ロコモティブシンドローム(運動器症候群、以下ロコモ)とは、加齢による筋力低下や病気などで運動機能が衰えて移動能力が低下した状態。
つまり、ロコモとは、進行すると要介護や寝たきりのリスクが高くなる状態を表す言葉です。

高齢の患者様の多い城内病院整形外科、高齢者が健康で生き生きと暮らすためには、ロコモ対策は重要であると考えています。

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ロコモとは?

Locomotive(ロコモティブ)には「機関車」という意味もありますが、「運動の」「移動の」という意味もあります。
筋肉、骨、関節など運動器(からだを動かす部分)の機能低下や病気による障害で、「運動の」「移動の」、つまり「立つ」「歩く」の機能が低下している状態をロコモティブ・シンドローム(運動器症候群)と呼びます。

ロコモは、進行して日常生活に支障が生じると寝たきりや要介護に至り、高齢者の健康寿命(健康で生き生きと暮らすことができる時間のこと)を縮める可能性があります。

超高齢化社会を迎えた現代日本で、個人にとっても社会にとっても健康寿命を延ばすことは重要な課題です。
日本整形外科学会は、「運動器は健康の根幹である」という考えを背景にロコモという概念を提唱し、「ロコモを予防し健康寿命を延ばしましょう」と呼びかけています。

骨粗しょう症はロコモに大きく関わる病気です

ロコモから寝たきりや要介護に至るケースは、整形外科の現場でも多く見られます。現場で最も見られるのは、骨粗しょう症がロコモに関わっているケースです。

高齢者は、軽微な外力が加わっただけで簡単に骨折することがあります。転倒して手をつくと撓骨遠位端(手首の関節周囲)骨折、尻もちをつくと大腿骨頚部(足の付根周囲)骨折など。

高齢者で骨折される方の多くは女性です。
高齢女性は閉経後に女性ホルモンの1つであるエストロゲンの分泌量が急減します。すると、「骨吸収」と「骨形成」のバランスの崩れや骨量減少により、骨がスカスカになる骨粗しょう症になります。
ちょっとした転倒でも骨折する危険性が高くなります。

高齢者が転倒する背景には筋力低下、バランス能力低下、視力低下、視野狭窄などあります。そして、骨粗しょう症の患者様が転倒すると軽微な外力が加わっただけで骨折してしまうのです。

「骨粗しょう症の患者様は転倒して骨折すると、寝たきりや要介護につながることが多い」というのが医療現場での実感です。

要介護度別に見た介護が必要となった主な原因の割合構成
要介護度別に見た介護が必要となった主な原因の割合構成棒グラフ

ロコモが進行して寝たきりや要介護にならないためには

ロコモが進行して寝たきりや要介護にならないためには、骨粗しょう症対策のために病院で検査・診断を受け、運動習慣・食事習慣を見直す必要があります。

骨粗しょう症対策

骨粗しょう症は「サイレント・ディジーズ(静かな病気)」と呼ばれ、痛みつまり自覚症状が現れにくい病気です。まずは、病院で検査を受けて下さい。

骨粗しょう症の治療は薬物治療中心となります。
加齢や閉経以外にも食事や運動の日常生活習慣も深く関わっています。「骨の生活習慣病」とも呼ばれる骨粗しょう症の予防には、食事療法や運動療法も欠かせません。

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骨粗しょう症 (2) 定期的に検査・診断・治療を受けることの重要性

運動習慣を身につけましょう

運動能力や移動能力は年齢とともに衰えます。習慣的に運動することで運動器機能を維持・向上させることが大切です。

  • ウォーキング・水中歩行:
    自分の足で歩くことが一番大切。継続することで歩行能力を維持しましょう。
  • 下肢筋力を鍛えるスクワット:
    普段の生活で体を支えるために必要な太もも・膝周囲の筋力を鍛える。
  • バランス能力を鍛える片脚立ち運動:
    歩行時のふらつきをなくすために、必要な股・膝・足首全体のバランス能力を鍛える。
軽い運動でも毎日続けることが大切
軽い運動のイラスト

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食生活の改善でロコモ予防

運動のあとはしっかりと食事して充分に栄養を摂りましょう。

  • 規則正しい食生活:
    高齢者の栄養不足は食が細くなることが原因。規則正しい時間に食事を摂ることで生活リズムを整えて元気な状態を保ちましょう。
  • 太りすぎや痩せすぎにも要注意:
    肥満は増えた体重分の負担が腰や膝にかかるためロコモの原因。ダイエットや食欲不振などで栄養が不足すると骨や筋肉の量が減るため、痩せすぎにも注意。
  • 楽しく食べる工夫:
    献立に変化をつけ、色の濃い野菜などを取り入れて食卓を彩り豊かに。盛り付けや器など
    の見た目も工夫して楽しく食事をしましょう。