サルコペニアの高齢者は、ふらついて転倒しやすくなります。
転倒すると大腿骨近位部などを骨折するケースが多く、高齢者の骨折は体を動かすことが困難になって、寝たきり・要介護状態になるリスクが高くなります。

サルコペニアの原因は、高齢に伴う「筋肉量の低下」に加え、握力や体幹筋など全身の「筋力の低下」、または歩行速度の低下などの「身体機能の低下」です。
つまり、サルコペニアを予防・改善するには、第一に筋肉量を増やすことです。筋肉量が増えれば筋力や身体能力も向上します。

筋肉量を増やすには、レジスタンス運動や有酸素運動などの運動療法と筋肉の材料となるたんぱく質を作るための食事療法を組み合わせるとより効果的です。

(関連リンク)
筋肉量減少によって筋力や身体機能が低下するサルコペニアとは?
サルコペニアの診断をしませんか?
サルコペニア、ロコモ、フレイルの相違点とは?
サルコペニアを予防・改善するレジスタンス運動と有酸素運動

サルコペニアの運動療法とは?

40歳を超えると徐々に減少する筋肉量。一般的に50歳以降は1年に1~2% 程度筋肉量が減少すると言われています。年々筋肉量は減少するため、高齢になるほどサルコペニアの条件を満たしやすくなります。

サルコペニアの原因である筋肉量を維持あるいは増加させるには、筋肉量を増やし筋力や身体能力を改善するための運動・トレーニングが必要です。
つまりサルコペニアの予防や改善には、筋肉量増加を目的として年齢、体力や体調に応じた運動・トレーニングを行うことが重要となります。

とくに、目的の骨格筋に負荷をかける筋力トレーニングのレジスタンス運動とウォーキングや水泳などの低強度の有酸素運動を組み合わせれば、サルコペニアの予防や改善に効果的とされています。

レジスタンス運動でふらつきや転倒を回避する

レジスタンス運動とは、自分の体重を負荷にして強化したい骨格筋を鍛えるトレーニング。
骨格筋のタンパク合成を刺激するため、持続的に高強度トレーニングを週2~3日ほど行えば筋肉量増加が期待できます。
高強度トレーニングが適さない高齢者には、体力や体調にあった低強度トレーニングを選択します。

サルコペニアによるふらつきや転倒を回避するためには、大腿四頭筋、大殿筋、ハムストリング、背筋群などふらつきや転倒に関与する筋をレジスタンス運動で強化します。

ハーフスクワット(大腿四頭筋)

  1. 立った状態で両足を肩幅くらい開く。
  2. 膝が直角に曲がるまで、ゆっくり腰を落とす。
  3. 膝が伸び切らないところまで、ゆっくりと腰を持ち上げる。
  4. 1回に10秒程度かける。軽い疲労感が出るくらいまで繰り返す。

転倒した高齢者女性のイラスト

アームレッグクロスレイズ(大殿筋、背筋群)

  1. 四つ這いの状態になる。
  2. 対角線上にある片腕と片足(たとえば、右腕と左足)をゆっくりと持ち上げる。
  3. 手足を床につけないようにゆっくりと下げて、また持ち上げる。
  4. 上げて下げる1回として10秒程度かける。
  5. 軽い疲労感が出るくらいまで、右左を交互に繰り返す。

転倒した高齢者女性のイラスト

有酸素運動を軽く息がはずむ程度に行いましょう

レジスタンス運動で得られる効果よりは劣りますが、軽く息がはずむ程度に行う低強度有酸素運動もある程度のサルコペニアの予防や改善が見込めます。
同時に、有酸素運動で全身の筋肉を動かすことは、高齢者に多い生活習慣病の予防や改善にも有用です。

ウォーキング、水泳、サイクリングやエアロビクスなどを、週に3日~5日程度、1日30分~60分くらい、軽く息がはずむくらいの強度で継続的に行いましょう。
毎日の生活の中で体力や体調に合わせて、レジスタンス運動と有酸素運動を組み合わせれば、より高い効果が期待できます。

食事療法でタンパク質を十分に摂取する

筋タンパクの合成と分解の繰返しによって維持されている筋肉量。高齢になると筋タンパクの分解量が合成量を上回って、筋肉量が減少しやすくなります。

高齢者のサルコペニアの予防・改善には、筋タンパクの合成量を分解量より多くすることで筋肉量を増やす必要があります。
運動療法で筋肉量を増やすことと同時に、筋肉量の増減に深く関係しているタンパク質を食事で十分に摂取することも欠かせません。

BCAA(分岐鎖アミノ酸)を含む食品を積極的に摂取しましょう

食事で摂取したタンパク質は、体内でアミノ酸に分解されます。
アミノ酸には体内で作ることができない必須アミノ酸と体内で他の栄養素から作ることができる非必須アミノ酸があります。

アミノ酸のなかでも、必須アミノ酸であるBCAA(分岐鎖アミノ酸)のロイシン、イソロイシン、バリンは、筋肉のエネルギー代謝や合成に重要な役割を果たします。
BCAA(分岐鎖アミノ酸)の中でも、とくにロイシンはタンパク質の分解を抑制し合成を促進させることで筋肉量を増加させることが最近の研究により解ってきました。

筋肉量増加を期待できるロイシンを含むBCCA(分岐鎖アミノ酸)は必須アミノ酸。体内で作ることができないため、食事やサプリメントなどで外部から摂取する必要があります。

つまり、食事療法でサルコペニアを効率的に予防・改善するには、ロイシンを含むBCAA(分岐鎖アミノ酸)を含む食品を積極的に摂取しなければなりません。

BCAAを多く含む食品

転倒した高齢者女性のイラストまぐろの赤身、かつお、アジ、サンマ、鶏胸肉、卵、牛乳、大豆類など。BCAAを強化したサプリメント。