高齢女性に多い変形性股関節症(1) 症状と原因では、股関節の仕組み、症状、原因について解説しました。今回は、変形性股関節症の城内病院での検査・治療についてお話しいたします。
問診
患者様に、初めに痛んだのはいつか、痛む場所、痛みの強さ、いつ痛むかなどを質問します。 また、家族に同様の股関節の病気をした人がいるか、病歴(特に、乳幼児期)、お仕事、スポーツなどの趣味、生活スタイルなどに、発症の要因を見出します。
検査
X線(レントゲン)で、大腿骨頭の変形が起こっていないか、寛骨臼と骨頭の間が狭くなっていないか、症状の進行度などを調べます。症状が似ている大腿骨頭壊死症などの他の病気もあるので、最終的にはMRIで撮影して診断します。
城内病院での変形性股関節症の治療法
治療の目的は股関節の痛みをなくし、日常生活での支障をなくすことです。変形性股関節症の治療方法には、大きく分けて保存的療法と手術療法があります。どちらを選ぶかは、症状の進行度に応じて、患者様の性別、年齢、仕事や趣味、生活スタイルなどを考慮して、医師が総合的に判断します。
- 保存的療法:前股関節症、初期の方には保存的療法を勧める。
- 手術療法:70才未満の進行期と末期の方には、骨切り術か人工股関節置換術のどちらかを勧める。
70才以上の進行期と末期の方には、人工股関節置換術手術を勧める。
理由は、人工股関節の寿命が、現在のところ、約25~30年と言われているため。
変形性股関節症の保存的療法
痛みが強い時は安静第一です。薬などで痛みが収まれば、股関節周辺の筋肉をリハビリで強化します。保存的療法で患部自体が治ることはないので、周辺の筋肉で股関節の働きを代替できるようにすることが、保存的療法の目的です。
保存的療法にはリハビリや薬物療法などがあり、医師の指導のもと、これらを組み合わせて通院しながら行います。
- 日常生活指導:負担を減らして股関節を大事にすることを心がける。日常生活において痛みを悪化させる立ち座りを繰り返さないために、生活を工夫しましょう。過体重があるなら減量も必要。杖を使用して負担を軽くすることも効果的。
- 薬物療法:痛みを抑えるため、消炎鎮痛剤を内服する。
- 運動療法:リハビリのこと。股関節の周りの筋肉を鍛えることで代償させる。痛みがあると、どうしても歩かなくなり筋肉が衰える。週2~3回の水中歩行や水泳は理想的なリハビリ。リハビリは体重の減量、増加防止にも効果がある。 運動療法は疼痛を誘発してしまう可能性があるため、慎重に始めて徐々に強度を高めていくことが重要。
保存的療法を続けても痛みがとれない、痛くて日常生活動作に支障がある場合、再度検査して手術療法を検討します。
変形性股関節症の手術療法
変形性股関節症の手術法は、骨切り術と人工股関節置換術があります。城内病院ではほとんどの場合、人工股関節置換術を患者様にお勧めしています。理由は骨切り術は治るまで半年程かかり、患者様の負担が大きいこと。それに対し、人工股関節置換術は2~4週間程度です。
骨切り術とは
骨の一部を切断して、股関節の形や負荷のかかる方向を改善させる手術。若い方には骨切り術を選択することもあります。人工股関節置換術を2回行うのは大変なので、骨切り術で70歳まで自分の関節を持たせて、それ以降に人工股関節置換術をすることもあります。
人工股関節置換術とは
人工股関節置換術とは、股関節を人工股関節に置き換える手術です。症状が進行して、他に治療法がないときに行われます。ただし、患者様の年齢や症状の進行度によっては、いきなり、人工股関節置換術を検討する場合もあります。
人工股関節は特殊な金属、プラスチック(ポリエチレン)、セラミックなどで作られています。大腿骨側と骨頭、寛骨臼側の部品が組み合わさって人工関節を構成します。人工股関節の寿命は、現在のところ約25~30年と言われています。
人工股関節置換術は、受けた患者様の満足度が高い手術です。術後、劇的に痛みがなくなります。さらに、城内病院では、患者様の侵襲(体へのダメージ)をなるべく少なくして、術後の回復を早めるため、前方切開法による最小侵襲手術(MIS)を行ないます。
(関連リンク)
変形性股関節症(3)人工股関節置換術の前方切開法による最小侵襲手術(MIS)
検査結果をもとに、あなたに適した治療法を医師が総合的に判断します
まず、病院で検査・診断を受けましょう。痛むのに放置して重症化すると、関節の痛みがひどくなり、安静にしているときや夜寝ているときも痛みを感じるようになります。さらには、痛みを我慢し続けることで、うつになったり、引きこもってしまう方もいます。
検査結果をもとに、あなたの性別、年齢、仕事や趣味、生活スタイルなどを考慮して、医師が総合的に治療法を判断します。股関節が痛み、日常生活に支障がある場合、なるべく早く病院で検査して適切な治療を受けることが大切です。