肩関節とは、上腕骨頭と肩甲骨のくぼみ(関節窩)で構成されており、表面を軟骨という柔らかい軟部組織で覆われています。 この軟骨の役割は摩耗の減少や衝撃吸収です。
長年の過負荷、摩擦による摩耗等により骨が変形して痛みが生じることを変形性肩関節症と呼びます。

変形性肩関節症の症状は、肩関節周囲の腫れ、手を上に挙げた際の疼痛、摩耗により肩関節の変形が進行すると生じる肩関節の可動域制限などです。

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変形性肩関節症は肩関節の痛みや腫れ、肩の動かしにくさ、可動域制限などが生じます
変形性肩関節症の人工肩関節全置換術、リバース型人工肩関節全置換術、人工骨頭置換術

変形性肩関節症の治療方法

変形性肩関節症の治療方法として保存療法と手術療法の二種類があります。

保存療法
直接原因を取り除くのではなく症状の改善や緩和を目的とした治療。薬物療法・運動療法(リハビリ)など。

手術療法(観血療法)
患者様に応じて以下の手術法の中から選択されます。

人工骨頭置換術
上腕骨頭側のみを人工物へ置き換える手術

人工関節全置換術
上腕骨頭と肩甲骨側の両方を人工物へ置き換える手術

リバース型人工肩関節全置換術
上腕骨の骨頭と肩甲骨の関節窩を反転させた人工物へ置き換える手術。正常とは真逆の構造にすることで、腱板(インナーマッスル)の力が無くとも三角筋(アウターマッスル)の力で肩を上げることが可能となります。

上腕骨コンポーネントや関節窩コンポーネント等の人工関節の一例

変形性肩関節症手術後のリハビリについて

リハビリ内容としてまず医師の治療計画の下でリハビリが進められていきます。

変形性肩関節症手術後のリハビリの経過を例として1つ挙げます。

  1. 術後ショルダーブレースIR装着(肩を固定する装具)
  2. バストバンド除去後は全方向の自動運動許可 
  3. 術後4週経過で装具完全除去

とこのように術後はまず肩を固定する装具を装着することとなり、医師から肩の動きの制限が理学療法士に伝えられ、医師の指示のもとリハビリが進んでいきます。

変形性肩関節症 ~具体的なリハビリ方法~

変形性肩関節症手術後のリハビリとして、術後すぐの時期は術部の炎症による軟部組織(筋肉等)の緊張によって安静時痛や夜間時痛がでることがあります。
対処療法としてアイシング、セラピストによる軟部組織(主に肩周囲筋)のリラクゼーション、肩をリラックスした状態で痛みの軽減を図るリハビリを行っていきます。

医師の指示により制限がある程度解除されてきた段階で、痛みが強くならない程度の可動域訓練、Cuff訓練と呼ばれる腱板の機能訓練を行い、少しずつ腱板機能や可動域の改善を図ります。

Cuff訓練
肩腱板の機能向上を図り、肩関節を安定させスムーズに動かせるようにするためのトレーニング。

Cuff訓練の写真
Cuff訓練の写真2
Cuff訓練の写真3
Cuff訓練の写真4

術後4週ほど経つと痛みも徐々に軽くなり装具も完全除去となりますが、固定していた分、肩の動きは悪くなっていますので本格的に肩の可動域訓練、筋力訓練が始まってきます。

プーリー訓練
椅子に腰を掛けた状態で、頭上の滑車に通したロープ両端の握り棒を持ち、両手を交互に上げ下げする運動。肩関節の可動域を改善し、背筋の柔軟性を高め、脊椎のバランスを保つことが目的。

プーリー訓練の写真1
プーリー訓練の写真2

仰向けでの挙上運動
仰向けで両腕を挙上しストレッチすることで肩関節の可動域の改善を図る。

仰向けでの挙上運動の写真