カップに入った4種の漢方薬漢方薬とは、症状に効果がある複数の生薬を組み合わせた薬です。
1つの漢方薬には複数の生薬が入っているために、さまざまな症状に対して効果が期待できるのが、漢方療法のメリットです。

城内病院の漢方専門医は、五感と経験を駆使して、あなたの「気・血・水」のバランスの確認と「証」を特定します。
そして、あなたの体と心の偏った病態を見極めて、あなたの症状に対応する漢方薬を処方します。つまり、このオーダーメイドな治療が、漢方療法を選択するもう1つのメリットです。

今回は、城内病院漢方外来で、風邪のステージや症状に応じて処方されるさまざまな漢方薬を紹介します。

漢方薬の服用方法

城内病院が処方する漢方薬は、ほとんどがエキス剤(粉剤)になっており、お湯や水に溶かして飲むことができます。粉剤のため、そのまま服用することもできます。
それぞれの漢方薬の服用方法は、処方時に詳しく説明します。

風邪のステージや症状に応じて処方される漢方薬

麻黄湯(まおうとう)
風邪の初期やインフルエンザ
ひき始めのゾクゾクする寒気、発熱、関節痛、頭痛。
比較的に体力がある方向き。
からだを温めることで自己免疫力を上げ、熱が上がりきった後の発汗作用にて自然下熱を促し、熱、腫れや痛みを改善する。
葛根湯(かっこんとう)
風邪の初期
寒気がするが汗は出ない場合、頭痛、肩こり、筋肉痛。
比較的に体力がある方向き。
からだを温めて自己の免疫能力を上げ、さらに発汗を促進し熱を下げる。急性期に特徴的な肩のこりを改善する。急性期に用い、発病後1~2日を目安に処方。
桂枝湯(けいしとう)
風邪の初期 
ひき始めのゾクゾクする寒気、発熱、頭痛、神経痛、筋肉痛。
体力のない方、胃弱の方向き。
体力のない方に軽い発汗を促し、自然に汗を出させて解熱する。熱、腫れや痛みを発散する。
小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
鼻風邪、アレルギー性鼻炎、花粉症、気管支炎。
とくに、さらさらした鼻水に効果あり。眠気の副作用がないのも特徴。
体力が中くらいの方向き。
発汗作用と鼻水、痰など水分の分泌過多の状態をさばくことで症状を緩和し、水分バランスを整える働き。
麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)
風邪の初期
のどの痛み(麻酔が効いたように消える)、鼻水、悪寒、発熱、手足の冷え性。
体力のない方、高齢者向き。
高齢者のからだをわずかに温め、発汗作用を促進する。さらに水分のバランスを整え、熱、腫れや痛みを発散する。
小柴胡湯(しょうさいことう)
風邪がこじれて長引いた時、胃腸虚弱、肝炎。
胸脇苦満(肋骨の下辺りが張る)、食欲不振、吐き気、倦怠感。
体力が中くらいの方向き。
風邪が進行し、口の苦味や食欲も落ち、お腹が張ってきた方の免疫機能を調整する。疲労・倦怠感を取り、お腹の調子も整えながら、病気の回復を促進する。
麦門冬湯(ばくもんどうとう)
風邪後期の長引く咳、気管支炎、気管支喘息。
乾いた咳、空咳、切れにくい痰、喉や口内が乾いてイガイガする時。
比較的に体力がない方向き。
量は少量だが、痰がのどにへばりつき真っ赤になって苦しんで咳をする方の喉を潤し、咳を鎮める作用。
麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)
風邪後期のひどい咳、気管支炎、気管支喘息。
激しい咳が出て、発汗と口の渇きがある症状。
比較的に体力がある方向き。
粘調の痰が多く、喘息発作または喘息発作のような咳が続く方の気管支のけいれんを緩和し呼吸しやすくなる。痰が切れやすくなる。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
こじれて長引く風邪、食欲不振、胃弱、体質虚弱。
食欲不振、体の疲れ、全身の倦怠感、胃腸虚弱。
病中・病後・術後の体力の弱った方向き。
滋養強壮成分のある生薬と胃腸機能を改善する生薬効果にて、体力を回復させて抵抗力を高める。とくに風邪は治ったが、体力が落ちて食欲がない方に効果的。

城内病院漢方外来でよく処方される漢方薬(風邪に処方される漢方薬以外)

葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)
慢性鼻炎、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)。
慢性的な鼻詰まり。
比較的に体力がある方向き。
慢性だけでなく、急性期の鼻詰まりにも非常に高い効果があり、服用後4~5分後に鼻が、すっと通ることも。
抑肝散(よくさんかん)
アルツハイマー型認知症、神経症、不眠症、統合失調症。
高ぶった精神神経症状、イライラ感、不眠症。
体力が中くらいの方向き。本来は、子供向けの漢方薬。
アルツハイマー型認知症のせん妄症状など、とくに興奮発作を起こされる方に効果がある。
大建中湯(だいけんちゅとう)
慢性腹膜炎、腹痛、下痢、便秘。
お腹が冷えて痛む時、腹部膨満感(お腹の張り)。
体力がなく冷え性の方向き。
術後のお腹の張りや腸管癒着を防いだり、腸管の動きが悪いためガスで充満した腸管を、動かしてガスを減らさせるために処方。腸管の血流を増やして、お腹を温めて胃腸機能を改善する。
五苓散(ごれいさん)
硬膜下水腫、さまざまな浮腫(むくみ)、急性胃腸炎、下痢、頭痛、暑気あたり。
むくみ、吐き気、嘔吐、下痢、めまい。
体力・体質を問わない。口が乾き、尿量が少ない方に用いる。
余分に偏った水分の滞りを改善して、水分代謝を良くして無駄な水分を取り除く。

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