トイレの前でお腹をおさえて女性のイラスト便秘を解消するための生活習慣改善とお薬による治療法”では、生活習慣改善とお薬で便秘を解消する方法のお話をしました。この記事では西洋医薬を中心に便秘を解消する薬を紹介しました。

便秘の解消には、西洋医薬のほかに漢方薬も処方されることの多いお薬です。
実際、西洋医薬の便秘薬は効き目が優れているので処方されるケースが多いのですが、漢方薬の便秘薬にも患者様にとってメリットが多いため、最近では漢方薬の処方を患者様にリクエストされることが多くなりました。

本記事では、便秘に悩まれる患者様に漢方薬を処方するメリット、城内病院漢方専門医が漢方薬を処方する際のプロトコル(手順)、便秘解消によく処方される漢方薬を紹介します。

(関連リンク)
便秘 ~症状と原因によって分類されるタイプ~

便秘解消に漢方薬を使うメリット

便秘解消に漢方薬を使用するメリットは、漢方薬に含まれる複数の生薬により、便秘の症状だけでなく関連する周辺症状も緩和できること、患者様の体質や生活環境に応じたオーダーメイドな処方ができることなどがあります。

総合的なアプローチ

漢方薬は患者様の体質や便秘の原因に対して総合的にアプローチするため、便秘だけでなく、関連する周辺症状も緩和できる。便秘の原因がストレスや体質によるものであれば、漢方薬はその調整にも役立つ。

オーダーメイドな処方

漢方専門医は患者様の症状や漢方視点での体質に応じた漢方薬をオーダーメイド処方する。つまり、同じ便秘でも患者様によって処方される漢方薬が異なることもある。

腸内環境の改善

漢方薬は腸内環境を整える作用がある。便秘には腸内のバランスが関与しているため、漢方薬によって腸内環境を改善することができる。

継続的な効果

漢方薬は便秘症状の解消だけでなく体質改善にも有用なため、服用を続ければ継続的に便秘予防を期待できる。

便秘解消に漢方薬を処方する際の城内病院漢方専門医のプロトコル(手順)

城内病院の漢方専門医は便秘に悩む患者様が来院されると、まず問診にて便秘のタイプを特定するために、便の状態や便の頻度、おなかの張りの有無、生活環境、ストレスの有無などの質問をします。

そして、患者様の便秘に漢方薬が効果あるケースや患者様に処方をリクエストされるケースでは、漢方専門医として、患者様それぞれ異なる体質・体力・抵抗力・自覚症状などの生体反応に現れる病態、また「気・血・水」の滞りや偏りを把握することで、患者様の「証」を特定します。

そして診断で現れた1つ1つのパラメータ(西洋医学視点、漢方医学視点を含む)を総合的に判断して、その患者様にオーダーメイドな漢方薬を処方します。

(関連リンク)
漢方専門医があなたの「証」を特定して漢方薬を処方する理由とは?
「証」を特定する3つ要素 ~「気・血・水」「六病位」「五臓」について~

便秘解消に処方される代表的な漢方薬

漢方薬のイラスト 便秘の症状や原因は患者様によってさまざまです。患者様の症状や原因に適した治療を提供するには、便秘のタイプを特定する必要があります。
便秘は大きく分けて機能性便秘と器質性便秘に分類されます。患者様の多いのは大腸や直腸の働きの異常による機能性便秘で、弛緩性便秘、痙攣性便秘、直腸性便秘の3つのタイプに分けられます。

便秘のタイプを特定出来たら、医師は患者様に適したお薬が、西洋医薬、漢方薬、あるいは両方を併用すべきかを決定します。
ただ、漢方薬の処方は、便秘のタイプが特定できても、患者様の証や気・血・水の状態はそれぞれ違うため、弛緩性便秘タイプだからこの漢方薬と簡単に決めることができません。
たとえば、患者様が「便秘でお腹が張って苦しい。腹部膨満感。」と訴えても、証や気・血・水の状態は患者様によってそれぞれなので、処方される漢方薬も異なるのです。

ですので、ここでは便秘解消に使われる代表的な漢方薬を紹介します。

大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)

腸を動かすことで排便を促し、便秘や便秘に伴うふきでものなどを改善する。

対象:
体力に関わらず幅広い年齢層の方が服用できる。便秘を繰り返すような方に適している。

効果・効能:
便秘、便秘に伴う頭重・のぼせ・湿疹・皮膚炎・ふきでもの(にきび)・食欲不振(食欲減退)腹部膨満など

桃核承気湯(とうかくじょうきとう)

女性の便秘に対して最も効果が高い漢方薬。「気」「血」の流れを良くして、生理前や生理中に起こりがちな痛みやのぼせなどの症状を緩和する。

対象:
体力中等度以上で、のぼせやイライラがあり便秘傾向がある方。

効果・効能:
便秘、月経不順、月経困難症、月経痛、月経時や産後の精神不安、腰痛、高血圧の随伴症状(頭痛、めまい、肩こり)、痔疾、打撲症

麻子仁丸(ましにんがん)

腸を動かすとともに、「水」を補うことで腸を潤し、便に水分を与えることで、自然に近い排便を促す。

対象:
体力中等度以下で、ウサギの糞のようなコロコロした硬い便ですっきり出ない方、おなかが張る方。

効果・効能:
便秘、便秘に伴う頭重・のぼせ・湿疹・皮膚炎・ふきでもの(にきび)・食欲不振(食欲減退)・腹部膨満・腸内異常醗酵・痔などの症状の緩和

桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)

  

胃腸を温めて働きを高めることで、腹痛を和らげ便秘を改善する。便意はあるものの残便感があり、お腹に痛みがあるときや便秘に用いられる漢方薬。

対象:
体力中等度以下で腹痛・腹脹を伴った便秘の方。胃腸が弱く、ストレスを感じると症状が悪化する方。

効果・効能:
便秘、しぶり腹(残便感があり繰り返し腹痛を伴う便意を催すもの)

潤腸湯(じゅんちょうとう)

「血」や「水」を補うことで、乾燥した腸を潤し便に水分を与えることで、自然に近い排便を促す。西洋医薬の酸化マグネシウムと類似した効果を期待できる。

対象:
体力中等度又は虚弱で、コロコロした硬い便ですっきり出ない方。肌が乾燥してきた高齢の方。

効果・効能:
便秘