変形性股関節症は長年の負担や怪我が原因で股関節の軟骨が変形し擦り減り、股関節の骨が変形する病気です。
加齢に伴って発症する可能性が高くなるため、高齢者の約5%が変形性股関節症の患者様で、女性に多く見られます。

股関節の仕組み

股関節は、大腿骨(ふとももの骨)の上端の骨頭が、骨盤の寛骨臼(骨盤のくぼみ)にはまり込み関節を形作っています。
身体の中で最も大きな関節である股関節は、体重を支える働きをしています。

関節の表面は軟骨に覆われ、筋肉によって自在に動かすことができます。健康な股関節は大きく動かしたりねじっても安定しているため、痛みなく歩けたり、しゃがんだり、振り向いたりすることができます。

正常な股関節のレントゲン

変形性股関節症の症状

変形性股関節症の主な症状は、関節の痛みと可動域制限(股関節が曲がらなくなる)です。
最初は立ち上がりや歩き始めに、脚の付け根にズキズキとした痛みを感じます。関節症が進行するとその痛みが強くなり、さらに重症化すると持続痛や夜間痛に悩まされます。

以下は、変形性股関節症の患者様が日常生活で支障を感じることです。

  • 足の爪切りが困難になる。
  • 靴下が履きにくくなる。
  • 和式トイレの使用や正座が困難になる。
  • 長い時間、立ったり歩いたりすることがつらくなる。
  • 台所仕事などの主婦労働に支障を来たす。
  • 階段や車・バスの乗り降りも手すりが必要になる。

変形性股関節症になる原因

原因が明らかではない一次性変形性股関節症と、病気などが原因の二次性変形性股関節症に分けられます。

  • 一次性変形性股関節症
    原因がはっきりしないが、加齢や肥満などの要因が引き起こすと考えられている。
    高齢になると軟骨が弱くなり、体重などの長年の負担が積み重なって、軟骨が変形し擦り減ることが要因。
    近年、高齢化のため患者数が増えている。

  • 二次性変形性股関節症
    臼蓋(きゅうがい)形成不全や発育性股関節形成不全などの子供の時の病気や発育障害が原因の主なもの。全体の80%を占めている。
    臼蓋とは、大腿骨の骨頭を受け皿のように収めている部分。股関節の臼蓋の形が不完全な状態。
    発育性股関節形成不全とは、乳幼児期に股関節を脱臼しておこる疾患。
    他の原因には大腿骨頭すべり症、ペルテス病、骨折、脱臼、痛風、可能性関節炎などがある。

変形性股関節症の進行

痛みは症状の進行に比例して増大します。末期になると痛みが強くなり、動かなくても常に痛む持続痛や寝ているだけで痛む夜間痛に苦しみます。

  1. 前股関節症:臼蓋形成不全があるが、軟骨がすり減っていない状態。
  2. 初期:軟骨が摩耗し始めている状態。寛骨臼と頭骨の間が狭くなってきて、頭骨が変形し始めている。
  3. 進行期:軟骨の摩耗がさらに進行した状態。寛骨臼と頭骨の間がさらに狭くなってきて、頭骨の変形も著しくなってきている。
  4. 末期:骨自体の変形にまで進行した状態。寛骨臼と頭骨の間がなくなり、頭骨の形も大きく変形している。

変形性股関節症を疑えば

立ち上がりや歩き始めに脚の付け根にズキズキとした痛みを感じる。足の爪切りが困難になる、靴下が履きにくくなるなどの日常生活に支障をきたす。これらに当てはまる方は、変形性股関節症の疑いがあります。

まず、病院で検査・診断を受けましょう。痛むのに放置して重症化すると、関節の痛みがひどくなり、安静にしているときや夜寝ているときも痛みを感じるようになります。さらには、痛みを我慢し続けることで、うつになったり、引きこもってしまう方もいます。

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