手を上げている男性医師のイラスト メディアでよく耳にするヘリコバクター・ピロリ菌(以下ピロリ菌)は、胃粘膜に生息する細菌です。感染すると胃炎や胃・十二指腸潰瘍、一部のポリープ、さらには胃がんの原因になると考えられています。

今回は、ピロリ菌の感染経路、どのようなメカニズムで病気に発展するか、また、城内病院の検査・除菌治療についてお話します。

ピロリ菌の感染について

現在のところ、感染源・感染経路は完全には解明されていません。ただ、最近の研究により、飲み水や食べ物を介して口から感染すると考えられています。ピロリ菌は、感染すると自然消滅することは稀で、除菌などをしないかぎり感染が続くとされます。

先進国より発展途上国、日本では50代以上の50~60%以上に対し10~20代では10~20%程度の感染者であることから、上下水道の低い普及率や劣悪な衛生状態が、菌の繁殖と感染の原因のようです。反対に、衛生環境が整備された現代に生まれた若い人たちの場合、感染率が低くなっています。

人と人の感染は、大人ではほぼ起こらず、ほとんどが幼児期に感染すると考えられています。その理由は、幼児期の胃の中は酸性が弱く、ピロリ菌が生きのびやすいためです。幼児期の主な感染経路として、離乳食が開始される生後4~8か月の幼児に、感染者から離乳食を噛んで与えることが原因と考えられています。

ピロリ菌感染の予防法について

感染源・感染経路は完全には解明されていない以上、予防法は確立されていません。しかし、衛生環境が整った現代では、ピロリ菌の感染率は著しく低下しています。予防については、幼児期の離乳食の口移し以外はあまり神経質にならなくてもよいでしょう。

ピロリ菌感染が胃の病気を引き起こすメカニズム

ピロリ菌に感染しているだけでは症状などは出ません。ピロリ菌が胃粘膜に存在するために発生させる酵素(ウレアーゼ)と胃中の尿素が反応して発生するアンモニアが、胃粘膜が傷つけます。また、ピロリ菌から胃を守ろうとするための生体防御反応である免疫反応も、胃粘膜に炎症を起こします。

ピロリ菌感染が持続すると胃粘膜は徐々に萎縮していき、胃がん発症の危険が高まっていきます。最近の研究では、胃がん患者の大半にピロリ菌感染が見られており、ピロリ菌に感染していない方の胃がん発生は非常に少ないことが分かってきています。

ピロリ菌感染による症状

ピロリ菌に感染しただけでは症状はありません。感染によって慢性胃炎になったり潰瘍が出来たりした場合は、胃痛や胸焼け、胃もたれ、吐き気、食欲不振などが出ることがあり、検査をお勧めします。

ピロリ菌検査について

手を上げている男性医師のイラストまず、除菌療法の対象となる病気があるかを内視鏡検査などで確かめます。胃炎、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの病気と診断されれば、検査でピロリ菌に感染しているかどうかを調べます。この場合は保険適用となります。
ピロリ菌検査のみを行う場合は保険適用外となり、検査は全額自費負担となります。

城内病院では、主に下記の検査を行っています。状態に応じて検査を選択することが出来ます。

  • 内視鏡検査(胃カメラ):胃カメラで胃中の組織を採取し、感染の有無を調べる。胃中を観察でき、炎症や潰瘍などの異常も同時に調べることができる。
  • 血液検査:採血を行ってピロリ菌の抗体の有無を調べる。
  • 尿素呼気検査:検査薬を飲み、一定時間経過の後、吐き出された呼気からピロリ菌に感染しているか調べる。

除菌療法について

除菌療法とは

ピロリ菌の除菌療法は、全国的に統一された治療法です。1種類の胃酸の分泌を抑える薬と2種類の抗菌薬の合計3剤を服用します。1日2回、7日間服用する治療法です。除菌中の7日間は、必ず定められた薬を定められた方法できちんと服用することが大切です。

除菌療法(1次除菌)の成功率はおよそ3分の2です。失敗した場合、別の薬に変えて2次除菌を行ないます。2次除菌では、ほとんどの患者様が除菌に成功します。

基本的には、服用から約2ヶ月後に除菌が出来たか確認するために尿素呼気検査を行ないますが、状態に応じては期間を空けて他の検査方法で確認することもあります。

副作用について

除菌療法の主な副作用は、軟便と下痢です。他に味覚異常、かゆみや発疹などアレルギー反応が現れることがあります。
副作用が現れたら、まず医師に相談して下さい。医師は、患者様の副作用の程度に従って、治療を続けるか中止するかを判断します。ただ、この副作用は薬を飲んでいる間だけのことがほとんどです。

除菌療法の保険適用について

以下の2点の条件が満たされた場合は、除菌療法の保険適用となります。除菌のみの処置の場合は保険適用外となり、治療は全額自費負担となります。

  • 胃炎、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの特定の胃の病気と確認された場合。
  • ピロリ菌検査での感染の確認された場合。 

ピロリ菌を除菌すれば、胃の病気になる確率は大幅に下がるとされています

慢性的に胃痛がある方は、ピロリ菌に感染しているかもしれません。ピロリ菌感染を放置すると、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、さらには胃がんにさえも繋がる可能性があります。

ピロリ菌を除菌すれば、胃の病気になる確率は大幅に下がるとされています。保険適用の場合と保険適用外の場合がありますが、慢性の胃痛を抱える方や胃がん家系で心配な方は、一度、病院を訪れて相談されてはいかがでしょう。

(関連リンク)
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