リウマチ患者様が、外傷はないのに突然小指や薬指が伸ばせなくなることがあります。
指を伸ばす腱(伸筋腱)が集まっている手関節周辺で、リウマチにより骨の変形や炎症がおこると腱が擦り切れて、指が伸びなくなるためです。

治療せずに放置すると、薬指、中指、人さし指と順番に指が伸ばせなくなります。
手術が必要なケースでも、手術対象の伸びない指が少ないほど手術成績は良好なので、なるべく早く適切な治療を受けましょう。

成人期扁平足の主な痛みと部位

城内病院整形外科の手外科について

リウマチによる伸筋腱断裂の症状

リウマチによる伸筋腱断裂で一番多い症状は、外傷もないのに突然小指のMP関節(第3関節:こぶしの関節)が伸びにくくなるケースです。
1本腱が断裂しているのに治療せずに放置すると、薬指、中指、人さし指と順番に腱が断裂して、指が伸ばせなくなることもあります。
薬指からおこるケース、親指の第1関節を伸ばせなくなるケースもあります。

伸筋腱の断裂時に痛みを伴わないことも多く、気づいたときには指が伸びなくなっていたというケースも多く見られます。

自分の思うように指を伸ばせないことで細かな作業で支障を感じます。

リウマチによる伸筋腱断裂の原因

リウマチによる伸筋腱断裂は、2つの要素が複合して原因となります。

  • リウマチによる手関節周辺の滑膜炎が、伸筋腱を傷めて脆弱化させること。
  • リウマチにより変形した手関節の骨が伸筋腱と摩擦すること。

この2つの要素が複合すると、指の伸筋腱は手首の尺骨の上を走っているため、擦り切れるように断裂することがあります。

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リウマチによる伸筋腱断裂 診断と検査

「急に指が伸ばせなくなった」と来院されたリウマチ患者様に、伸ばせない指や手関節の腫れがあれば、伸筋腱断裂を疑います。

X線(レントゲン)撮影で、リウマチによる手関節の変形状態を確認します。

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リウマチによる伸筋腱断裂の治療

伸筋腱が1本断裂すると、他の腱も断裂することがあるため手術が必要です。
断裂している本数が多い手術では腱の再建が難しくなります。そのため術後の指の動きも悪くなりますので、放置せずになるべく早く手術することをお勧めします。

伸筋腱が断裂していても、痛みがなく日常生活に支障がなければ保存的療法を選択することもあります。
もちろん、リウマチの進行を抑えるためにリウマチ自体の治療も並行して行う必要があります。

伸筋腱断裂の腱移行術とは?

高齢のリウマチ患者様にとって、伸筋腱断裂の治療に求めることは日常生活動作を再獲得すること。
手術の目的は、「茶碗を持てるようになる、箸が使えるようになる」です。

伸筋腱断裂の手術法では、腱移行術を選択することが一般的です。他には腱移植術や関節形成術があります。

腱移行術とは、擦り切れた腱は縫合することはできないため、残っている他の指の腱に縫い付ける手術法です。
たとえば、移行術で断裂している薬指の腱を中指の腱へ移行しても、一緒に曲がるような不都合はおこりません。
リウマチにより滑膜が増殖していれば同時に切除します。

手術後およそ1ヶ月の入院が必要で、日常生活動作の再獲得を目的としたリハビリを行います。

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イラスト出典:一般社団法人 日本手外科学会 手外科シリーズ22. リウマチによる手の障害(1)伸筋腱断裂