手根管症候群は、手のひらの付け根部分にある手根管というトンネルの中にある正中神経が圧迫されて、指にしびれが起こる病気です。

理学療法士の手根管症候群の術後のリハビリテーションの目的は、患者様の基本動作の機能回復です。
基本動作とは、寝返る、起き上がる、座る、立ち上がる、歩くなど、日常生活に必要不可欠な動作のことです。

今回は、手根管症候群の手術後において、城内病院の理学療法士が指導するリハビリテーションについて詳しくお話します。

関連リンク
城内病院手外科の対象疾患 手根管症候群
作業療法士が指導する手根管症候群のリハビリテーション

手根管症候群とは

手根管は手根骨とその掌側を覆う横手根靭帯から形成されており、正中神経は手指屈筋腱とともに手根管を通過しています。

手根管と正中神経のイラスト
出典:一般社団法人 日本手外科学会 手外科シリーズ 1.手根管症候群

手根管症候群 原因となりやすい方

手根管症候群のはっきりとした原因は不明とされていますが、発症に関与する要因として、妊娠、出産、手の酷使、全身性疾患などが推察されます。

患者様は妊娠出産期と閉経期の女性に多くみられます。男女比は1:9。両手ともで発症する患者様も多いです。
骨折及びその後の変形、変形性関節症、関節リウマチ、屈筋腱鞘炎などの方もなりやすく、ばね指などの腱鞘炎を合併することもあります。

手根管症候群の症状

初期の症状
夜間痛や早朝に強い指先の痛みやしびれが生じます。痛みやしびれは人差し指と中指を中心に出ます。
その理由は夜間に血圧が低下することや筋肉の活動低下によって、静脈還流不全になるためと考えられています。
進行期の症状
進行すると親指と薬指(親指側半分)を含む3本半にしびれが広がります。
さらには、母指球筋萎縮が生じると、母指の対立運動が障害され(OKマークが作れない)、つまみ動作が不自由になります。

ファーレン徴候とティネル徴候

ファーレン徴候とティネル徴候は、手根管症候群の診断で一般的に行うテストです。

ファーレン徴候
手関節の屈曲位の様子手関節の屈曲位を1分間維持した場合、手根管内圧上昇により痛みが悪化します。
ティネル徴候
ハンマーで手根管部をタップする様子ハンマーで手根管部をタップすると指先にビリビリとした痛み(放散痛)が走ります。

手根管症候群 理学療法士が指導するリハビリテーション

術後早期と術後回復期に、城内病院で理学療法士が指導するリハビリテーションを紹介します。

術後早期

  • 関節可動域訓練:
    前腕と手指。筋肉の伸張性低下予防、関節拘縮の予防のため。
  • リラクゼーション・マッサージ:
    前腕と手指。血液循環の向上あるいは維持のため。

術後回復期

  • リラクゼーション・マッサージ:
    前腕、手指や術創部周囲。ギプス固定期間に低下した皮膚(表皮)の柔軟性や制限されていた手首の動きを取り戻すため。 腕から手指にかけての筋肉の緊張をやわらげ、手根管の内圧を下げる。
  • 可動域訓練:
    手指と手首の関節。手首の動きやつまみ動作の獲得のため。

手根管症候群で行うリハビリテーションを紹介します

手首のストレッチ a

手首のストレッチ a

下の手の手首と指を曲げて、上の手で身体側へ引く。下の手の手首(背側)が伸張されるようなイメージを持ちましょう。

注意すること:
無理せず、痛みの無い範囲で行いましょう。

手首のストレッチ b

手首のストレッチ b

親指を曲げて、小指側へ手首を曲げる。親指側の手首が伸張されるようなイメージを持ちましょう。

注意すること:
無理せず、痛みの無い範囲で行いましょう。

腱のエクササイズ

まず、手首と指をまっすぐに伸ばした状態(基本姿勢)から始めましょう。 それぞれ5秒ずつ行いましょう。

腱のエクササイズで、第1・第2関節を伸ばし第3関節を曲げている様子
1.第1・第2関節を伸ばし第3関節を曲げる。
腱のエクササイズで、指を曲げてこぶしをつくる様子
2.指を曲げてこぶしをつくる。
腱のエクササイズで、手のひらを開いて、指を反らす様子
3.手のひらを開いて、指を反らす。
腱のエクササイズで、第3関節を伸ばしたまま、第1・第2関節を曲げる様子
4.第3関節を伸ばしたまま、第1・第2関節を曲げる。

手の筋力トレーニング

掴む動作と離す動作を繰り返しましょう。

手の筋力トレーニングの掴む動作
1.掴む動作。
手の筋力トレーニングの離す動作
2.離す動作。

注意すること:

  • しっかり掴めるところまで掴みましょう。
  • 握力がついてきたら、テンポよく掴む・離すを繰り返す。
  • 柔らかいゴム製ボールをご使用ください。テニスボールは不向き。

指の筋力トレーニング

指の筋力トレーニングの様子

指の巧緻動作(細かい動き)を獲得するために行います。日常生活(洗濯、料理、食事)において必要となる動作です。

注意すること:

  • 指の腹でつまむ。
  • 1本ずつ、つまみましょう。
  • 親指と人差し指に限らず、それぞれの指で行いましょう。