今回のリハビリテーション部作成の「病気を知る」の記事は、リハビリの電気刺激療法で使用する“TENS”と“EMS”を、実際の症例をもとに紹介します。
電気刺激療法とは?
電気刺激療法とは、皮膚の上から弱い電気を流し、痛みの軽減や筋肉の働きをサポートする治療法です。
電気と聞くと「痛そう」「怖そう」というイメージを持たれる方もいますが、治療で使用する電気は安全性に配慮されており、多くの方が心地よい刺激として感じられます。
当院では、患者様の症状や目的に合わせて、おもに“TENS”と“EMS”を使用した電気刺激療法を行っています。
TENS(経皮的電気神経刺激療法)とは?
TENS(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation)は皮膚の上から神経を刺激し、痛みを和らげることを目的とした治療法です。
電気刺激によって痛みの伝わりを抑えたり、血流を促したりすることで、痛みの軽減が期待できます。薬を使わないため、副作用が少ない治療法の一つです。
治療中はピリピリとした心地よい刺激を感じる程度で、痛みはほとんどありません。
おもな適応疾患
- 慢性腰痛症
- 変形性膝関節症
- 関節リウマチ
変形性膝関節症におけるTENS治療の症例
患者様の症状
- 歩行時の膝の痛み
- 階段昇降時の疼痛
TENSを使用した治療
膝周囲へTENSを実施し、疼痛を軽減した状態で筋力トレーニングや歩行練習を行いました。TENSの周波数としては、今回の症例の場合であれば慢性痛にあたるため低周波(1〜10Hz程度)にて実施しました。
刺激時間は40分間で、電極は写真1のように膝蓋骨の下に貼りました。継続的に実施することで痛みが軽減し、歩行や階段昇降時の疼痛の軽減が見られました。
EMS(電気的筋肉刺激療法)とは?
EMS(Electrical Muscle Stimulation)は、筋肉を電気刺激によって動かし、筋力の維持・向上、麻痺の改善を目的とした治療法です。
自分の意思で筋肉を十分に動かせない場合でも、電気刺激によって筋肉を収縮させることが出来ます。そのため、運動が難しい方の筋力低下予防や、リハビリテーションに広く活用されています。
EMSは、運動療法と組み合わせることで、より効果的なリハビリテーションに繋がります。
おもな適応疾患
- 脳梗塞後の筋力低下
- 長期安静による廃用症候群
- 末梢神経損傷後の筋委縮
大腿骨頸部骨折後の腓骨神経麻痺(手術後)におけるEMS治療の症例
患者様の症状
- 足首を上げる動作が困難で力が入りにくい
- 歩行困難
EMSを使用した治療
術後早期より前脛骨筋へEMSを実施しました。筋肉の収縮を促しながら筋力トレーニングを併用し、随意性向上、筋再教育を行いました。
EMSの周波数としては、患者様の感じ方によって異なりますが、今回の場合は20Hz、刺激時間は20分間行いました。
電極は写真2のように前脛骨筋の走行に沿って貼りました。継続的に実施することで筋収縮が得られやすくなり、歩行時のつまずきが軽減しました。
TENSとEMSの使用目的の違い
TENSとEMS、どちらも電気を使った治療ですが、目的が異なります。症状によっては、両方を組み合わせて治療を行うこともあります。
- 痛みを軽減したい場合にはTENS
- 筋力を維持・向上したい場合にはEMS
| TENS | EMS |
|---|---|
| 主な目的は痛みを和らげること | 主な目的は筋肉を鍛える・維持すること |
| 神経を刺激して痛みを軽減 | 筋肉を収縮させる |
| 腰痛・肩こり・関節痛などに使用 | 筋力低下や筋萎縮の予防・改善に使用 |
| 「痛みを楽にする」治療 | 「筋肉を動かす」治療 |
電気刺激治療における禁忌・慎重適応について
次のような場合は原則として使用を避けるか、医師の判断が必要です。
- 心臓ペースメーカーや植込み型除細動器を使用している
- 電極を頸部前面(首の前)に貼る
- 悪性腫瘍部位への使用
- 妊娠中の腹部・腰部への使用
- 感覚障害が強い部位や皮膚に傷・感染がある部位
城内病院リハビリテーション部での電気刺激療法について
当院では、理学療法士が患者様一人一人の症状や身体の状態を評価し、最適な治療方法をご提案しています。
「痛みを少しでも楽にしたい」「筋力を取り戻して元の生活に戻りたい」といったお悩みに対して運動療法と電気刺激療法を組み合わせながらリハビリテーションを行っています。
気になる症状がある方は、気軽にスタッフまでご相談ください。