変形性膝関節症(1)なりやすい方、メカニズム、症状についてでは、なりやすい方、メカニズム、症状を解説しました。あなたは、当てはまる項目がありましたか。変形性膝関節症が疑われ、膝が痛み日常生活に支障があるなら、整形外科で詳しい検査と適切な治療を受けましょう。
今回は、城内病院整形外科での問診・検査、治療について説明します。
問診と検査
まず、いつ頃痛み始めたか、どのような動作で痛むか、痛みの程度、これまでの怪我の経験などを患者様にお聞きします。同時に、触診を行ない、痛む部分、膝の関節の曲げ伸ばし具合、腫れや熱感、歩く様子などを確認します。
つぎに、レントゲン(X線)で患部を撮影して、膝関節の骨の変形具合、軟骨のすり減り具合、関節の隙間の開き具合などから症状の程度と病期の進行度を判断します。
さらに精密な検査が必要な場合には、MRIにて磁気を使って膝の内部を撮影することで、骨だけでなく、軟骨、靭帯、筋肉の状態を詳しく観察できます。
治療について ~保存的療法~
検査の結果、症状が軽度の場合、通院しながら保存的療法を行ないます。保存的療法の目的は、膝の痛みを軽減して、日常生活での支障を取り除くことです。
日常生活の改善指導
- 和風の生活をやめて、椅子や洋式トイレ、ベッドなどの洋風の生活に変える。
- 正座、長時間歩行、階段昇降時など痛みの生じる動作はできるだけ控える。
- 杖などを使用して膝にかかる負担を軽くする。
- 肥満の方は、膝への負担を減らすため減量する。
薬物療法
- 痛み止め目的で消炎鎮痛剤を内服する。
- 関節内注射:ヒアルロン酸の注入。ヒアルロン酸は潤滑油となり一時的に症状がよくなる。鎮痛作用もある。
- 湿布(外用剤)を服用する。膝を温めて血行を良くする温感湿布。しかし、膝が腫れて熱感があるときは冷感湿布。
リハビリ
リハビリの目的は、膝を支える筋力の回復(筋力訓練)と膝の曲げ伸ばしの回復(可動域訓練)です。
痛みがあるときは、無理なリハビリは控えてください。また、自己流のリハビリは、非効率なうえ、症状を悪化させる可能性があります。医師、あるいは理学療法士の指導のもと、適切なリハビリを行いましょう。
- 筋力訓練:
膝への負担を減らすために、太ももや膝周りの筋肉を鍛えて、膝を支える力を強化する。 - 可動域訓練:
膝を温めて、可動域を広げるためのストレッチを行う。膝の屈曲拘縮(伸びないこと)を改善する。
装具療法
装具を使って、膝にかかる負担を軽くすることと膝を安定させることが目的です。たとえば、足底板は、アジア人は膝の内側に体重がかかる人が多いため、足底板の斜度で内側にかかる負担を外側に変えます。支柱入りサポーターにより外側から固定させることで、半月板の損傷や軟骨のすり減りにより膝が不安定になることを防ぎます。
治療について ~手術療法~
保存的療法で治らなかった場合や症状が進行していて手術療法しか選択肢がない場合には、手術を行います。
レントゲン(X線)やMRIの検査により、膝の状態(どこが損傷しているか)、問題点を特定し、患者様の年齢や体力・行動力、生活スタイル、趣味・仕事なども考慮して手術方法を決定します。手術方法は、大きく3つの方法があります。
- 関節鏡視下手術:
関節鏡を使って、膝関節内の損傷した半月板の修復や増生した骨膜や骨棘(異常な骨の増殖によりできたトゲ)を切除することで、膝関節の動きがよくなります。 - 骨切り術(高位脛骨骨切り術):
自分の骨を切り、少し角度を変えることにより、比較的きれいな軟骨が存在する外側に、負荷を移動させる手術です。
患者様の膝が温存できますので、正座やスポーツが引き続き可能です。一方で、骨が癒合するまで痛みが多少続くこと、機能回復にはリハビリをしっかり行うことが必要です。 - 人工膝関節置換術:
変形した関節の表面を金属などでできた人工の部品で置き換える手術です。術後の痛みが少なく、手術翌日から立って歩くこともできます。よって入院期間も短くなります。
細菌感染をおこさないための対応が必要です。また、人工関節がすり減ったり、弛んだりすると入れ替えが必要となります。
変形性膝関節症(3)城内病院での手術療法にて、各手術法はどのような手術か、患者様の年齢や生活スタイルに合わせてどの手術法を選択するか、各手術法のメリット・デメリットについて詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
高位脛骨骨切り術と人工膝関節置換術は高額療養費制度の対象です
上記の3つの手術には、健康保険が適用されます。高位脛骨骨切り術と人工膝関節置換術は高額療養費制度の対象です。
高額療養費の申請をしていただくことで、自己負担限度額の範囲内で治療を受けることができます。詳しくは事務部窓口でお尋ねいただき、保険の種類に応じて所定の手続きを行って下さい。
城内病院整形外科は、変形性膝関節症の治療に対して経験豊富です
変形性膝関節症は、城内病院整形外科において患者数の多い病気です。したがって、保存的療法において、経験豊富な医師と病院スタッフが適切な指導と治療を提供します。
手術療法においても、技術を備えた医師により、患者様の侵襲(体へのダメージ)をより少なくすることができます。
変形性膝関節症は、放置すると加齢とともに痛みや日常生活での支障が増してきます。
症状の進行を防ぐために、立つときや歩き出したときに膝が痛い方、正座がつらい方や膝に水がたまる方は、なるべく早い段階で適切な検査と治療を行うことが大切です。