不眠症は慢性化してしまうと、なかなか眠れないことに不安や恐怖を感じて、過度の緊張状態が続き睡眠にこだわりすぎるようになります。そしてさらに不眠が悪化して悪循環に陥るケースは多く見られます。

慢性不眠症は医師の診断を受けて適切な治療を受けないと回復しにくい病気です。不眠症の原因はストレス・メンタルヘルスの問題、不規則な生活リズム、周囲環境、持病薬の副作用など様々です。多岐にわたる要因の中から、患者様それぞれの原因を特定して、原因を取り除く必要があります。

不眠症の治療には、薬を使わない治療(非薬物治療)と薬を使う治療(薬物治療)があります。現在の不眠治療は、睡眠薬を用いた薬物治療が中心ですが、薬による治療ばかりではありません。
まず、眠りに対する過度なこだわりや不安を解消するために、睡眠の正しい知識を学び、間違った睡眠習慣や対処法を改めることが必要です。

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不眠症 ~寝付けない 中途で目が覚める 熟睡できない~
不眠症の薬を使う治療(薬物治療)に使われる西洋医薬と漢方薬

睡眠時間にこだわりすぎない

不眠症の対策や治療を始める前に、皆様には覚えて頂きたいことがあります。それは「睡眠時間にこだわらない」ということです。
その人にとって必要な睡眠時間には個人差があります。3〜4時間ほどの睡眠で充分な人(ショートスリーパー)もいれば、1日10時間ほども寝る人(ロングスリーパー)もいます。

不眠症は、寝つきが悪い、中途で目が覚めるなどの夜間の不眠症状だけでなく、夜間の不眠が原因で日中に倦怠感・意欲低下・集中力低下・食欲低下などの不調が出現する病気です。
逆に考えると、眠りが浅く感じられて睡眠に満足できなくても、日中の生活に支障がなければ不眠症とは診断されません。

「睡眠時間がいつもより短くなってしまった」、「夜中に何度か目が覚めてしまった」、このようなことにこだわりすぎれば、眠れないことへの不安感から不眠はかえって悪化する傾向があります。
日中の生活に支障がなければ、睡眠時間や中途覚醒の回数にこだわりすぎないことも大切です。

不眠症の薬を使わない治療(非薬物治療)とは?

不眠症を改善するためには、不眠の原因を取り除く必要があります。医師から患者様の不眠症状に応じた指導を受けて適切な睡眠習慣を身につけましょう。
以下にいくつかの一般的な非薬物治療のアプローチを示します。

不眠症に対する生活習慣の改善

  • 規則正しい睡眠スケジュール: 就寝・起床時間を一定にして体内時計を整える。
  • 睡眠時間にこだわらない:寝つけない場合はいったん寝床を離れ緊張をほぐし、眠気を覚えたら寝床に入り直す方法も効果的。
  • 寝る前のリラックス: 就寝前にリラックスする行動(読書、入浴、瞑想など)を取り入れることで、睡眠の質を向上させる。気分転換をはかりストレスをためないように。
  • 適切なタイミングでの食事と運動: 寝る直前の大量の食事や激しい運動は避ける。
  • カフェインとアルコールの摂取制限: 寝る前のカフェインやアルコールの摂取は睡眠の質を損なうことがある。
  • 入眠前のスマホ使用を控える:スマホのブルーライトには覚醒効果があるため控える。
よる熟睡して、朝すっきり目覚める女性のイラスト

睡眠環境の改善

  • 快適な寝具と部屋::良好な寝具と静かで暗い環境を確保することが重要。ベッド・布団・枕・照明などは自分に合ったものを選ぶ。
  • 温度調節:適切な温度で寝ることで、快適な睡眠環境を作りましょう。睡眠のための適温は20℃前後で、湿度は40〜70%くらいに保つのが良い。

不眠症の認知行動療法 (CBT)

眠れないことに不安や恐怖を感じて、過度の緊張状態や睡眠にこだわりすぎるようになる慢性不眠症の効果的な治療法として認知行動療法(CBT)があります。医師による指導のもと、睡眠に関する誤った考え方と習慣を修正することで不眠症状の改善を図ります。