日本人の死因第2位は心臓の病気によるものです。死因となる心臓の病気のなかで、とくに多くを占めるのは、心筋梗塞と心不全など心筋梗塞などから併発する病態です。
心筋梗塞は、発作がおきるとなるべく早く治療を受けなければならない、直接命に関わる危険な疾患です。
心筋梗塞は、冠動脈が梗塞して心筋(心臓の筋肉)への血流が遮断され、酸素の供給を受けられずに心筋が壊死すると、死にさえ至る虚血性心疾患です。
今回は、原因、なりやすい方、症状を中心に心筋梗塞を解説します。
城内病院での心筋梗塞の検査・診断と治療については、狭心症と心筋梗塞 城内病院での診断・検査と治療を参照してください。
狭心症については、冠動脈疾患 狭心症についてを参照してください。
心臓と冠動脈
まず、心筋梗塞の解説において欠かすことのできない心臓と冠動脈についてお話しましょう。
心臓は2つの肺のあいだ、横隔膜の上、体の中心よりやや左に位置しています。大きさはその人のこぶし程で、心筋という厚い筋肉でできています。
人が生きているあいだ、1分間に約70回、絶えず収縮と拡張を繰り返して、全身に血液を送るポンプ機能を心臓は担っています。
この心臓のポンプ機能で常に送り出される血液により、体のすみずみに酸素や栄養分が運ばれます。
つまり、心臓が止まりポンプ機能の役割を果たさなくなると、全身に血液が行き渡らなくなり、生命の維持に関わることとなります。
冠動脈について
常に収縮・拡張を続ける心臓の厚い筋肉自体の細胞も多量の血液を必要としています。
その心臓に血液を送り、酸素と栄養を供給する役割をしているのが、大動脈から心臓の外側を冠するように走行している冠動脈です。
冠動脈は左冠動脈と右冠動脈に分かれています。左の冠動脈はさらに、左前下行枝と左回旋枝に分かれています。
冠動脈は全身に血液を送り出すポンプ機能を持つ心臓を栄養し、その心臓から全身の隅々までに酸素や栄養が行きわたっています。 ゆえに、右冠動脈と左冠動脈の合計2本しかない心臓全体を栄養する冠動脈は、人間の生命維持に非常に重要度の高い血管で、閉塞した場合には死にさえ至ることもあります。
心筋梗塞について
心筋梗塞の患者数は近年の食生活の西洋化や高齢化などに伴い、増加傾向にあります。
直接命に関わることもある危険な心筋梗塞について、よく理解することで予防に役立てましょう。
心筋梗塞の原因と病態
心筋梗塞の発症原因を順をおって解説します。
まず、動脈硬化(アテローム硬化)が進行し冠動脈内にできていたプラーク(粥腫)が、血液に接する動脈の一番内側の膜(内膜)を脆弱にさせます。
ある時、そのプラークを含む内膜が破れるように破綻・破裂して、その破綻・破裂部に血小板など血液を固める成分が集まります。
その結果、血液の塊である血栓ができて、完全またはほぼ完全に冠動脈の血流を遮断してしまいます。
冠動脈が閉塞して、閉塞した先の冠動脈が栄養している心筋の部分に血液がほとんど行かなくなり、心筋が壊死しようとしている状態を急性心筋梗塞といいます。
完全に壊死した心筋が再生することはありませんが、動きの悪い薄い線維のような組織に置き換わることがあります。
側副血行路という小さな細い新生血管が生き残っている冠動脈から発生し、壊死した心筋の血流の手助けをすることもあります。
アテローム硬化とプラークについては、“動脈硬化(2)アテローム硬化のメカニズム”(リンク)において詳しく解説しています。参照してください。
心筋梗塞はいつおこりますか? きっかけは何ですか?
冠動脈内のプラークの破綻が「いつおこるか、きっかけは何か」ということは、現在のところはっきりとは解明されていませんが、とくに血圧の変動が激しい状態になった時にプラークの破綻がおきやすいといわれています。
以下は、生活習慣病や喫煙習慣のある方が、心筋梗塞をおこしやすい具体的なケースです。
- お風呂から上がって、とても寒い部屋で着替えようとした時。
- 冬場の寒い時期、暖かい部屋と寒い室外の移動。
- 冬場早朝の寒い中でトイレに行った時。
- サウナで脱水状態になって、急に冷たい風呂に入ろうとした時。
心筋梗塞になりやすい方
心筋梗塞の原因は冠動脈の動脈硬化ですので、なりやすい方は動脈硬化になっている方やその因子(要因)をお持ちの方と考えられます。
- 遺伝的要素:家族に心臓病歴がある方。家族が脳梗塞になった方。家族中が高血圧の方。
- 糖尿病の方。
- 脂質異常症(高脂血症)の方。家族性コレステロール異常の方。
- 高尿酸血症、痛風の方。
- 煙習慣のある方。
- 肥満が顕著な方。
- ストレスをためやすい方・感じやすい方。
心筋梗塞の症状について
狭心症より発作の持続時間が長く、痛みも激しいのが特徴です。胸以外が痛み、心筋梗塞と気づかない場合もあります。
- 左胸を中心に胸の重苦しく強い痛み。圧迫感。
- 胸が強くしめつけられ、焼け付くような激しい痛み。
- 激しく脈が乱れ、呼吸困難になることもある。
- 首、肩や背中に痛みが出ることもある。みぞおちが痛くなることもある。
- 冷汗、嘔吐や意識障害(意識消失など)を伴うこともある。
心筋梗塞が極めて軽度な場合、感覚が低下している高齢者や糖尿病合併患者には胸痛が伴わないことがあります。(無痛性心筋梗塞)
心筋梗塞をおこしたら? 病院を受診すべきタイミングは?
城内病院がかかりつけ医の患者様が心筋梗塞をおこしたら、すぐに城内病院に電話などでお知らせください。
患者様の状態を伺って、すぐに救急車を呼び、閉塞した冠動脈を広げて血流をすぐに再開させることのできる救急施設のある病院に直接行くべきか、一度城内病院に来院されて検査すべきかをお伝えします。
心筋梗塞は、治療が早いほど治癒する確率が高い疾患です。
睡眠中など深夜に発作がおこった場合に、朝まで我慢しようとする患者様がいらっしゃいますが、かえって手遅れになることがあります。我慢せずに、早めに病院を受診して下さい。
(関連リンク)
動脈硬化(1)なぜ起きるのか? どのような病気を引き起こすのか?
動脈硬化(2)アテローム硬化のメカニズム
動脈硬化(3)城内病院での検査と診断
動脈硬化(4)城内病院での治療