肩関節は、肩甲骨関節窩と上腕骨頭で構成され、その骨の表面は軟骨で覆われています。軟骨が摩擦の減少や衝撃吸収などの役割を果たすことで、関節の正常な機能を維持し、痛みや損傷を防いでいます。

しかし、長年の過負荷、骨折による変形、脱臼などにより、関節の軟骨がすり減り周囲の組織が損傷すると、軟骨は再生されないため徐々に関節の変形が進行します。
このように肩関節の軟骨がすり減り、関節が変形する疾患が変形性肩関節症です。また、肩腱板断裂をおこし、さらに肩の骨の変形が進行したケースでは腱板断裂症性変形性肩関節症となります。

変形性肩関節症は、常に体重のかかる股関節や膝で生じる変形性関節症に比べれば発症する割合は高くありません。
変形性肩関節症を発症すると、肩関節の痛みや腫れ、肩の動かしにくさ、可動域制限などが生じます。

変形性肩関節症の症状とは?

以下に、変形性肩関節症の主な症状をまとめます。

  • 肩関節の痛み:肩関節やその周囲での慢性的な痛み。肩を挙げるように動かすと強く痛む。夜間や寝返りをうつときにも痛むことがある。
  • 関節周囲の腫れ:変形性肩関節症が進行すると炎症が生じ、関節周囲の軟部組織が腫れることがある。
  • 運動制限:肩関節の軟骨が損傷すると、関節の動きが制限され可動域が減少する。腕の挙上や回旋運動が難しくなる。
  • ゴリゴリ感:軟骨の減少や変形によって、肩の動きが悪くゴリゴリと感じることがある。

変形性肩関節症の原因

変形性肩関節症の原因は、原因が不明な一次性と病気や病態に拠る二次性に分けられます。

一次性変形性肩関節症は明らかな原因が不明のものです。加齢、スポーツや肉体労働などによる肩関節への過負荷、骨格的な問題などによる肩関節の軟骨組織のすり減りや損傷が要因と考えられます。高齢者に多く見られるのが特徴です。

二次性変形性肩関節症は病気や病態を原因とするものです。肩腱板断裂や上腕骨頭壊死、関節リウマチ、上腕骨近位端骨折などの病気や病態が要因となります。
近年、腱板断裂により関節の変形が進行する腱板断裂性変形性肩関節症は、多く見られるようになっています。

変形性肩関節症の検査と診断

まず問診において、肩関節周囲の痛みや腫れの有無、肩関節の可動域、スポーツや労働による過負荷の有無、病歴などを確認します。

変形性肩関節症の検査は、おもにX線検査によって行います。X線検査では、軟骨の減少により狭くなった関節の隙間、骨棘(骨の突出)の有無、肩甲骨関節窩や上腕骨頭の変形を確認します。
そのほかに必要があればCT検査やMRI検査も行うこともあります。

変形性肩関節症の治療について

変形性肩関節症の治療には、保存的療法と手術療法の2つがあります。保存的療法では薬やリハビリテーションで痛みの軽減を目的とします。
痛みが強い場合や保存的療法で治癒が期待できない場合は、手術療法が検討されます。手術療法では人工関節置換術が一般的です。

変形性肩関節症の保存的療法

薬物療法: 痛みや炎症の緩和のためには、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服、湿布剤。痛みが強い場合はヒアルロン酸ナトリウムやステロイドの関節内注射を行う。
リハビリテーション: 運動療法や温熱療法、電気療法などで肩の機能改善を図る。

変形性肩関節症の手術療法

変形が著しく痛みが強い場合、保存的療法で治癒が期待できない場合には、手術療法が検討されます。
手術療法では、人工肩関節置換手術が多く行われます。
人工股関節置換術には、おもに以下の術式があり、患者様の肩関節の変形程度や筋肉の状態に応じて選択されます。

  • 人工肩関節全置換術:肩甲骨と上腕骨頭の両方を置換する手術
  • リバース型人工肩関節全置換術:本来の肩関節の形状を反転させた人工関節を置換する手術
  • 人工骨頭置換術:上腕骨頭のみ置換する手術

リバース型人工肩関節全置換術の手術前と手術後のX線画像

リバース型人工肩関節全置換術の手術前のレントゲン
リバース型人工肩関節全置換術の手術後のレントゲン

(関連リンク)
変形性肩関節症の人工肩関節全置換術、リバース型人工肩関節全置換術、人工骨頭置換術