頚とは首のこと。頚部にある椎骨を頚椎と呼びます。頚椎は7つの骨から構成され頭部を支えています。
頚椎にある頚髄には、四肢(両手、両足)を支配する神経があるため、何らかの要因で障害されるとさまざまな症状が現れます。

頚椎症とは頚部の痛みなどの症状の総称です。障害される部位によって、頚椎症性神経根症(以下、神経根症)と頚椎症性脊髄症(以下、脊髄症)に分類されます。
神経根や脊髄が圧迫されると、首・肩・腕・手の痛みやしびれ、足のしびれによる歩行障害などが生じます。

頚椎症の原因と病態

頚椎症の原因は老化による椎間板の変性です。背骨の椎骨(椎体)の間でクッションの役割をしている椎間板は、老化によりひびが入ったり潰れるなどの変性が進みます。
椎間板が変性すると椎骨に骨棘(こつきょく:骨の一部がとげ状に大きくなるもの)ができたり、ヘルニア(椎間板が飛び出た状態)になったりします。

神経根症の病態

椎間板の変性が進行すると形成される骨棘や椎間板のヘルニアが、脊髄から上肢(腕・手)に伸びる神経根を圧迫すると生じるのが神経根症です。

頚椎横断のイラスト
頚椎横断図
出典:社団法人 日本整形外科学会 整形外科シリーズ12 頚椎症

脊髄症の病態

椎間板の変性が進行すると形成される骨棘と老化により肥厚した靭帯が、脊髄の脊柱管を圧迫すると生じるのが脊髄症です。

頚椎側面のイラスト
頚椎側面図
出典:社団法人 日本整形外科学会 整形外科シリーズ12 頚椎症

頚椎症になりやすい方

患者様はおもに中高年の方に多く見られます。
悪い姿勢を取り続けることや継続的に首に負担がかかる重いものを持つお仕事などは、頚椎の椎間板の変性を早める可能性があります。

頚椎症の症状

頚椎症の症状は、圧迫される部位が異なる神経根症と脊髄症では特徴的な違いがあります。

神経根症の症状

神経根症の症状は、おもに片方の首・肩・肩甲骨付近・腕・手にかけて痛みやしびれ、知覚障害や筋力低下が現れます。
脊髄から片方の上肢に伸びている神経根が圧迫されているために、症状もどちらか片方に出ることが特徴です。

脊髄症の症状

脊髄症の症状は、おもに左右両方の手足のしびれ、知覚障害、歩行障害や排便排尿障害が現れます。また、ボタンを掛けるなどの手先の細かい作業が困難になることも多く見られます。
脊髄が通る脊柱管が圧迫されるため、左右両方の手足にしびれの症状が出ることが特徴です。

頚椎症 城内病院での診断と検査

頚椎症の診断には、問診やテストが重要です。
まず問診において、患者様に詳しく症状を伺います。症状を詳しく伺うことで、頚椎のどの場所が圧迫されているか判断できます。

  • 痛みやしびれるのはどこの場所か?
  • 日常生活動作で困難なことはないか?
  • 知覚障害、歩行障害、排便排尿障害はないか?

徒手検査であるスパーリングテストやジャクソンテストは、神経根が障害されていないかを確かめる神経学的テストです。

スパーリングテスト


患者様がイスに座り、天井を見上げるように頭を後ろに倒した状態でそのまま右や左に傾け、後ろにまわった医師が上から頭を押さえつけます。
神経根の支配領域に痛みやしびれが出た場合は、神経根が障害されています。

ジャクソンテスト


患者様がイスに座り、後ろにまわった医師が患者様の前頭部に両手を置き上から押さえつけます。
神経根の支配領域に痛みやしびれが放散した場合は、神経根が障害されています。

詳しい問診やテストを行ったのちに、レントゲン(X線)やMRIで患部を撮影して、神経根症あるいは脊髄症の有無を確認します。

脊髄症 MRI画像
脊髄症 MRI画像

頚椎症 城内病院での治療

頚椎症の治療法は神経根症と脊髄症では異なります。

神経根症の治療

神経根症は自然治癒することが多い病気です。貪食細胞が飛び出たヘルニアを食べたり、骨棘により圧迫された神経根の炎症が治まれば、自然に痛みがなくなることがあります。

神経根症の治療は基本的には保存的療法です。ほとんどの場合手術には至りません。
日常生活の中で、頚椎への負担をできるだけ軽減するために良い姿勢を保つことが重要です。

  • 良い姿勢を保つこと:日常生活でなるべく上を向かない。高い枕を使用する。
  • 薬物療法:痛み止めの鎮痛剤を服用。
  • 装具療法:頚椎カラーで患部の安静を保つ。
  • ブロック注射:痛みが強い場合は、痛みが神経を伝わるのをブロックする。
  • 牽引療法:上部から引っ張ることで、頚椎にかかる圧力を軽減する。
  • 物理療法:温熱療法やリハビリを行う。

脊髄症の治療

症状がしびれのみの場合は、保存的療法で経過観察することもあります。
しかし、日常生活に支障があるような障害、たとえば手先をうまく動かせない、階段の昇降に苦労するなどの場合は症状に応じて適切な手術法が選択されます。

手術には、脊髄の通る狭くなった脊柱管を広げる脊柱管拡大術、脊柱管を圧迫している骨棘や椎間板ヘルニアを取り除く前方固定術などがあります。