右手を上げて説明する医師ののイラスト「私のアレルギーに効く漢方薬はありますか?」「漢方薬でアレルギーの治療をお願いしたいのですが?」などの質問を、アレルギー疾患の患者様から頂くことが最近多くなりました。

漢方薬は全てのアレルギー疾患に効果を示すわけではありませんが、西洋医薬と比べても負けないほど効果を期待できることがあります。
とくにアレルギー性鼻炎やじんましんには即効性があります。また、気管支喘息やアトピー性皮膚炎にも漢方薬は効果を示します。

さらに、漢方薬の大きなメリットは副作用が少ないことです。
アレルギー治療の抗アレルギー薬は服用後に眠くなることがあります。集中力を必要とする仕事や受験生には漢方薬の方が適していることがあります。

城内病院には漢方専門医がいます。漢方薬の処方をご希望される方は、医師にお伝え下さい。
患者様の体質や症状によっては西洋医薬と併用して処方することも可能です。

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「証」を見極めてアレルギーに効果のある漢方薬を処方します

漢方専門医は、漢方特有のものさしで患者様の「証」を見極めて、患者様のアレルギー症状に合う漢方薬を処方します。

「証」は、患者様それぞれの異なる体質・体力・抵抗力・自覚症状などの生体反応に現れる病態を把握することで特定されます。
つまり、患者様それぞれの「証」は違うため、同じ病名・症状でも処方される漢方薬は異なります。

「虚証」と「実証」

たとえば、漢方の病態把握法の1つに、「虚証」と「実証」があります。体力がなく顔色も悪く弱々しい人を「虚証」、元気で体力があり抵抗力もある人を「実証」と分けます。

「虚証」の患者様に対しては、「気・血・水」の補給でバランスを改善、ウィルスや細菌の外敵や体内反応に負けないからだにする漢方薬を処方します。
一方、「実証」の患者様に対しては、ウィルスや細菌の外敵を攻撃し、体内の反応を鎮静化しつつ、異常のあるところに偏った「気・血・水」をバランスのとれた状態に改善する漢方薬を処方します

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漢方専門医が、あなたの「証」を特定して漢方薬を処方する理由
「証」を特定する3つ要素 ~「気・血・水」「六病位」「五臓」について~

アレルギーに即効性を期待できる漢方薬

漢方薬イラスト2一般的には、漢方薬は西洋医薬と比べて即効性がないというイメージがあるようです。
しかし、アレルギー症状によっては、むしろ西洋医薬より漢方薬のほうが早く効き始めることがあります。

小青竜湯(しょうせいりゅうとう)や麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)は、薬を飲んで5~10分すると鼻水の症状が弱まります。

その即効性に驚いたのは、「とにかく鼻水が止まらなくてつらい」と訴える患者様のケースでした。
すぐに薬を飲んで頂くために診察室で麻黄附子細辛湯の袋を破いた時、漢方薬独特の香りが立ち上がりました。するとその患者様は、漢方薬独特の香りを嗅いただけで鼻水が止まったのです。
薬を飲む前に香りだけでも症状が治まったこのケースは、漢方薬の即効性を実証しました。

小青竜湯(しょうせいりゅうとう)

アレルギー性鼻炎、花粉症。
寒さにさらされると透明でサラサラとした鼻水が止まらない。くしゃみが止まらない。
体力が中等度、またはやや虚弱の方。

苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)

気管支喘息、気管支炎。
水のような薄い痰を伴う咳が出る。寒さにさらされると透明でサラサラとした鼻水が止まらない。
体力のない冷え性の方。胃の力が弱く食が細い方。高齢者。

麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)

アレルギー性鼻炎。
寒さにさらされると透明でサラサラとした鼻水が止まらない。
体力のない方。高齢者。とくに手足が冷えている方。

葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)

慢性的な鼻炎、鼻づまり、副鼻腔炎(蓄膿症)。
鼻づまりがひどく呼吸しにくい。鼻水はあまり出ない。
比較的体力のある方。

荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)

慢性的な鼻炎、鼻づまり、副鼻腔炎(蓄膿症)。
鼻水が黄色っぽくて非常に苦しい。血行が悪くて皮膚が浅黒い。手足の裏に汗をかきやすい。
体力が中等度以上ある方。

体質改善を期待できる漢方薬

体力の弱い方を根本から体質改善するために、漢方薬の補剤を処方するケースがあります。補剤とは、弱った体力を増強させ間接的に疾患を改善させる薬剤です。

まず、患者様の「証」を見極めたうえで、アレルギー症状に即効性のある漢方薬を処方します。症状を改善したのちに、経過を観察しつつ地固めとして補剤を処方し体質改善を図ります。

漢方療法の視点では、胃腸や腎臓・副腎機能の衰えを体力が弱くなる原因と考えます。胃腸機能を補剤で活性化させて体力・抵抗力を増強します。

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

胃腸の働きを高め、食欲を出すことで体質改善を目指す。「気」が不足していて疲れが出やすい方に「気」を補充する。
体力が弱く胃腸が弱い方。腎臓・副腎の機能が弱い方。

八味地黄丸(はちみじおうがん)

からだを温め、からだ全体の機能低下をもとに戻す。排尿がしづらい、腰が痛いなどの老化に伴う症状が緩和される。
体力がなく活力が足りない方。手足が冷えやすい方。高齢者。

漢方薬は服用後に眠くなりません

アレルギー性鼻炎やじんましんなどには西洋医薬よりも即効性が期待できることは、漢方薬の1つのメリットです。また、補剤で根本から体質改善できることも西洋医薬にはないメリットです。

さらに大きなメリットは、漢方薬は副作用が少ないことです。
抗アレルギー薬には服用後に眠気が強く現れる副作用があります。しかし、漢方薬は眠気が出ないので、生活のパフォーマンスが下がることがありません。

「鼻水が止まらなくて仕事の邪魔になる」「アレルギーの症状で勉強に集中できない」などの悩みを抱えている方は、あなたに合った漢方薬でアレルギー治療を受けてみてはいかがでしょう。