腰椎椎間板ヘルニアは、椎間板から飛び出たヘルニアが神経を圧迫し、痛みやしびれの症状を引き起こします。

腰椎椎間板ヘルニアのリハビリテーションの目的は、腰背部や臀部にある筋肉の緊張を緩和させると同時に、体幹筋や骨盤の周囲筋を鍛えることによって、骨盤や脊椎への負担を軽減し痛みの緩和を図ることです。

今回は、腰椎椎間板ヘルニアの保存的療法と手術療法後のリハビリテーションにおいて、実際に城内病院リハビリ部で行う運動療法を詳しく紹介します。

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腰椎椎間板ヘルニア
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腰椎椎間板ヘルニアの保存的療法におけるリハビリテーション

腰椎椎間板ヘルニアの保存的療法では、痛みの緩和を目的に、主に運動療法、薬物療法や注射療法を行います。

リハビリ部が担当する運動療法では、痛みの緩和を目的に骨盤や脊椎への負担を軽減するリハビリを実施します。
さらに、日常生活で腰部に負担がかからない動作も指導します。

安静時に痛みやしびれが出現する場合の運動療法

安静時に痛みやしびれが出現する場合、運動療法はベッド上で無理のない範囲でからだを動かすリハビリを行います。

からだを前方に曲げる動きやひねる動きは、ヘルニアの症状を増悪させてしまうため注意が必要です。痛みが出現した場合は、運動の回数や負荷量を減らします。

安静時に痛みやしびれが出現する場合に行う腹式呼吸の運動療法を紹介します。

腹式呼吸

関節運動を行わずに筋力トレーニングが可能なので、痛みやしびれが強い患者様には比較的負担の低い筋力訓練です。
以下の1~4の5回繰り返しを3セット行います。

  1. 仰向けでリラックスした状態で、まずは息をゆっくり全部吐き切る。
  2. 鼻から息を吸う。空気を吸えるところまで吸い込みましょう。
  3. 息を2秒ほど止めた後、吸い込んだ空気を最後まで出し切り、お腹が凹む感覚を得ましょう。
  4. 吐き切った後、2秒ほど息を止めてから、また空気を吸い込む。
腹式呼吸を行うときの姿勢で横たわるリハビリスタッフ
腹式呼吸を行うときの姿勢

動作時に痛みやしびれが出現する場合の運動療法

動作時に痛みやしびれが出現する場合に行う骨盤運動は、骨盤周りの筋肉の固さを取ることができ、痛みやしびれなどを軽減する効果もあります。
痛みやしびれの程度は患者様によって違うので、痛みが増強しない範囲で運動を始めてください。

骨盤運動

椅子の上にやわらかいクッションを置き、骨盤を前後に移動させます。腰椎と骨盤の動きを改善していきます。
10回×2セット行います。

骨盤運動のスタートポジションをとるリハビリスタッフ
1 スタートポジション
骨盤運動で骨盤を前に移動させるリハビリスタッフ
2 骨盤を前に移動させる

手術療法後のリハビリテーション

リハビリ部では、プロトコール(リハビリテーションの治療計画・手順)に沿って手術後のリハビリを実施します。

手術後は術創部の痛みなどにより、患者様は思うように体を動かすことが難しくなります。患者様の痛みの程度を考慮し、ベッド上でできる負荷量の少ない運動からリハビリテーションを始めます。

手術療法後のリスクとして、深部静脈血栓症などを発症する恐れがあるため、予防対策も大切になります。
同時に、起立性低血圧の恐れもあるため、血圧測定や声掛けなども並行して行います。

城内病院で腰椎椎間板ヘルニアに対してよく行われる内視鏡下椎間板摘出術(MED法)後のリハビリテーションプロトコールを紹介します。

内視鏡下椎間板摘出術(MED法)後のリハビリテーションプロトコール

  • 手術後1日目…ヘッドアップを30°まで許可
  • 手術後2日目…ヘッドアップを60°まで許可
  • 手術後3日目…ヘッドアップを90°まで許可 トイレ・病棟内歩行許可(歩行器使用)
仰向けの姿勢で横たわるリハビリスタッフ
角度を計測しながらヘッドアップするリハビリスタッフ
角度を計測しながら写真のようにヘッドアップする。
  • 手術後5日目…リハビリ室で歩行許可(歩行器や平行棒を使用)
  • 手術後2週目…歩行器除去
  • 手術後3週目…積極的なCore‐ex(体幹筋、足腰の筋力訓練)を行う。

腰椎椎間板ヘルニアの手術療法後の運動療法

手術療法後の運動療法として、腹筋運動とブリッジ運動を紹介します。
手術療法後、患者様には術創部の痛みがあります。過度にからだが動くような運動や負荷の大きな運動は、症状を増悪する恐れがあるため、痛みに応じて運動量や負荷量を変えていきます。

腹筋運動

仰向けの状態で両膝を立て、お腹をのぞき込むように首を曲げます。
お腹周りの筋肉を鍛えることによって脊椎への負担を軽減させ、痛みを減少させる効果があります。
10回×2セット。痛みが強い場合は回数を5回×4セットでも大丈夫です。

腹筋運動をするリハビリスタッフ

ブリッジ運動

仰向けの状態で両膝を立て、お尻がしっかり浮くまで上げていきます。
背筋から殿筋にかけてのトレーニングが可能です。骨盤の動きを良くすることによって痛みを減少させる効果があります。
10回×2セット行います。

ブリッジ運動のスタートポジションをとるリハビリスタッフ
1 スタートポジション
ブリッジ運動でお尻を浮かせるリハビリスタッフ
2 お尻がしっかり浮くまで上げていきます

腰椎椎間板ヘルニア 自宅でできるマッケンジー体操

マッケンジー体操は、腰椎の伸展方向の可動性を回復させ、より負荷の少ない生理的に正しい姿勢をとれるように訓練する運動療法です。
痛みやしびれなどの症状が出る場合には、無理をせずに可能な体操から行ないましょう。

マッケンジー体操のスタートポジションをとるリハビリスタッフ
1 スタートポジション
マッケンジー体操で上体を起こすリハビリスタッフ
2 上体を起こす