秋山多恵さん(仮名)90代女性の場合
今回紹介する患者様は90代女性の秋山多恵さんです。
第1腰椎圧迫骨折を呈されています。腰椎圧迫骨折は、外部からの力で脊椎の椎体が潰れてしまい起こります。
骨粗しょう症などで骨が脆くなっている高齢の女性に多い症状です。
受傷時の状況:
玄関のドアノブを持って靴を履こうとしたらドアが開き転倒。近所の知り合いの方に連絡し、城内病院へ救急搬送されました。
受傷前の身体能力:
屋内は杖で自立、屋外はシルバーカー(高齢者の歩行を助ける手押し車)で自立されていました。
受傷前の生活:
1人暮らし。要支援1を持たれており、訪問介護、デイサービス、配食サービスを利用されていました。洗濯や買い物などは近所の知り合いの方にお願いしていたそうです。
(関連リンク)
高齢者の骨脆弱性骨折骨折について
骨粗しょう症の高齢者にとって危険な脊椎圧迫骨折
脊椎圧迫骨折のリハビリテーション
秋山さんの腰椎圧迫骨折のリハビリを入院から退院まで詳しく紹介します
今回、秋山さんは自宅への退院を希望されていたため、私たちリハビリ部はリハビリ目標を受傷前のレベルである屋内杖自立、屋外シルバーカー自立に設定しました。
腰椎圧迫骨折 入院直後のリハビリ
まず入院直後に、骨折部を固めるために硬性コルセットの採型をしました。
硬性コルセットが完成するまでは、骨折部分の悪化を防ぐために、起き上がることを避けてリハビリを行います。
しかし、ベッドに寝たきりの状態では筋肉が痩せ細ってしまい、体力がどんどん落ちてしまいます。
そのため、担当リハビリスタッフは筋肉をほぐすためのリラクゼーション、体力維持のための筋力訓練などを施しました。
硬性コルセット完成後は、秋山さんの痛みに配慮しながら、起き上がり訓練とベッドに座る訓練から初め、車椅子に乗り移る訓練をした後、リハビリ室での訓練に移行しました。
秋山さんはずっとベッドに寝たきりだったため、「動くことが出来て気分がスッキリする!」と喜ばれていました。
腰椎圧迫骨折 リハビリ室でのリハビリ
リハビリ室では、主に起立訓練と平行棒内での歩行訓練を行いました。
歩行訓練開始当初、秋山さんは「久しぶりに動くし、腰を骨折しているから歩くときはやっぱり怖いし痛い!」とのこと。
そのため秋山さんの身体の状態に応じて、担当スッタフは歩行距離を徐々に伸ばすように指導しました。
平行棒内での歩行が安定してきた時期から歩行車での歩行訓練を開始しました。
秋山さんはこの時点で痛みの訴えが大分減って歩行車でも楽に歩けたため、すぐに秋山さん所有のシルバーカーに切り替えて歩行訓練を続けました。
腰椎圧迫骨折 退院に備えてのリハビリ
退院が近づいてきたので、退院後の日常生活を考慮したリハビリを取り入れました。
まず、杖での歩行訓練です。最初は恐怖感を訴えられましたが、歩行を続けるうちに歩き方を思い出したかのように、綺麗に杖をついて歩けるようになり、屋内杖自立にレベルを上げました。
次にシルバーカーでの屋外歩行訓練は、周りの危険を予測しながらゆっくり歩行していただきました。歩行も安定されていて危険予測も十分出来ていたので、屋外歩行を自立にレベルを上げました。
また、秋山さんは骨粗しょう症の合併症があるため、担当スタッフは、日常生活において身体に負担がかからない動作を獲得するための指導も行いました。
リハビリ目標の達成には患者様のモチベーションを上げることが大切
秋山さんは退院時の目標にしていた屋内杖自立、屋外シルバーカー自立を達成し、無事に自宅に退院されました。
秋山さんが目標である自宅退院ができた理由は、日を追うごとに痛みも徐々に減少し、移動能力が上がってくることで自信がつき、リハビリも積極的に参加されていたことが挙げられます。
イラスト:OTナガミネのリハビリイラスト集より