み・熱感・腫脹などの症状が出現します。そのため、アイシングなどで冷やすことで炎症を長引かせず、治癒の遅れを予防します。冷やしている時間は、15~20分程度です。冷やすと痛みが出現する方もいます。そういう場合は、冷やす時間を短縮します。

手術後約6週間は、ウルトラスリング(外転装具)を装着する

手術後約6週間は、ウルトラスリング(外転装具)を装着して、病院生活を過ごすことになります。この装具は、肩腱板修復部分へのストレスを軽減するためのものです。基本的に、ウルトラスリングを外すときは、身体を拭くとき(清拭)やリハビリ時のみとなります。

肩のポジションに配慮して、肩へのストレスを軽減する

固定装具を装着した状態で寝るときに、術側の肩が落ち込むと、肩腱板修復部分へのストレスとなり、夜間痛の原因となることがあります。そのため、術側の肩や肘の下にクッションやタオルなどを挟むことで、肩へのストレスを軽減することができます。

自主訓練を継続することで、より一層機能を改善させる

手術後のリハビリは、患者様の痛みなど身体の状態に応じて行っていきます。リハビリ室での訓練以外に、自主訓練も重要となります。自主訓練を継続することで、より一層機能を改善させる事が可能となります。治癒過程には、個人差があるので、無理しない範囲で、あせらず根気よく行っていきましょう。

退院後について

医師のイラスト退院後は、隣接する保利クリニックに通院していただいて、担当の医師やリハビリスタッフと相談しながらリハビリを進めます。担当医師の指示のもと、リハビリスタッフとともに、肩腱板の機能回復のために、根気よくリハビリを続けましょう。

自宅復帰しての注意点 ~再発防止に努めましょう~

結果を早く手に入れたいと焦らず、悪化させないことを心掛け、できる運動を少しずつ取り入れて行ないましょう。

  • 就寝時、肩を不安定な状態にしない。
  • 親指を正面に向けた姿勢を心掛ける。
  • 痛い肩にバッグを掛けない、物を持たない。
  • 胸の前で開くようなシャツ・上着を着用すること。かぶりの洋服は、避けた方が無難。
  • 歩行時も重力により、筋肉に支持されているため、痛みが出現しやすい場合がある。タオ ルやクッションなどで、脇を絞めておくことやズボンのポケットに手を入れることで、痛み が出現しにくくなる。
  • 温水シャワーと水を、2~3分ごと交互にあて筋肉を緩和させる。時間は10分~20分 程度。
  • 熱いお湯に浸したタオルを絞って、ビニール袋に入れ、肩を包み込むように温める。

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肩腱板断裂のリハビリテーション 50代男性の場合を詳しく紹介します