腹回りを測る肥満の人のイラスト 近年、日本では肥満の方が増えてきています。
そのうえ2020年の春頃から世界中に拡散された新型コロナウィルス(COVID-19)は、肥満の方の増加を助長しています。
生活における様々な制限は外出自粛や運動不足をおこし、コロナ以前と比べ人々の活動性の低下は顕著になっています。この活動性の低下によって、体重が増加し肥満に至る人が増えていることが社会問題となっています。

肥満が糖尿病や高血圧などの生活習慣病につながることは、皆様ご存じでしょう。
また、新型コロナウィルスに罹った肥満者は重症化しやすく予後が悪い傾向があると、中国や欧米の研究機関からの報告もあります。

しかし、この肥満は体に脂肪が蓄積し、体重が増加した状態のことで病気ではありません。あくまで病気になりやすい要因の一つということです。
このように太っている状態を指す肥満という言葉に対し、肥満症という言葉があります。

肥満症とは、肥満によって健康に悪影響を及ぼす合併症になるリスクが高い場合、またはすでに合併症がある場合で、医学的な減量治療が必要な状態のことです。

このほかに、生活習慣病の予防のために40歳~74歳の方を対象に行われる特定健康診査によってメタボとして定着したメタボリックシンドロームがあります。
メタボリックシンドロームとは、内臓肥満に高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさることにより、心臓病や脳卒中などになりやすい病態を指します。

本記事では、肥満と肥満症とメタボリックシンドロームの違いについてお話しししましょう。

(関連リンク)
肥満とはなにか?
肥満と体脂肪の関係について
注意しよう 危険な内臓脂肪型肥満

肥満、肥満症、メタボの定義と違いとは?

さて、前述しましたように肥満と肥満症は似た言葉ですが、合併症などで医療的治療を必要とするかしないかで区別ができます。この2つの言葉と混同されやすい言葉に、メタボリックシンドロームがあります。

この健康診断の項目にあり、「メタボ」として一般的にも良く使われる言葉。
別名は「内臓脂肪症候群」で、内臓肥満に高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさることにより、心臓病や脳卒中など危険な心血管イベントを起こしやすい病態を指します。
肥満体で腹囲が大きい方をメタボなどと揶揄するケースがよくみられますが、太っているだけではメタボリックシンドロームにはあてはまりません。

肥満、肥満症、メタボリックシンドローム、それぞれの定義を知ればその違いがはっきりすることでしょう。

肥満の定義

肥満とは、ただ「体重が重い」や「太っている」ということではなく、体脂肪が過剰に蓄積した状態のことです。
肥満を定義する1つの方法に、BMI(Body Mass Index)という計算方法があります。
「体重÷身長÷身長=BMI」この計算式で身長に対しての体重の比率が算出され、肥満度合いが判定できます。

日本人の場合、BMI25以上が肥満とされています。BMIが25を超えたときから生活習慣病などの症状が増えることが分かっています。
さらにBMIが35以上になると高度肥満に区分されます。

BMIの計算方法

BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
例:体重60㎏で身長160㎝の場合
  60÷1.6÷1.6=23.4
  BMI=23.4

肥満症の定義

BMIが25以上の肥満が前提で、肥満による11種の健康障害(合併症)が1つ以上ある、あるいは健康障害をおこしやすい内臓脂肪蓄積がある場合に肥満症と診断されます。
肥満症と診断されれば減量による医学的治療の対象になります。BMIが35以上の場合は、高度肥満症と診断されます。

肥満による11種の健康障害(合併症)

1.耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など) 2.脂質肥満による11種の健康障害(合併症)異常症 3.高血圧 4.高尿酸血症、痛風 5.冠動脈疾患(心筋梗塞・狭心症) 6.脳梗塞、脳血栓症、一過性脳虚血発作(TIA) 7.脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患、NAFLD) 8.月経異常、不妊 9.睡眠時無呼吸症候群(SAS) 10.運動器疾患:変形性関節症(膝、股関節)、変形性脊椎症、手指の変形性関節症 11.肥満関連腎臓病

(肥満症診療ガイドライン2016より)

メタボリックシンドロームの定義

2000年代後半からメディアなどで頻繁に目にするようになり、最近ではお腹周りが大きい方を「メタボ」などと呼び、一般的に使用される言葉になりました。

メタボリックシンドロームとは、男性85㎝以上・女性90㎝以上の腹囲の内臓肥満が必須項目として、血圧・高血糖・脂質代謝異常のうち2つ以上を合併した状態のこと。
BMI値は条件ではなく、BMI=25未満でもメタボリックシンドロームに該当することはあります。

別名は内臓脂肪症候群。メタボリックシンドロームは、高血圧や糖尿病、脂質異常症などになりやすいのが特徴です。
内臓脂肪型肥満と高血圧や糖尿病、脂質異常症が重複し合併するほど、動脈硬化が進行して、命に危険がある心筋梗塞や脳梗塞などの心血管イベントにつながる可能性が高くなります。