今回、城内病院リハビリ部が作成する記事のテーマは、ACL(前十字靭帯)損傷の手術後に行うリハビリです。手術後の保護期に実際に行うリハビリを紹介させていただきます。ご参考になれば幸いです。

(関連リンク)
不安定感や動揺性が生じる膝靭帯損傷

ACL(膝前十字靭帯)損傷の病因、病態

ACL損傷は、バスケットやサッカーなどでの急激な方向転換やジャンプの着地、ストップ動作などで生じる非接触型損傷(70%)と柔道やラグビーなどでの身体の接触で生じる接触型損傷(30%)があります。

自然経過で治癒する可能性が極めて低いため、治療は再建術で行われることが多いです。放置した場合は2次的に半月板損傷や軟骨損傷が生じ、変形性膝関節症の原因となるリスクがあります。

ACL(膝前十字靭帯)損傷の手術後のリハビリの進め方

ACL(膝前十字靭帯)損傷の手術後の理学療法のポイントは、スポーツ復帰及び再建靭帯の再断裂予防のため関節可動域訓練、筋力訓練、荷重訓練を並行して行うことです。
前十字靱帯を損傷した際、同時に半月板などの他の組織の損傷を合併することがあります。他の組織の損傷がある場合、その治癒過程に応じてスケジュールを変更することもあります。

ACL(膝前十字靭帯)損傷の手術後の保護期のリハビリ

手術直後より膝関節周辺の軟部組織癒着を生じさせないように可動域訓練を開始します。脛骨前方移動により再建靭帯にストレスがかからないように十分注意しながら行います。

筋力トレーニングは膝伸展装具装着下で体幹トレーニングを重心的に行います。また、股関節外転、外旋筋の筋力強化も図ります。
大腿四頭筋単独収縮は脛骨前方移動を引き起こすため、ハムストリングスも含めた同時収縮で行います。訓練後は膝関節の腫脹、熱感、疼痛を確認し、速やかにアイシングを行います。

ACL(膝前十字靭帯)損傷の手術後のトレーニング期のリハビリ

受傷機転が接触型、非接触型を問わず体幹や下肢の筋力訓練を十分に行います。
外力でも崩れない体幹機能(骨盤の安定性)を作ることが重要なため、バランスクッションなどを用いたトレーニングやスクワット、片脚立位、四つ這い等のバランストレーニングなど体幹機能向上を目指します。

ACL(膝前十字靭帯)損傷の手術後の回復期のリハビリ

術後3か月でジョギング、4か月でジャンプ動作を開始していきます。
再発防止のため、焦らず医師や理学療法士の指示に従って段階的に進めることが重要です。

ACL(膝前十字靭帯)損傷の手術後の保護期に行うリハビリを紹介します

今回は城内病院リハビリ部でACL(膝前十字靭帯)損傷の手術後の保護期に行うリハビリをいくつか紹介させていただきます。

RICE処置 Rest(安静)Icing(冷却)Compression(圧迫)Elevation(挙上)

手術後早期は、膝周囲に腫れや熱感などの炎症症状がみられるためRICE処置を実施します。
時間:2時間おきに15分程度

過流浴の機械

パテラセッティング 膝関節周囲の筋力訓練

膝が完全に伸びきらないように注意しながら、膝を床に押し付けるように力を入れます。
回数:20回×3セット
痛みのない範囲で行いましょう。

手首の骨の隙間をほぐす様子
手のひらをほぐす

パテラモビライゼーション 膝関節周囲の軟部組織癒着予防

両手で写真のように膝のお皿をつかみ、上下左右に動かします。
時間:5分程度

手首の骨の隙間をほぐす様子
手のひらをほぐす

主治医の指示に従って運動を実施することが大切です

前十字靱帯を損傷した際、同時に半月板などの他の組織の損傷を合併することがあります。他の組織の損傷がある場合、その治癒過程に応じてスケジュールを変更することもあります。そのため主治医の指示に従って運動を実施してください。

靭帯が完全に成熟するためには12か月かかるとの報告もあるため、継続したトレーニングや周囲も含めた習熟が必要となります。