近年、日本では超高齢者社会が問題視されています。高齢者が高齢者を介護する老老介護に悩まされる中でフレイルという言葉を耳にすることも多いのではないでしょうか。このフレイルが要介護になる最もの原因と言われています。

フレイルとは、2014年に日本老年医学会が提唱した概念で、加齢に伴って身体・精神機能が老い衰え、健康と要介護の狭間の状態を表す言葉です。日本語では「虚弱」「老化」と訳される英語の「Frailty(フレイルティ)」が語源となっています。

フレイルの要因は多面性があるとされ、その要因が連鎖するとフレイルサイクルという悪循環を引き起こします。ロコモティブシンドロームやサルコペニアも要因の一つです。
しかしながらフレイルは早期に発見し、適切な介入を行っていくことで、機能の回復・向上を図れる可逆性であると考えられています。

つまり、フレイルのリスクがある高齢者がQOL(生活の質)を維持して健康寿命を延ばすためには、フレイムサイクルを早期に断つことが何よりも大切になってきます。

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フレイルの多面性 ~身体的フレイル、精神心理的フレイル、社会的フレイル~

フレイルには、筋力の低下により転倒しやすくなるような身体的フレイル、認知機能障害やうつなどを要因とする精神心理的フレイル、独居や経済的困窮などを要因とする社会的フレイルがあります。

  • 身体的フレイル:筋力低下、低栄養、嚥下機能低下、難聴、視力低下など。サルコペニアやロコモとも関連性がある。
  • 精神心理的フレイル:認知機能低下、意欲の低下、うつなど。
  • 社会的フレイル:独居、近親者不在、地域活動・交流の減少、経済的困窮など。

これらフレイルの多面的要因は連鎖すると、フレイルサイクルという悪循環を引き起こします。
ロコモティブシンドロームやサルコペニアも要因の一つです。このサイクルを早期に断つことが何よりも大切になってきます。特にプレ・フレイル(前虚弱)期間にいかに体のちょっとした衰えに気付き行動できるかが大切です。

フレイルサイクルのイラスト

フレイムサイクルを早期に断つための3つの柱 ~栄養、運動、社会参加~

フレイムサイクルを早期に断つための対策は、「栄養、運動、社会参加」、この3つが柱となります。この3つの対策を長期的に継続できるかが、いかに健康寿命を引き延ばせるかの鍵となります。

  • 栄養:3食きちんとバランスの取れた食事、口腔ケア、しっかり噛むなど。
  • 運動:ウォーキングや体操、身体活動、筋トレなど。継続できれば食欲、心的健康にも好影響。
  • 社会参加:趣味、地域活動への参加、友人との会話など。人との交際、外出はフレイル予防の第1歩。

フレイルサイクルを断つために実際に行った具体例を紹介します

城内病院リハビリ部で実際に高齢女性のフレイルサイクルを断つために行った具体例を紹介します。

患者様:70代 女性 主婦
疾患名:第1腰椎椎体骨折
受傷機転:洗濯物干している際、転倒し受傷
家族構成:現在は唐津市内で独居、福岡市在住の娘様が1人
介護保険:無し
受傷前の生活:炊事・洗濯・掃除など家事全般はされていた。社会交流や趣味はなく家屋内で主に生活。

入院中の経過と退院後にフレイルに陥る懸念

入院当初は疼痛著明で意欲低く運動困難でした。
軟性コルセット着用後から徐々に疼痛軽減して意欲も向上しました。その後、徐々に動作能力向上し、約3カ月程度入院した後には、基本動作自立レベルまで回復しました。
しかし、独居で社会交流も少ない事と親族が遠方に居ることから、退院後は隠居生活が考えられました。

患者様の入院中の経過や退院後の生活環境を考慮すると、リハビリ部スタッフは退院後にフレイルへ進行するリスクを懸念しました。
退院後にフレイルに陥るリスクを軽減するために、身体的フレイル、精神心理的フレイル、社会的フレイル、それぞれの対応策を私たちリハビリ部スタッフは提供しました。

退院後に行った身体的フレイルへの対策

身体的フレイルへの対策として、まず自宅で可能な自主訓練を指導しました。高齢である為、主に低負荷で座った状態や寝た状態で可能な運動をおもに指導しました。自主訓練に関しては過去に記事を当院ホームページに掲載していますのでこちらを参照下さい。

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独歩可能でしたがふらつきが時折あったため、杖歩行も指導しました。本人了承のもと、杖を購入し屋内は独歩、屋外は杖での移動を勧めました。

退院後の精神心理的フレイルと社会的フレイルへの対策

次に精神心理的フレイルと社会的フレイルの対策として、入院中に介護保険を申請しました。その結果、要支援1の認定がおりたため、通所リハビリテーションを週2回、退院後から利用するようにしました。

娘様と面談を行い、患者様=お母さまがフレイルに陥らないためには、社会交流や趣味に自身で積極的に参加することが必要な旨を伝えました。
その結果、娘様は電話や帰省回数を増やしてくださり、患者様は近所の高齢者を対象とした手芸教室に通われるようになりました。

医療法人賛健会 城内病院では退院後もリハビリを提供できます

当院では介護保険所持者もしくは事業対象者に対して退院後もリハビリを提供することが可能です。

  • 保利クリニック:通所リハビリテーション(短時間)
  • 城内荘:通所リハビリテーション

上記の他にも提供しているサービスがありますので詳しくは当院窓口までお尋ねください。