サルコペニアの高齢者は筋力低下や身体能力低下により、ふらついて転倒しやすくなります。高齢者には骨粗しょう症の方も多いため、転倒すると大腿骨近位部などを骨折するケースが多くなります。
つまり、高齢者にとってサルコペニアは、要介護状態につながるリスクを孕んだ危険な状態なのです。
また、2020年度から75歳以上の後期高齢者を対象に要介護になる手前の方を把握するために、国による「フレイル検診」が開始されます。
サルコペニアは心身が衰えるフレイルの要因ともされています。
「最近転ぶことが多くなった」「階段を登っているとふらつく」などに心当たりはありませんか?
家庭でもできるサルコペニアの簡易的な診断法を試して、該当する方は病院で正確な検査を受けてみませんか。
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サルコペニアの診断基準とは?
最初に確立されたサルコペニアの診断方法は、6mの歩行テスト、筋肉量の測定、握力の測定結果を使って診断する方法で欧米人向けのものでした。
2014年にはAWGS(ASIAN Working Group FOR SARCOPENIA)によって、欧米人とは骨格が異なるアジア人向けの診断基準がつくられました。この基準は日本人の体格にも対応しています。
アジア人向けのサルコペニアの3つの診断基準は、「筋量の減少」「筋力(握力)の低下」「歩行速度(身体機能)の低下」。
測定値が「筋量の減少」と「筋力の低下」もしくは「歩行速度の低下」どちらかにあてはまれば、サルコペニアと診断されます。
筋量の減少
四肢骨格筋量を筋量減少の基準とする。BIA法とDXA法どちらかで良い。
BIA法:男性7.0kg/㎡未満、女性5.7kg/㎡未満
DXA法:男性7.0kg/㎡未満、女性5.4kg/㎡未満
BIA法:インピーダンス法。体の組織の電気抵抗値を計測することにより筋肉量を求める方法。体組成計で測定可能。
DXA法:二重エネルギーX線吸収法。放射線を利用して体重を骨量、体脂肪量および除脂肪軟部組織の3成分に分類して筋肉量が計測する。
筋力(握力)の低下
握力が男性28kg未満、女性18kg未満。
歩行速度(身体機能)の低下
歩行速度が1.0m/秒以下。
あるいは5回椅子立ち上がりテストを12秒以下。
AWGS2019によるサルコペニア診断基準より抽出
家庭でもできるサルコペニアの簡易的な診断法
上記の診断法は病院で測定することを前提としたものですが、家庭でも布製・樹脂製のメジャー、握力計、市販されている体組成計があれば、サルコペニアの診断はある程度できます。
日本サルコペニア・フレイル学会の2019年の資料をもとに作成した診断法です。この診断に該当した方は、サルコペニアの可能性があります。
一度、整形外科を訪ねて正確な検査・診断を受けてみてはどうでしょうか?
A. 下肢周囲長(ふくらはぎの一番太い部分)を布製・樹脂製のメジャーで測る
男性は34cm未満、女性は33cm未満の方は、サルコペニアの可能性が高い。
B. 握力計で握力を測る
男性は28kg未満、女性は18kg未満。
C. 身体機能を評価する
5回椅子立ち上がりテストが12秒以上かかる。
BとCどちらか一つでもあてはまれば、サルコペニアの可能性があります。さらにAにもあてはまれば、より可能性は高くなります。
さらに市販されている体組成計をお持ちの方は、BIA法で骨格筋量を測定して下さい。
BIA法:男性7.0kg/㎡未満、女性5.7kg/㎡未満。
この基準にあてはまれば、よりサルコペニアの可能性が高いということになります。