60代女性のイラスト 安藤信子さん(仮名)60代女性

受傷時の状況
職場にて作業中に台上から転倒されました。
職業
介護職
家族構成
独身
受傷前の生活
平屋で1人暮らしをされています。
体型
痩せ型 スマート

城内病院へ来院され診断・検査を受けたところ、大腿骨頚部骨折と判明しました。手術適応となり、骨接合術(γ-nail法)を施行されました。

大腿骨頚部骨折は、高齢者が転倒したときによく起こります。特に、骨粗しょう症などで骨が脆くなっていることが多い高齢の女性によく見られます。

(関連リンク)
高齢者の骨折 原因と手術前後のリハビリテーションについて
高齢者が転倒しないために 注意すべきことと3つの転倒予防運動
高齢者の骨脆弱性骨折骨折について

職場復帰を目指しての大腿骨頚部骨折のリハビリ

安藤さんは、「退院後、もう一度職場で仕事がしたい」と希望されました。ですので、私たちリハビリ部は、安藤さんの大腿骨頚部骨折のリハビリの最終ゴールを職場復帰と設定しました。

安藤さんが職場復帰できるために、担当スタッフは早期離床から開始し筋力訓練とバランス訓練を中心にリハビリを実施しました。

大腿骨頚部骨折のリハビリ 早期離床を目指して

車椅子に乗る60代女性のイラスト 早期離床を目指す理由は、筋肉が落ちる事や関節が硬くなる事を防ぐためです。

  1. ギャッチアップ:医療用ベッドの背上げ・足上げ機能を利用し体を動かすこと。
  2. 端座位:ベッドの端に腰掛けることで安全に体を動かす。
  3. 車椅子への移動:早期に車椅子に移ることで、二次的な廃用症候群を予防します。

と1・2・3の順にリハビリを行いました。
手術直後ということもあり、安藤さんは体を動かすことに対して痛みからくる恐怖心や不安を訴えられました。
リハビリスタッフは、安藤さんに「痛かったらすぐに言ってくださいね」と声を掛けたり、その日その日の状態をよく観察しながら、無理なく根気よくリハビリを進めていきました。

大腿骨頚部骨折のリハビリにおける筋力訓練

筋力訓練の目的は歩行能力の獲得です。まずは寝た状態から筋力訓練を行い、座位、立位の順で訓練を実施します。 腸腰筋(腰椎と大腿骨を結ぶ筋肉)、四頭筋(大腿骨を挟み四方に存在する筋肉)、中殿筋(お尻の筋肉の1つ)、大殿筋(お尻の筋肉の1つ)の各筋群に対して痛みのない範囲で筋力を強化します。

筋力訓練を続けていくと安藤さんの痛みが軽減したため、最終的に歩行能力の向上につながるように、重錘(おもり)などで負荷を上げて訓練を続けました。

安藤さんも、「はじめは筋トレも嫌だなあと思っていたけど、リハの先生が色々考えてくれるから楽しくできた」とおっしゃってくださいました。

大腿骨頚部骨折のリハビリにおけるバランス訓練

バランス訓練の目的は、バランス能力を向上させることで、再度つまずいて転倒することを防ぐことです。
バランス訓練では、全身のバランス能力向上のために、平行棒内での片脚立ちやバランスディスクを用いた訓練を実施しました。

安藤さんも「これは一番効果が実感できる訓練だわ」とリハビリに前向きに取り組んでくださいました。
この時期になると、安藤さんに自信がついてきたことがスタッフにも感じられるようになってきました。

大腿骨頚部骨折のリハビリにおける持久力訓練

バランス訓練を始めて少し経った時期から、自転車エルゴメーター(エアロバイク)を用いて持久力訓練を始めました。初めは低負荷から開始し徐々に負荷を上げていきました。
この訓練の目的は、退院後の日常生活に戻られても苦なく生活していただくために、全身の体力(持久力)を向上することです。
安藤さんは体力的にきつい様子でしたが、いやいやながらも頑張ってくださいました。

手術直後の患者様の不安感や恐怖心を取り除くことが大切

車椅子に乗る女性と介護する女性のイラスト 安藤さんは退院後に自宅に戻られて、職場復帰も可能となりました。しかし、依然として受傷以前に戻っていない筋力や体力に不安があり、自信を取り戻すためにも城内病院系列の保利クリニックにて、リハビリを継続されています。

私(担当リハビリスタッフ)が、安藤さんが退院された後に思ったことは、手術直後に安藤さんが覚えた不安感や恐怖心に対してのメンタルケアをもう少し考えながら行うべきだったなということです。
反対に、良かったと考えることはリハビリスタッフ数人でリハビリを担当したため、さまざまに違った方法での訓練を提供できたことではないでしょうか。