平均寿命と健康寿命(健康で生き生きと暮らすことができる時間のこと)の差は、進行する高齢化社会の大きな問題となっています。
健康上の問題で日常生活に影響がある期間、つまり平均寿命と健康寿命の差は男女ともに約10年あります。
平均寿命と健康寿命の差が縮まれば、生活の質(QOL)が高まり、高齢者が生き生きと暮らすことが可能になるため、健康寿命を延ばすことは重要な課題です。

反対に健康寿命に悪影響を与えるワードとして、近年話題となっているのは「サルコペニア」「ロコモティブシンドローム」「フレイル」。
この3つのワードはそれぞれ提唱者が異なりますが、概念には以下のように関連性が見られます。

  • サルコペニアとはロコモに含まれる概念でもあり、フレイルにも影響を及ぼす病態の一つ。
  • ロコモとはフレイルを招く病態で、要介護のリスクが高い状態。
  • フレイルの1つである身体的フレイルはサルコペニアやロコモとの関連性が見られる。

要介護状態につながるリスクが高いサルコペニアとは?

転倒した高齢者女性のイラストサルコペニア(sarcopenia)とは、ギリシャ語で筋肉を意味する「サルコ(sarx)」と喪失・減少を意味する「ペニア(penia)」を組み合わせた造語。
米国の研究者Irwin Rosenbergが、加齢に伴い骨格筋量の減少がおこることの重要性を主張するために提唱しました。

サルコペニアとはロコモに含まれる概念でもあり、フレイルに影響を及ぼす病態の一つ。高齢に伴う「筋肉量の低下」に加え、握力や体幹筋など全身の「筋力の低下」、または歩行速度の低下などの「身体機能の低下」がおこることを指します。
高齢者がサルコペニアになると、転ぶことが多くなったなり、階段を登っているとふらつくことが多くなります。

高齢化が大きな社会問題となっている近年、サルコペニアは注目されています。
その理由は、サルコペニアの高齢者は「筋力の低下」や「身体機能の低下」を原因に転倒して大腿骨近位部などを骨折しやすくなり、要介護状態につながるリスクが高いからです。

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ロコモとは「立つ」「歩く」の機能が低下している状態

ロコモとはフレイルを招く病態で、要介護のリスクが高い状態。ロコモティブ・シンドローム(運動器症候群)の省略形。Locomotive(ロコモティブ)は「運動の」「移動の」という意味。

筋肉、骨、関節など運動器(からだを動かす部分)の機能低下や病気による障害で、「運動の」「移動の」、つまり「立つ」「歩く」の機能が低下している状態をロコモ(運動器症候群)と呼びます。

ロコモで「立つ」「歩く」の機能が低下すると日常生活に支障が生じます。さらに進行して寝たきりや要介護に至れば、高齢者の健康寿命(健康で生き生きと暮らすことができる時間のこと)を縮める可能性があります。

日本整形外科学会は、「運動器は健康の根幹である」という考えを背景にロコモという概念を提唱し、「ロコモを予防し健康寿命を延ばしましょう」と呼びかけています。

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フレイルとは健康な状態と要介護となる状態の中間的な状態

フレイルとは日本老年医学会が提唱した概念。フレイルは、海外の老年医学分野で使用されている英語の「Frailty(フレイルティ)」が語源となっています。

Frailty の和訳の「虚弱・老衰・衰弱・脆弱」には「加齢に伴って、もう健康な状態には戻れない衰えた状態」の印象を与えられます。
そのため、日本老年医学会はあえて和訳を使わずに「フレイル」という言葉を提唱しました。その理由は、Frailty には、「しかるべき介入により再び健常な状態に戻ることが可能」という可逆性の意味もあるからです。

フレイルとは、高齢になって身体機能や予備能力が低下して健康障害をおこしやすくなった状態です。
要介護に陥ることもあれば、食事や運動で生活習慣を改善することで再び健康な状態に戻ることもある健康な状態と要介護となる状態の中間的な状態です。

フレイルには、筋力の低下により転倒しやすくなるような身体的フレイル、認知機能障害やうつなどの精神心理的フレイル、独居や経済的困窮などの社会的フレイルがあります。
とくに身体的フレイルはサルコペニアやロコモとの関連性が示唆されています。

サルコペニア、ロコモ、身体的フレイルに共通した予防法とは?

サルコペニア、ロコモ、身体的フレイルはお互いに関連性があります。
そのためこの3つの病態に共通した予防法は運動療法と食事療法です。第一に筋肉量を増やすこと。筋肉量が増えれば筋力や身体能力も向上します。 筋肉量を増やすには、レジスタンス運動や有酸素運動などの運動療法と筋肉の材料となるたんぱく質を作るための食事療法を組み合わせるとより効果的です。

運動療法と食事療法でサルコペニアの予防・改善を効果的に!”に具体的な予防法を紹介しています。サルコペニアだけでなく、ロコモと身体的フレイルにも共通して有効です。どうぞご参照ください。