理学療法士のイラスト 適切な関係性が崩れてしまった上腕骨・鎖骨・肩甲骨を、正常な位置関係へリセットすることが、五十肩(肩関節周囲炎)のリハビリの目標です。

まず、日常の生活動作の中で、患者様が痛みを覚える動作、痛くて困っていることを伺います。そして、患者様の肩関節の状態に合わせて、適切な運動方法と運動強度を選択することを心がけて、リハビリ方針を医師とともに決定します。

今回は、五十肩(肩関節周囲炎)の治癒過程別に、どのようなリハビリを行うか、具体的に解説します。

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急性期:肩の痛みが強い時期、安静時にも痛みを感じる時期

肩関節の炎症が強いため、安静第一です。急性期のリハビリは、動きを改善していくというよりは、痛みを軽減していくことが目的です。ですから、積極的な関節可動域訓練などは行ないません。

急性期のリハビリ

急性期のリハビリは、愛護的なマッサージや自主訓練指導を中心に行います。また、肩や腕のポジショニングも指導します。患者様の身体状態に応じて、温熱療法・寒冷療法(アイシング)なども併用します。

肩や腕のポジショニングとは

急性期には、肩関節に炎症が生じて、夜間に激痛を伴うこと(夜間痛)があります。身体を横に寝かせたときに、腕の重みで炎症が起きている部分に負担がかかるためです。このような場合は、腕のポジショニングで痛みを軽減できます。

仰向け寝の場合は、肩から肘にかけて丸めたタオルや枕を敷き、身体の横に腕を置きましょう。肘を軽く曲げた状態でお腹の上に手を置く姿勢、つまり、横からみたときに、肘が肩より下がらないように、タオルや枕を置くことが大切です。
横向き寝の場合は、お腹の上に腕を置き、肩も肘も軽く曲がるような姿勢をとりましょう。 また、バスタオルなどで肩関節を覆い保温することでも、痛みは緩和されます。

肩関節を動かされると痛みを強く感じる場合のリハビリ

肩関節を動かされると痛みを強く感じる場合は、肩関節以外の首や腰、下肢の方からリハビリを行い、痛みの緩和を図ります。痛みが強い場合、身を守ろうとして、身体は痛みを回避する姿勢をとる場合があります。ゆえに、まず、不良姿勢を修正する目的で肩関節以外のリハビリを行い、その結果として、肩関節の痛みの緩和を図ります。

慢性期:肩を動かしたときに強く痛みが出現する時期

急性期と比較すると、安静時の痛みは軽減しますが、肩を動かしたときに強く痛みが出現します。痛みがあることで肩を動かせない状態は、関節や筋肉などが硬くなり、組織のアンバランス(左右差)を生みます。その結果、関節や骨がスムーズに動かなくなることが、痛みの原因です。

慢性期のリハビリ

理学療法士とともにリハビリをする様子慢性期のリハビリは、肩関節周囲のマッサージ、関節可動域訓練、筋力訓練、腱板機能訓練を行います。関節可動域訓練では、積極的に可動域拡大を図り、筋力訓練、腱板機能訓練では、左右の肩甲骨の位置関係のバランスを整えることが目的です。

長い間、関節が動かされないために、筋肉自体の収縮と弛緩の機能は低下し硬化しています。よって、筋肉自体の力が発揮できなくなっています。そのため、リハビリスタッフは、筋力向上を図るよりも、筋肉を活性化させ、筋出力の改善を筋力訓練の目的とします。

回復期:肩を最大に動かしたときに痛みが出現する時期

回復期は、炎症は治まっているが、関節や筋肉などが固くなった状態。慢性期と比較すると、安静時に痛みはなく、肩を動かしても、その途中で痛みを感じません。しかし、これ以上肩関節が動かない領域(最終域)まで肩を動かすと、痛みが出現します。 最終域の痛みは、自然治癒しにくいため、治癒するまでに数か月かかります。その理由は、長期間、日常生活の中で肩を動かしていなかったことで、関節(肩甲骨)の動きが悪くなることや筋肉の収縮性が乏しくなるからです。

回復期のリハビリ

回復期のリハビリは、ストレッチや筋力訓練、腱板機能訓練を中心に行います。痛みや筋機能の状態に配慮しながら、運動量や負荷量を増大させ、関節可動域の拡大を目指します。また、回復期になると、これまでと比べ、高度な自主訓練も可能になります。

五十肩(肩関節周囲炎)の自主訓練

早期に回復するためには、自主訓練も重要です。より一層、機能改善の効果をあげるために、継続して自主訓練を行うことが大切です。治癒過程には、個人差があるので、無理しない範囲で、あせらず根気よく行いましょう。

自宅でもできる五十肩(肩関節周囲炎)の自主訓練を ”五十肩(肩関節周囲炎)の痛みに効く3つの体操”(リンクを貼って下さい)で写真つきで紹介しています。ぜひ、ご覧ください。

あなたのペースで、根気よくリハビリや自主訓練を行いましょう

肩の痛みを伴わない日常生活動作を患者様に取り戻すために、リハビリスタッフは、患者様の肩関節の状態に合わせて、適切な運動方法と運動強度を選択することを心がけています。

五十肩(肩関節周囲炎)の治癒する速度は、患者様によって異なります。他の患者様と治癒状態を比較してあせることなく、あなたにあったペースで、根気よくリハビリや自主訓練を行いましょう。