骨脆弱性骨折とは、立った状態から転倒するなど軽微な外力が加わっただけで骨折することです。

高齢者にとって骨折は、寝たきりや要介護状態になることがあるために、あなたの「健康寿命」を縮める危険な病気です。
厚生労働省の調査(平成25年度国民生活基礎調査)によると、転倒・骨折は、高齢者の介護が必要となった原因の11.8%を占め、脳卒中、認知症、衰弱に次いで4位です。

転倒・骨折は「介護を受ける原因」の上位です。
「介護を受ける原因」の棒グラフイラスト

高齢者にとって危険な骨脆弱性骨折をおこさないためには、骨粗しょう症を治療することと転倒しないことです。

骨粗しょう症の治療については、“骨粗しょう症 (2) 定期的に検査・診断・治療を受けることの重要性”。
転倒しないことについては、“骨粗しょう症 (3) あなたの「健康寿命」のために、転倒しないことが大切
で詳しく解説しています。御覧ください。

骨脆弱性骨折の原因は骨粗しょう症

高齢者は、転倒して手を床についただけでも手首(撓骨遠位端)を骨折することがあります。なぜ、手をつくだけのような軽微な外力が加わっただけで骨折することがあるのでしょうか?

その答えは、骨粗しょう症により骨強度が低下して骨がスカスカになっているためです。 つまり、骨粗しょう症で骨が脆弱になっていると手をついただけでも骨折がおきることがあるのです。

ゆえに、骨脆弱性骨折をおこしやすい方は、骨粗しょう症になりやすい高齢者です。
とくに、高齢の女性に骨脆弱性骨折の患者様が多い理由は、閉経後に女性ホルモンのエストロゲンが急激に減少して骨粗しょう症になりやすいためです。

(関連リンク)
骨粗しょう症 (1) 高齢者にとって危険な病気の理由

骨脆弱性骨折は連鎖する危険があります

骨脆弱性骨折はそれ自体が骨折のリスクを高めます。1度骨折すると、次々と骨折が連鎖することがあります。
たとえば、閉経後女性の大腿骨頸部骨折は、すでに骨脆弱性骨折を経験している方が50%を占めます。

骨粗しょう症の患者様は全身の骨が脆くなっています。骨折している間に、筋力が落ちて運動機能が低下すると、つまずくことが多くなってさらに転倒しやすくなります。
また、骨折により運動などをしなくなり活動性が低下すると、骨への刺激が減少するために、より骨粗しょう症が進行します。

このように骨脆弱性骨折の連鎖という悪循環に陥ると、寝たきりや要介護状態になるリスクがより高まります。

骨脆弱性骨折が起きやすい部分

背骨や大腿骨は体を支える骨です。骨折すると、立つ・歩くなどの生活基本動作に障害が出て、骨折以前と同様の生活が送れないことがあります。寝たきりや要介護状態にさえなる危険もあります。

  • 背骨の圧迫骨折(脊椎椎体骨折):
    尻もちなどの軽微な外力により、負荷が集中した脊椎の椎体前方が楔のように潰れる。重いものを持つ、中腰になるだけでも胸椎と腰椎の移行部に力が集中して骨折することがある。骨折しても気づかないこともある。
  • 大腿骨頸部骨折:
    転倒や転落すると、股関節につながっている大腿骨の曲がった部分(頸部)に力が集中しやすいことが原因。骨粗しょう症で骨がもろくなった高齢者に多く見られる。
  • 橈骨遠位端骨折:
    転倒時に手をついた時に、前腕の2本の骨のうちの橈骨の手首部分(遠位端)が折れる。 骨が脆くなっている骨粗しょう症の患者様の場合、簡単に骨折することがある。
  • 上腕骨近位骨折:
    肩関節から肘関節をつなぐ上腕骨。近位端とは肩関節近くの部分。転倒時に肩を床や地面にぶつけた時に、骨が脆くなった高齢者では簡単に折れることがある。
骨粗鬆症になると骨折しやすい部位は?
骨粗鬆症になると骨折しやすい部位と、大腿骨近位部骨折の受傷要因の棒グラフイラスト

城内病院での骨脆弱性骨折の検査と治療

骨脆弱性骨折の検査は、おもにレントゲン(X線)検査です。必要であれば、CTやMRIでより精密な検査を行います。

治療は骨折の部位、程度や状態に応じて、保存的療法あるいは手術療法を選択します。
保存的療法は、ギプスなどを使った装具固定、患部の痛みを抑える薬物療法、運動療法などのリハビリを行います。

骨折のズレが大きくて手術する場合は、ボルトやプレートを用いて骨折部を固定します。 入院期間やリハビリ期間は骨折の部位、程度や年齢など患者様によって異なります。

受傷直後に手術し、できるだけ早く元の日常生活に戻れるように術後早期からリハビリを行います。
リハビリは、再度、転倒して骨折しないための運動能力の獲得と自立した生活を送る能力の回復を目指します。

高齢者が骨脆弱性骨折しないためには

高齢者が骨脆弱性骨折を予防する方法は、骨粗しょう症を治療することと転倒しないことです。

病院で骨粗しょう症の検査を行い、骨粗しょう症と判明すれば適切な治療を受けることが、一番の予防法です。

高齢者は身体機能が低下しています。ちょっとした段差につまずいて転んでしまいます。外出時には、安全性が高い服装をすることを心がけ、杖などを利用して転倒を予防しましょう。 家庭においても転倒することはあります。住環境を整備し、転倒しないように生活を工夫しましょう。

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