柔道で投げ技のイラスト 手、腕や足の「しびれ」を訴えて来院される患者様は多くいらっしゃいます。
「ジンジンする・ビリビリする」「震える」「思うように動かない」など患者様によって訴える「しびれ」の症状はさまざまです。
そのため、「腕がしびれるけど原因がわからない」「どこの病院に行けばよいかわからない」などの不安を持った患者様が多くいらっしゃるようです。

本記事のテーマである上肢(腕)のしびれは、整形外科が関与することの多い「しびれ」です。
医師が診察すればしびれる部位・範囲、しびれ方、しびれる時間などで原因である疾患をある程度特定することが可能です。
起床時に腕が体の下敷きになってしびれた場合などの一過性のしびれ以外は、病院を受診されることをお勧めします。

上肢のしびれの原因を特定する方法

問診時、患者様は自身が感じる「しびれる」をさまざまに表現されます。それは異常感覚、運動麻痺、感覚低下、感覚過敏も患者様は「しびれる」と表現されることがあるからです。

医師は上肢のしびれの原因を見分けるために、しびれを訴える患者様に以下のことをお聞きします。

  • 契機:しびれの原因となる事故や怪我による外傷がなかったか。
  • 手の使用頻度:仕事、趣味や日常生活での手の使用頻度。手を酷使していないか。
  • タイプ:1日のいつしびれるか。しびれの持続時間。どのような感覚か。
  • 部位:片腕あるいは両腕か。肩、腕、指のどの部位がしびれるか。
  • 既往歴:糖尿病、脳腫瘍や脳血管障害など他の病気でもしびれることがあるため。

しびれる部位によって原因を特定する方法

しびれる部位によって、しびれる原因をある程度特定することが可能です。

  • 手根管症候群:親指・人差し指・中指と薬指の親指側半分の手のひら側だけがしびれる。
  • 肘部管症候群:小指と薬指の小指側半分の手の甲側がしびれる。
  • 撓骨神経麻痺:親指・人差し指・中指の手の甲側がしびれて手首が背屈しにくい。
  • 頚椎症や胸郭出口症候群:手の甲・前腕・上腕がしびれている。両手がしびれる。

上肢のしびれの検査は?

レントゲンにて頚椎や上肢の骨の異常を確認します。神経が圧迫されている部分を探せるMRIは原因特定に有効です。

上肢のしびれの原因となる疾患について

整形外科の関与する上肢のしびれの主な原因としては脊髄神経根障害と末梢性神経障害があります。
各疾患の原因・症状・治療については関連リンク先にて詳しく解説しています。ぜひご参照下さい。

脊髄神経根障害による上肢のしびれ

脊髄神経根障害は頚髄症や頚椎症などが原因で、脊髄症と神経根症に分けられます。頚椎症は頚椎の椎間板や椎骨が加齢に伴って変性・変形することで、脊柱管や椎間孔が狭くなる状態です。
その結果、脊髄が圧迫されて脊髄症状が出るものを頚椎症性脊髄症、神経根の症状が出るものを頚椎症性神経根症と言います。

頚椎症性脊髄症:
椎間板の変性が進行すると形成される骨棘と老化により肥厚した靭帯が、脊髄の脊柱管を圧迫すると生じるのが脊髄症です。
脊髄症の症状は、おもに左右両方の手足のしびれ、知覚障害、歩行障害や排便排尿障害が現れます。

頚椎症性神経根症:
椎間板の変性が進行すると形成される骨棘や椎間板のヘルニアが、脊髄から上肢(腕・手)に伸びる神経根を圧迫すると生じるのが神経根症です。
神経根症の症状は、おもに片方の首・肩・肩甲骨付近・腕・手にかけてしびれや痛み、知覚障害や筋力低下が現れます。
脊髄から片方の上肢に伸びている神経根が圧迫されているために、症状もどちらか片方の腕に出ることが特徴です。
(関連リンク)
頚椎症 頚椎症性神経根症と頚椎症性脊髄症

末梢性神経障害による上肢のしびれ

末梢性神経障害とは、末梢神経が狭窄部位で絞扼(圧迫)されることによって生じる神経障害の総称。
上肢がしびれる原因の末梢性神経障害には、手根管症候群、肘部管症候群、撓骨神経麻痺、胸郭出口症候群などがあります。

手根管症候群:
手のひらの付け根部分にある手根管というトンネルの中にある正中神経が圧迫されて、指にしびれが起こる病気。
しびれや痛みが人差し指と中指を中心に出ます。進行すると親指と薬指(親指側半分)を含む3本半にしびれが広がります。
(関連リンク)
手根管症候群

肘部管症候群:
肘の内側を通る尺骨神経が圧迫されたり引っ張り続けられたりすると障害が生じ、指と手がしびれる病気。
薬指の小指側半分と小指、手のひらの外側にしびれが現れます。朝起きた時にしびれを感じることが多いようです。
(関連リンク)
肘部管症候群とは尺骨神経が障害されると指と手が痺れる病気

撓骨神経麻痺:
橈骨神経は手の甲側の感覚を伝える神経。圧迫・障害されると親指から中指までの手の甲(手背)側がしびれて手首が背屈しにくくなります。

胸郭出口症候群:
胸郭出口で神経や血管が圧迫されることで生じるさまざまな症状の総称。おもな症状は、肩口から先の手のしびれや脱力感、肩・腕・肩甲骨周囲の痛みなどです。
(関連リンク)
胸郭出口症候群