最近メディアで話題になることが多いドケルバン病。
理由は、産後の女性やスマホを片手操作する方が、手の不調を訴えることが多くなったからではないでしょうか。

ドケルバン病は腱鞘炎の1つ。親指につながる2つの腱(短母指伸筋腱と長母指外転筋腱)が通る手首背側の親指側にある腱鞘(腱が通るトンネルのような構造)部分で、炎症がおこる病気です。

親指につながる2つの腱(短母指伸筋腱と長母指外転筋腱)のイラスト

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城内病院整形外科の手外科について

腱と腱鞘の関係

腱によって、指は曲げ伸ばしすることができます。指につながる腱は、前腕の筋肉が生み出す手を握るなどの強い力を、指先まで伝える役割をしています。

腱鞘は腱の浮き上がりを押さえるためトンネルのような構造で腱を通しています。 通常時は、腱が腱鞘のトンネルの中を摩擦なく通ることができて、スムーズな指の動きが得られます。

ドケルバン病の原因と病態

親指につながる短母指伸筋腱と長母指外転筋腱は、親指を伸ばしたり広げるときに働く腱です。この2つの腱は手首背側の親指側にある腱鞘(手背第1コンパートメント)を通っています。

ドケルバン病の原因は、手や親指の使いすぎです。 手や親指を使いすぎると、2つの腱が腱鞘のトンネルの中で擦れて炎症がおき、腱鞘が分厚くなり、腱の表面が損傷します。 腱が腱鞘内をスムーズに通過できないことでさらに炎症が悪化する悪循環が生じ、腱鞘がより分厚くなり腱をより締め付けるようになります。

ドケルバン病の原因と病態イラスト

腱鞘内にガングリオン(ゼリー状の物質の詰まった腫瘤)ができると、腱鞘のトンネルが狭くなり腱の通過が障害されて炎症がおこることもあります。

ドケルバン病になりやすい方と症状

手の痛みを感じる女性のイラストとくに、妊娠中・産後の女性や更年期の女性は、ホルモンバランスの異常によりドケルバン病になりやすいといわれています。

手や指を使いすぎる仕事・スポーツをしている方、親指でのスマホ片手操作やゲームをやりすぎる方にも多く見られます。

炎症がおこると腱鞘の部分で腱がスムーズに動かなくなり、手首背側の親指側に痛みや腫れが生じます。親指を広げたり、動かしたりすると強く痛みます。

ドケルバン病 城内病院の診断と検査

まず問診において、患者様が訴える症状を伺い、手首背側の親指側に押して痛いところ(圧痛点)があるか、腫れがあるかを確認します。

つぎにフィンケルシュタインテスト(アイヒホッフテストとも呼ぶ)を行います。親指を握りこぶしの中に入れて手首を小指側に曲げると、ドケルバン病の患者様は腱鞘部分が痛みます。

ドケルバン病診断のため、親指を握りこぶしの中に入れて手首を小指側に曲げるイラスト

さらに必要があれば、エコー検査で腱鞘部分の状態を確認します。

ドケルバン病 城内病院の治療

ドケルバン病の治療は、痛みの程度や痛みが続いている期間により保存的療法か手術療法を選択します。

ドケルバン病の保存的療法

症状が初期や軽度のケースでは、まず保存的療法を選択します。

  • 安静:安静にして患部への刺激を少なくする。湿布を貼る。
  • 固定:ドケルバン装具で、親指が曲がらないように強制的に固定する。
  • 薬物療法:消炎鎮痛剤の内服。腱鞘内に局所麻酔入りのステロイドを注射して炎症、腫れ、痛みを緩和する。

ドケルバン病の手術療法

診察時に症状がすでに重症のケース、保存的療法で治らないケースでは、手術療法を選択します。 手術療法のメリットは、術後すぐに手首の痛みが取れることです。

城内病院でのドケルバン病の手術は、皮膚を切開したのち直視下で腱鞘を直接確認して切離し、腱を開放します。 直視下で狭窄されている腱鞘を直接確認して確実に切離したほうが、皮膚の切開部が小さく済む内視鏡手術よりも、痛みやしびれの改善率が良いと言われています。

手術は外来で可能、入院は不要です。リハビリも自宅からの通院で行えます。 切開部の傷が治るのはおよそ10日~2週間です。 

ドケルバン病の手術療法で、腱鞘を切離し腱を開放したイラスト



イラスト出典:一般社団法人 日本手外科学会 手外科シリーズ 2.ドケルバン病