関節リウマチとは?

関節リウマチとは関節が腫れ、放っておくと関節が変形する病気

関節リウマチとは、関節が炎症を起こし軟骨や骨が破壊され関節の機能が損なわれ、放置しておくと関節が変形してしまう病気です。関節は腫脹し激しい痛みを伴います。
ほかの関節疾患と異なる点は、関節を動かさなくても痛みが生じる点です。手関節や手足の関節に生じやすく、左右対称で同時に症状が生じやすいことも特徴です。
また関節リウマチの症状は関節だけでなく、発熱、易疲労感、食欲低下などの症状を生じ、全身に炎症が広がることもあります。

正常な指とリウマチの指の比較
典型的なリウマチの手指

免疫系が自分自身の組織を攻撃することが原因

関節リウマチで生じる関節の腫脹と痛みは、免疫系に異常が生じたために起こると考えられています。
免疫は、外部から体内に侵入してきた細菌やウィルス、またそれらに感染した細胞、癌細胞などを破壊し、体内に侵入した異物や細胞を排除する働きを担っています。しかし、免疫に異常が生じると、誤って自分自身の組織や細胞を攻撃してしまい、炎症が生じます。

関節リウマチの場合、関節の腫脹や痛みとなって現れます。関節の炎症が持続すると、関節周囲を取り囲んでいる滑膜が腫脹し、炎症がさらに悪化し、骨や軟骨を破壊していきます。

正常な関節とリウマチの関節の比較
関節リウマチの関節変化

炎症の悪化を引き起こすのはIL-6やTNFαなどのサイトカイン

体内で炎症が生じたとき、サイトカインという物質が過剰に分泌され炎症が悪化します。炎症を悪化させるサイトカインにはIL-6(インターロイキン6)やTNFα(ティーエヌエフアルファ)などがあります。
近年、関節リウマチの治療で使用されるようになった生物学的製剤は、IL-6やTNFαといったサイトカインの働きを抑え、炎症を鎮静化させることができます。

30~50歳代の女性に多く発症

関節リウマチが発症するピークの年齢は30~50歳代で、男性よりも女性のほうが約4倍多く発症します。しかし60歳以降に発症する方も少なくありません。

早期発見、早期に治療すれば関節破壊の進行が抑制できます

関節リウマチは関節が破壊、変形され、動かなくなってしまう病気です。最近の研究で関節破壊は、関節リウマチ発症早期から進行することが明らかになりました。
そこで早期に発見し、早期から適切な治療を行えば、症状をコントロールし関節破壊の進行を防ぐことができます。

関節破壊の進行チャート図
関節破壊の進行

関節破壊は従来考えられていた以上に進行が早いことがわかってきました。そのため現在は早期からの積極的な治療が推奨されています。

関節リウマチの診断

関節リウマチの診断に必要な項目

1つ以上の関節の腫脹がある(触診、超音波、MRI検査のいずれかで)

  • 腫脹または痛みがある関節の数(診察)
  • 血液検査値異常の有無(リウマトイド因子、抗CCP抗体)
  • 関節炎の持続期間(6週間未満/6週間以上)
  • 炎症反応の有無(CRP、ESR)

関節リウマチの症状は、他のリウマチ性疾患の症状とよく似ているため、関節リウマチかどうかを自分で判断することは簡単ではありません。関節リウマチの診断は、問診、診察、検査などに基づき専門医が行うことになります。

関節リウマチの症状や用語の解説

朝のこわばり
朝起きてしばらく関節が思うように動かない。朝のこわばりがひどく、早朝の家事や仕事がつらいことがある。
関節症状
関節リウマチではとくに指、手関節、肘、膝、足関節などに腫脹と痛みが生じる。関節リウマチでは右半身の関節に症状が出ると、左半身の同じ箇所の関節にも症状が認められる。このような症状の出方を左右対称性と呼ぶ。
リウマトイド因子
ヒトのIgGというたんぱく質に対する抗体で、関節リウマチの炎症に関係する。関節リウマチの患者様では約80%の方が、リウマトイド因子陽性となる。
抗CCP抗体(抗環状シトルリン化ペプチド抗体)
関節リウマチの診断に有用性が高い検査方法。
CRP(C反応性タンパク)
肝臓で作られるたんぱく質。この項目の上昇は炎症を意味する。関節リウマチの患者様の約8割で上昇。この値が高いと関節リウマチの勢いが強く、治療が効いてくるとこの値も下がる。この点でCRPは診断と治療の良い目安になる。
ESR:赤血球沈降速度
細い管の中で赤血球が沈む速度のこと。炎症の程度が強いとこの数値が高くなる。
MMP-3(マトリックスメタロプロテアーゼスリー)
軟骨を構成する成分を壊してしまうたんぱく質。つまり、これが高いと関節が徐々にいたんでくる可能性が高く、半年後の関節の破壊を示す指標。

関節リウマチの治療目標と治療法

目標を持った治療という考え方 Treat to Target

関節リウマチの治療は、患者様と主治医が治療の目標をはっきりと決めて、その目標を達成するために一緒に治療していくことが重要です。
その目標は次のようなものです

  1. 炎症を抑える
  2. 骨や関節の破壊を抑える
  3. 普通の生活ができる

まず、1の関節リウマチの炎症を十分に落ち着かせること(臨床的寛解)が重要です。
そして臨床的寛解が達成できたら、症状が悪くなっていないか、今の治療で十分かどうかを定期的にチェックし、治療を見直していくことで、臨床的寛解の状態を維持する必要があります。その結果が2、3につながっていくと考えられています。

関節リウマチの治療法

関節リウマチの治療法として、症状や進行にあわせて、薬物療法、手術療法、リハビリ療法などが行われます。
薬物療法の目的は、関節の痛みや腫脹を抑え、関節破壊に進行を制御することです。
手術療法は、増殖した滑膜を取り除く滑膜切除術、破壊された関節を人工関節に置き換える機能再建術などがあります。

リハビリ療法には、関節の動く範囲を広げ、血液の流れをよくして痛みや筋肉のこわばりをとるための運動療法、患部を温めて痛みやこわばりを和らげる温熱療法などがあります。

関節リウマチ治療のための薬

消炎鎮痛薬

消炎鎮痛薬は関節の腫脹や痛みを和らげる働きがあります。速効性がありますが、関節リウマチの炎症を根底から取り除くことはできません。
関節リウマチの患者様は、関節の腫脹や痛みが長期続くため、継続して服用することがあります。その場合、副作用である胃潰瘍や十二指腸潰瘍に十分注意する必要があります。

抗リウマチ薬(DMARDS)

抗リウマチ薬は、関節リウマチの原因である免疫の異常に作用して、病気の進行を抑える働きがあります。しかし、一般に効果が出現するまでに1か月から半年ほどかかるため、消炎鎮痛薬を併用することもあります。関節リウマチと診断されたら早期から使用することが推奨されます。

ステロイド

炎症を抑える作用が強く、関節の痛みや腫脹を和らげる働きがあります。消炎鎮痛薬や抗リウマチ薬を用いても、炎症が十分に抑えられない場合用いられます。
しかしステロイドは長期間使用すると、感染症、糖尿病、骨粗鬆症などを引き起こす恐れがあるため、服用するには十分な注意が必要です。

生物学的製剤

関節リウマチの治療に用いられるようになった新しい治療薬です。炎症を引き起こすサイトカインの働きを妨げ、関節破壊の進行を抑えます。生物学的製剤は抗リウマチ薬の効果が不十分な場合に使用します。

関節リウマチと上手くつきあうために

日常生活で心掛けたい習慣

関節リウマチには、医療行為として3つの治療法があります。薬物療法、手術療法、理学療法が病院で行う治療となりますが、その前段階である基礎療法がとても大切です。基礎療法とは、患者様自身が普段の生活の中で行うものです。

  • 安静:日常生活で無理をせず、体と心を安静に保ちましょう。
  • 睡眠:十分に睡眠をとりましょう。
  • お酒とタバコ:お酒はなるべく控える。タバコはやめる。
  • 保温:体を冷やさないように。
  • 関節の動きと筋力を維持する。自分でできることはなるべく自分でしましょう。

日常生活で気をつけたいポイント

関節リウマチを発症すると病気や薬の影響で、ちょっとしたことで体が疲れたり、感染症にかかることがあります。ここで日常生活で気をつけたいポイントをあげます。

  • 外出時はマスクをしましょう。
  • 帰宅時は手洗いとうがいを忘れずに。
  • 冬は加湿器などで乾燥対策を。
  • 清潔に保ちましょう。
  • インフルエンザワクチンの予防接種を受けましょう。

日常生活における注意点1

正常な指とリウマチの指の比較

日常生活における注意点2

  • 自分でできることはなるべく自分でしましょう(関節の可動域・筋力を維持する)。
  • 関節を保護するような動作を心がけましょう。
正常な指とリウマチの指の比較

食事や栄養に関する注意点

正常な指とリウマチの指の比較

関節リウマチの患者様がご利用できる制度

医療保険制度 医療費の負担を軽くするための制度

日本では国民皆保険体制により、すべての国民がいずれかの医療保険に加入しています。病気やけがをしたとき、保険医療機関にかかると、医療費の原則3割が自己負担となり、残りは加入している医療保険から支給されます。
また、医療費の自己負担が一定額を超えた場合、その超えた額が「高額医療費」として医療保険から支給されます(高額医療費制度)。

介護保険制度 要介護度に応じて介護サービスを受ける制度

加齢などが原因で身体機能が衰え、日常生活に支障をきたした方に、介護サービスを提供するための制度です。40歳以上の方は介護保険に加入し被保険者となります。

障害者福祉制度 障害者手帳があれば利用できる制度

身体障害者手帳の交付を受けることで、医療費の軽減や手当の支給、福祉サービスなどが利用できます。

医療費控除 1年間の医療費が高額になったときの負担を軽くする制度

本人や家族において、1年間に自己負担した医療費が一定額を超えるとき、税務署に確定申告すると納めた税金の一部が戻ってくる制度です。