手首に痛みを感じる男性のイラストキーンベック病は、手首にある月状骨に血行障害が生じて壊死する病気です。
手を使ったあとに、手首に痛みや腫れが出たりします。握力が低下してものを掴みにくくなり、手首の動きも悪くなります。

(参考リンク)
城内病院整形外科の手外科について

出典:一般社団法人 日本手外科学会 手外科シリーズ 16.キーンベック病

月状骨はどんな働きをしていますか?

月状骨は8つある手根骨の1つで、舟状骨と三角骨の3つの骨で介在部分を構成しています。
介在部分は、前腕の橈骨(とうこつ)と尺骨を受け止めて手首から先に力を伝え、手首がスムーズに動くように働きます。

月状骨は手首の関節組織の中でもっとも力がかかる部分です。その理由は、中心にある月状骨が他の骨と骨をつなぐ役割をしているために、手先から伝わる軸圧が月状骨に集まるからです。

月状骨と舟状骨と三角骨のイラスト
月状骨と舟状骨と三角骨

出典:一般社団法人 日本手外科学会 手外科シリーズ 16.キーンベック病

キーンベック病になりやすい方と症状

職業やスポーツなどでよく手を使う青壮年男性に多く見られます。女性や高齢者にも見られることがあります。利き手によく現れます。

手を使ったあとに、手首に痛みや腫れが出たりします。握力が低下してものを掴みにくくなり、手首の動きもスムーズでなくなります。

キーンベック病の原因と病態

現在のところ、正確な原因はわかっていません。
しかし、毛細血管が張り巡らされている月状骨に、何らかの原因で血行障害が生じ、骨への栄養が途絶えて壊死することはわかっています。症状が進むと壊死した月状骨は圧潰(潰れる)します。
一説には、月状骨の見えないほどの小さな骨折(不顕性骨折)が原因とも言われています。

キーンベック病の症状の進行度は、レントゲン写真によりステージⅠ~Ⅳに分類されます。

Ⅰ:レントゲン写真上では異常は認められず、MRIによって若干の萎縮が確認できる時期。
Ⅱ:骨萎縮や硬化などの症状はみられるが、圧潰は認められない時期。
Ⅲ:月状骨の圧潰や分節化が起こっている時期。
Ⅳ:月状骨だけでなく周囲の手根骨にも影響があり、関節症などの症状が起こっている時期。

キーンベック病 ステージⅠ~Ⅳ
キーンベック病 ステージⅠ~Ⅳ

キーンベック病 診断と検査

まず、問診において患者様が訴える症状と手背の中央を押して痛いところ(圧痛点)の有無を確認します。

キーンベック病が疑われる場合は、レントゲン(X線)検査、CT検査、MRI検査を患者様の病態に応じて行います。
レントゲン検査では月状骨が白く写り、進行していると潰れて写るため診断がつきます。CT検査でも潰れて写ります。
レントゲン写真に変化・変形が写らないような早期段階ではMRI検査が有効です。

城内病院手外科のキーンベック病の治療について

キーンベック病は進行性の病気なので、自然治癒は期待できません。
患者様の年齢、症状や病態のステージに応じて、より良い治療法を選択します。

キーンベック病の保存的療法

ステージⅠの初期段階では鎮痛剤と安静による保存的療法を選択します。手首を安静に保つためにギプスや装具で固定します。保存的療法を続けながら、レントゲン検査で経過を観察します。

保存的療法で回復する場合もありますが、キーンベック病の患者様は手を使う職業の方が多く、手首を常に安静に保つことが困難です。そのために、症状は改善せず、さらに進行する方も多く見られます。

キーンベック病の手術療法

診断時点で月状骨が圧潰している場合や保存的療法で症状が改善しなかった場合は手術を行います。患者様の年齢、行動スタイルや病態のステージに応じた手術法を選択します。

キーンベック病の主な手術法の橈骨短縮骨切り術と血管柄付き骨移植を紹介します。どちらも手術後の入院期間と手首の固定期間はおよそ2週間です。

橈骨短縮骨切り術
月状骨にかかる力を減らして疼痛を緩和させるために、前腕の橈骨を切断して短くします。
血管柄付き骨移植
月状骨の血行を再開させ、圧潰を進行させないことが目的です。

壊死した骨を取り除き、その部分に血流豊富な血管柄のついた骨を移植します。採骨は中手骨基部や橈骨遠位などから行います。
病態ステージⅡ~Ⅲにおいて有効と考えられています。

橈骨短縮骨切り術
橈骨短縮骨切り術

出典:一般社団法人 日本手外科学会 手外科シリーズ 16.キーンベック病