脊椎圧迫骨折は骨粗しょう症と関係が深い背骨の骨折です。起き上がり時や寝返り時の基本動作で痛みが出現することが特徴です。
脊椎の骨折を繰り返すと寝たきりのリスクが高まるため、高齢者にとって危険な病気です。

本記事では、城内病院リハビリテーション部で行う脊椎圧迫骨折のリハビリテーションを詳しく紹介します。

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脊椎圧迫骨折がおきる契機とは?

下記は脊椎圧迫骨折がおきる主な契機です。城内病院では患者様本人やご家族も気づかないうちに骨折されていることも多く見られます。

  • 尻もちをついた時。
  • 重いものを持ち上げる時。
  • 身体をひねった時。
  • くしゃみをした時。

脊椎圧迫骨折の症状

脊椎圧迫骨折の患者様の多くは、骨折時に背中や腰に激しい痛みが生じますが、なかには転倒されて数日後に痛みが強くなり、当院を受診される方も見られます。

脊椎圧迫骨折は椎体が潰れてしまう骨折で潰れた椎体は元の形に戻ることは難しく、1つの椎体が骨折すると脊椎のバランスがくずれ他の椎体にかかる負担が大きくなります。そのため骨折を繰り返す患者様も少なくありません。

脊椎圧迫骨折のリハビリ前評価とは?

リハビリを開始する前に患者様の状態を評価してリハビリ方針を決定します。以下は評価項目です。

  • コミュニケーション:認知症やせん妄などの精神障害の有無。
  • 疼痛:痛みの部位や誘因。
  • 関節可動域(ROM)・筋力:体幹や股関節の評価。
  • 姿勢・アライメント(骨格の整列状態):脊柱後弯の程度や股・膝関節の肢位など。
  • 歩行能力:歩行可不可、可能であれば距離、補助具の要不要の確認。
  • バランス能力:転倒リスクにつながる能力の低下を確認。

脊椎圧迫骨折 急性期のリハビリテーション

急性期の患者様は、寝返り時や起き上がり時などに強い疼痛を訴えられることが多いため、リハビリ介入時に患者様の状態に応じて病室内の環境設定を行います。

環境設定の例:

  • つり輪の設置
  • 比較的寝返りがしやすいほうに床頭台の配置
  • 手すりの設置

急性期のリハビリでは、褥瘡(じょくそう)や深部静脈血栓症などの合併症予防の意味でも早期離床が重要な目的です。
装具による固定と疼痛コントロールのもとで運動療法が推奨されています。
まずはベットサイドでリハビリを行い、状態に応じてリハビリ室で訓練します。

脊椎圧迫骨折 急性期のベッドサイドでの運動

上肢の運動:
ペットボトルや軽いダンベルなどで軽い負荷をかけて行う。
5秒かけてゆっくり持ち上げ、5秒かけてゆっくり戻します。10~20回行う。

クアドセッティング(Quad setting):
バスタオルや枕を膝下に置き、押しつけるようにして膝伸展筋のトレーニングを行う。
腰部を反らさないように注意する。
力を入れて5秒数えてから元に戻す。20~30回行う。

クアドセッティングの写真

カフパンピング(Calf pumping):
深部静脈血栓の予防目的で足首の足背屈運動を行う。
2秒に1回動かす程度のスピードでリズムよく。1度の回数は10~20回でよいが、痛みのない範囲で患者様に自主訓練として1~2時間ごとに行ってもらう。

カフパンピングの写真1
1.足指を反らすように
カフパンピングの写真2
2.足首を伸ばす

脊椎圧迫骨折 急性期の疼痛軽減後の訓練

疼痛が軽減すれば、離床訓練の後にリハビリ室での訓練を開始します。

離床訓練:
寝返り~起き上がりまでの動作指導を行う。
車椅子自操・歩行車歩行訓練:臥床時間の軽減、ADL(日常生活動作)能力向上を目的とする訓練。
まずは病棟トイレまでといった短い距離から開始し、徐々に歩行距離を拡大します。

脊椎圧迫骨折 回復期・維持期のリハビリテーション

回復期・維持期の環境設定として、脊柱後弯(背側に凸弯曲した状態)が進行した症例では背臥位(仰向け)をとることが難しい場合があります。
そのためベッドのギャッジアップ(リクライニング式ベッドの上体を起こすこと)、枕やタオルを使用して負担がかからないように行います。

脊椎圧迫骨折 回復期・維持期の訓練・運動

回復期・維持期は積極的な離床と運動療法を行う時期であり、疼痛のない範囲で活動量を増やします。

訓練・運動の内容と回数は患者様の年齢や体力に応じて変更します。その後、疼痛軽減とともに患者様の生活スタイルに合った訓練に取り組んでいきます。

背筋運動:
うつ伏せで頭を持ち上げるようにして力を入れる。
お腹にタオルなどを敷いて、腰椎が過度に前弯しないように注意する。背中は反りすぎないようにあごを引き、目線は床面を見る。

背筋運動の写真

腹筋運動その1:
背臥位で膝立て位になり、腰の下に手を入れ、背中全体で手を押しつけるように力を入れる。
呼吸は止めないように注意する。

腹筋運動その1の写真

腹筋運動その2:
その1と同じ姿勢からあごを引き、頭を少し上げるようにして腹筋に力を入れる。
呼吸は止めないように注意する。

腹筋運動その2の写真

ブリッチ:
背臥位で膝立ち位となり、腰を反らさないように臀部を挙上する。
臀部を挙上して3秒保持する。これを10回行う。

ブリッチの写真

体幹伸展運動(脊柱起立筋):
座位で5秒かけてゆっくりと両上肢を挙上する。
体幹を反らさないように注意する。これを10回行う。

体幹伸展運動の写真

体幹前胸部ストレッチその1:
座位で棒などを持って両手を挙上する。
体幹を反らさないように注意する。
15秒以上を目安に3~5回実施する。

体幹前胸部ストレッチその1の写真

体幹前胸部ストレッチその2:
座位で頭の後ろに手を組む。
両肘を開くようにして、前胸部をストレッチする。
運動・訓練も15秒以上を目安に3~5回実施する。

体幹前胸部ストレッチその2の写真