人工股関節置換術とは、股関節を人工股関節に置き換える手術です。術後に患者様の満足度が高い手術法です。術後、劇的に痛みがなくなります。近年、人工股関節の性能が著しく向上しているため、人工股関節置換術を受ければ、変形性膝関節症になる以前の痛みのない生活を送ることが可能です。
城内病院は、人工股関節置換術の100%を、前方切開法による最小侵襲手術(MIS)で行ないます。理由は、患者様の侵襲(体へのダメージ)をなるべく少なくして、術後の回復を早めるためと合併症である脱臼を防ぐためです。
人工股関節置換術の切開法について
人工股関節置換術の主な切開方法として、前方切開法・前外側切開法、後方切開法などがあります。
- 前方切開法・前外側切開法:
太ももの前側・前外側を切開して、股関節の前から手術する方法。筋間を分けて股関節に侵入することで、筋肉を切離しないため、術後の早期回復や早期のリハビリに有用。 - 後方切開法:
お尻から太ももの外側を切開して、股関節の後ろから手術する方法。股関節後方にある6つの短外旋筋の一部を一旦切離するため、前方切開法に比べると脱臼リスクが高い。
前方切開法は術後の脱臼リスクがありません
変形性股関節症の手術において、注意すべき合併症は、短期的(2週間以内)には、感染症と深部静脈血栓症(ベッド上での安静が長くなると、血の流れが悪くなり血栓ができやすい)です。
股関節脱臼は、長期的に最も多い合併症です。脱臼のほとんどが後方脱臼です。後方に脱臼する原因は、後方切開法で後方の短外旋筋を一度切離するために、股関節の後方への安定性が低下するからです。後方脱臼のリスクにより、和式トイレや正座などの日常生活動作に制限を要します。
それに対して、城内病院で行っている前方切開法による最小侵襲手術(MIS)は、太ももの前方から切開するため、後方にある短外旋筋を損傷することがなく、脱臼のリスクがほとんどありません。
城内病院の前方切開法による最小侵襲手術(MIS)
日本の整形外科医の多くは、後方切開法を選択します。その理由は短外旋筋を切って術野を確保する後方切開法が、前方切開法に比べると技術的に簡単だからです。
最小侵襲手術(Minimally Invasive Surgery)は、傷つける範囲を最小にとどめることで、患者様の体へのダメージを少なくする手術です。つまり、城内病院が前方切開法による最小侵襲手術(MIS)で100%手術する理由は、患者様の侵襲(体へのダメージ)が少ないからです。
前方切開法での切り口は約10cm、後方切開法では約20cmであるため、後方切開法に比べると術後の痛みが少なく済みます。手術でのダメージが少ないため、早期にリハビリができ早い回復も期待できます。
さらに、前方切開法は後方にある短外旋筋を切離しないため、脱臼の恐れがありません。後方切開法での術後は、和式トイレや正座など脱臼しやすい動作を制限されます。
しかし、前方切開法での術後は脱臼の恐れがないために動作に制限がありません。
城内病院の前方切開法による最小侵襲手術後について
入院期間は約1ヶ月間。医師とリハビリスタッフの指導のもと、きちんとリハビリして退院していただきます。ですが、手術によって関節の痛みはなくなるので、きびしいリハビリは必要ありません。股関節の周囲の筋肉を鍛える程度です。場合によっては、手術に備えて周囲の筋肉を鍛えるために、術前にリハビリすることもあります。
前方切開法では、手術後の日常生活動作に制限はありません。痛みもなく、変形性股関節症になる以前の生活に戻れます。だから、術後の日常生活において注意することも特にありません。
忘れてはならないことは定期検査を受けることです。人工股関節の状態を見るために、術後の2年間は3ヶ月に1回、その後は1年に1回、定期的に検査する必要があります。
自己負担限度額の範囲内で治療を受けることができます
入院中にきちんとリハビリを行うため、約1ヶ月間の入院期間を目安としています。費用については加入されている保険の種類による自己負担額となりますが、高額療養費の申請をしていただくことで、自己負担限度額の範囲内で治療を受けることができます。詳しくは事務部窓口でお尋ねいただき、保険の種類に応じて所定の手続きを行って下さい。
前方切開法による最小侵襲手術は、患者様にとって非常にメリットがあります
城内病院は、人工股関節置換術の100%を前方切開法による最小侵襲手術(MIS)で行ないます。手術の技術的には難易度が上がりますが、患者様にとって非常にメリットがあるからです。
患者様の体へのダメージが少ないため、早く回復し脱臼の恐れもないために、術後の日常生活動作に制限がありません。痛みもなく、変形性股関節症になる以前の生活に戻れて、あなたがあなたらしく、日々の生活をいきいきと送ることが可能です。
(関連リンク)
高齢女性に多い変形性股関節症(1) 症状と原因
変形性股関節症(2) 城内病院の検査・治療について
変形性股関節症の人工股関節全置換術後のリハビリテーション 70代女性の場合