厚生労働省の調査(平成25年度国民生活基礎調査)によると、転倒・骨折は、高齢者の介護が必要となった原因の11.8%を占め、脳卒中、認知症、衰弱に次いで4位となります。

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要介護度別にみた介護が必要となった主な原因の構成割合

リハビリテーション部(以下 リハビリ部)作成の本記事では、寝たきりや要介護状態になることもある高齢者にとって危険な骨折の原因と城内病院での骨折手術前後のリハビリテーション(以下 リハビリ)に焦点を当ててお話します。

(関連リンク)
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高齢者の骨脆弱性骨折骨折について

高齢者の骨折の原因について

高齢者の骨折の多くは、身体機能(足の筋力と柔軟性)の低下による転倒と骨が弱くなること(骨粗しょう症など)が原因と考えられています。 中でも、足の筋力低下が原因の多くを占めると言われています。

足の筋力低下
歩行が困難になり転倒しやすくなる。
足の筋力低下による活動量の減少や外出が億劫になり生活範囲が狭くなることは、意欲の低下を招く。さらに、意欲の低下は虚弱、低栄養、摂食・嚥下障害などを起こし食事量を減少させる。
食事量の減少は、認知機能低下や精神活動低下などにも繋がり、転倒により骨折する可能性をより高める。
柔軟性低下
老化によるもの。股関節・膝関節・足関節の可動性に制限を与え、歩幅の減少など歩行の乱れに繋がり、転倒しやすくなる。
骨粗しょう症
加齢やホルモンバランスの乱れにより骨が弱くなることで、転倒時に骨折が生じやすくなる。

高齢者の骨折により出現する様々な問題に、リハビリ部は細心の注意を払います

高齢者が転倒などで骨折した場合、骨折後の二次的な要因として様々な問題が出現します。リハビリ部は、患者様にこれらの症状や状態が現れないように、細心の注意を払ってリハビリを行ないます。

たとえば、高齢者が骨折しやすい大腿骨頚部(太ももの骨の脚の付け根に近い部分)骨折で入院された患者様に対して、以下のことに私たちは細心の注意を払っています。

  • 全身の血液循環障害:骨折部位から遠位へかけての腫れなどが起こる。
  • 関節不動:入院すると活動量が低下するため、健全な部位の関節も硬くなる。
  • 筋力低下:寝ていることが多いため、筋力が低下する。
  • 骨萎縮:寝たきりで血流が滞ったり、骨を使わないともろくなる。
  • 心肺機能低下:体力が低下するため。
  • 起立性低血圧:寝たきりの状態でいると起こりやすい。
  • 誤嚥性肺炎:機能低下により飲み込みが悪くなり、肺炎を起こす可能性がある。
  • 精神機能低下:意欲・活動性の低下により、認知症に繋がることがある。
  • 末梢神経障害:活動性低下により、布団などが接触している骨の突出している部分が神経        を圧迫することがある。
  • 尿路感染症や尿路結石:尿の排泄困難により起こりやすくなる。
  • 褥瘡(床ずれ):長い時間、同じ姿勢で寝ているために起こる。

大腿骨頚部骨折の手術前後のリハビリ

高齢者が骨折しやすい大腿骨頚部(太ももの骨の脚の付け根に近い部分)骨折で入院された患者様。そのリハビリの目標は、再度、転倒して骨折しないための歩行能力の獲得と自立した生活を送る能力の回復です。
手術前後の患者様の状態に応じて、以下のリハビリを行ないます。

深部静脈血栓症の予防
ベッド上で、足首など自分で動かせる部分を動かす。血流の流れを改善する。
骨折していない下肢の関節可動域訓練や筋力の維持のための訓練。
関節可動域訓練
関節の可動域を広げて、低下した柔軟性を向上させる。
両下肢の筋力訓練
歩行能力の獲得・回復のための筋力訓練。活動量を増やし意欲向上も目的。
バランス訓練
バランス能力を向上させることで、つまずいて転倒することを防ぐ。
歩行訓練・階段昇降訓練
屋内・屋外での歩行能力獲得のため。

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深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)予防のためのストレッチ

退院後の生活について、リハビリ部からのアドバイス

退院が近づくとリハビリ部は、患者様とご家族やケアマネジャーに、退院後に注意すべきことの説明と介護保険サービスの情報の提供を行います。患者様の退院後のQOL(生活の質)向上のためにも、病院側と介護保険サービスの連携は重要です。

  • 歩行補助具の検討:押し車、電動車いすや四輪歩行車など。
  • 住宅環境の改修:段差解消。手すりやポータブルトイレの導入など。
  • ご家族の介護負担を軽減するための介護保険サービスの検討:ショートステイ、デイケアやデイサービスなど。

(関連リンク)
高齢者のリハビリテーション ~城内病院の取り組み~

リハビリの最終目標は、患者様が自立した生活を送る能力を取り戻すこと

片手を上げるリハビリの男性職員のイラスト城内病院リハビリ部は、骨折で入院されている高齢者の患者様に、二次的な要因(血液循環障害や床ずれなど)が現れないように、さらに、寝たきりや要介護状態にならないように最善の注意を払います。城内病院リハビリ部は、再び、患者様が転倒して骨折しないように、歩行能力の最大限の回復を目指して、患者様とともにリハビリを行ないます。患者様が可能な限り自立した生活を送る能力を取り戻すことが最終目標です。

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