高齢者にとって転倒は重大なケガや生活機能の低下につながる深刻な問題です。今回の城内病院リハビリ部作成記事では、転倒の主な原因やリスクを解説し、転倒予防のために自宅で簡単にできる下腿三頭筋、腸腰筋、中殿筋を鍛える筋力トレーニングを紹介します。

安全に実施できるよう、目的や注意点も詳しく記載しています。日常生活の中で無理なく継続し、転倒予防と健康維持に役立てましょう。

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高齢者で転倒を繰り返す人の原因や特徴とは?

高齢者で転倒を繰り返す人の原因として、加齢による身体機能の低下、特に筋力やバランス能力の低下、視覚や聴覚の低下、運動機能の低下などが挙げられます。
また、過去の転倒経験、病気による歩行障害、認知症、薬の影響も考えられます。

これら内的要因以外にも外的要因として、足に合っていない履物、滑りやすい床や地面、階段や段差、足元が見づらい暗い場所なども関係してきます。

高齢者の転倒は日常生活動作能力の著しい低下リスクがある

高齢者にとっての転倒は、骨折や脳内出血、頭部挫傷など重要な外傷につながる可能性があります。転倒により長期安静状態になると、著しく日常生活動作能力が低下する恐れがあります。

そこで今回は転倒予防につながる簡単な筋力トレーニングについて紹介します。

転ばない為に下腿三頭筋を鍛える ~立って行うふくらはぎの筋トレ体操~

目的

下腿三頭筋とはふくらはぎの腓腹筋とヒラメ筋の2つの筋肉を合わせて指します。下腿三頭筋は歩行時の推進力を生み出し、バランスを維持する働きがあります。そのため下腿三頭筋の筋力低下や柔軟性低下は、転倒リスクを高めるため下腿三頭筋の強化を心掛ける必要があります。

方法・負荷量・回数

  1. 足を肩幅程度に広げて立つ。
  2. 前にある椅子や手すりなどの支えになる物を持つ。
  3. 可能な範囲でかかとを上げる。
  4. ゆっくりと元に戻る。
  5. 3~4の手順を15回×5セット行う。

注意点

かかとを上げる際に重心が前に移動していると、下腿三頭筋に負荷がかかりにくくなります。なるべく真上にかかとを上げるイメージで行いましょう。

立って行うふくらはぎの筋トレ体操1
立って行うふくらはぎの筋トレ体操2

転ばない為に腸腰筋を鍛える ~足踏み体操~

目的

腸腰筋とは、大腰筋、小腰筋、腸骨筋の3つの筋肉が複合的に構成される筋肉群です。上半身と下半身を繋ぐ筋肉である腸腰筋を鍛えることは、体幹の安定にもつながります。体幹が安定すると身体のバランスが整って足を踏ん張りやすくなるため、スポーツパフォーマンスの向上やふらつき・転倒の予防も期待できます。

方法・負荷量・回数

  1. 椅子に座り姿勢を真っ直ぐにする。
  2. その場で足踏みする。
  3. 交互左右に20回×5セット行う。

注意点

身体をまっすぐに保ち、下腹を意識して軽く引き上げることで、より腰を支える体幹の筋肉に効果的に作用させることが出来ます。

足踏み体操1
足踏み体操2
足踏み体操3

転ばない為に中殿筋を鍛える ~横向き伸脚挙げ体操~

目的

中殿筋は大殿筋と小殿筋の間にある筋肉で、中殿筋が弱くなると歩幅が狭くなり、つまずきやすくなることがあります。中殿筋を鍛えることでバランス能力を高め転倒リスクを軽減できます。また、中殿筋は股関節を安定させる働きもしています。股関節の安定性が高まるとよりスムーズに歩行や立ち座り動作を行うことが出来ます。

方法・負荷量・回数

  1. 横向きに寝て床側の手と脚は曲げてバランスを取ります。
  2. 伸ばした左脚を天井に向かってゆっくりと持ち上げ、3秒間キープした後、ゆっくり下ろします。
  3. 左右交互に10回ずつ行う。

注意点

股関節が曲がっている状態での運動は、中殿筋ではなく大腿筋膜張筋になるので気を付けましょう。なるべく股関節外旋の代償を生じないようにした方が効果が出やすくなります。

横向き伸脚挙げ体操1
横向き伸脚挙げ体操2
横向き伸脚挙げ体操3