今回のリハビリ部作成の記事では、城内病院での肩関節脱臼保存的療法のリハビリテーションを時間経過に沿って具体的に紹介します。
(関連リンク)
10代がなりやすい反復性肩関節脱臼
肩関節脱臼の病態とは?
肩関節脱臼の病態を以下の文献より引用させていただきます。
「肩関節脱臼は、前方脱臼、後方脱臼、下方(垂直)脱臼に分類され、前方脱臼が90%以上と圧倒的に多い。前方脱臼が起こりやすい運動方向としては肩関節外転・外旋・水平伸展位である。」
(引用文献:関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション24-P94)
肩関節脱臼の症状
外傷の場合、強い痛みにより肩が動かすことが出来なくなります。また、脱臼せずに亜脱臼となる場合もあります。
他覚所見(病院での検査や医師の診察により、本人以外の人が客観的に捉えることができる症状)としては、肩関節の前後方向の動揺性や前方脱臼への不安感を認めることがあります。
肩関節脱臼の検査、診断について
触診、レントゲン検査を行い、必要に応じてMRIやCT検査などが実施されます。整形外科的テストでは前方不安感テスト(anterior apprehension test)が陽性となります。
肩関節脱臼の治療とは?
保存的療法の場合は徒手整復を行った後に固定療法を行います。
脱臼を繰り返す反復性肩関節脱臼で関節唇の損傷や関節窩前下方の骨折(バンカート病変)がある場合は、鏡視下バンカート手術などの手術療法の適応となります。
肩関節脱臼保存的療法のリハビリテーション
受傷1~3週(1~21日)
徒手整復後に三角巾+バストバンドにて固定を行います。患部の安静・リラクゼーション・良肢位保持を行います。必要に応じてアイシングも実施します。
受傷4週~(22~28日)
バストバンドを除去し三角巾を付けた状態で振り子運動を開始する。反復性肩脱臼への移行を予防するため肩関節前方の伸張は禁忌となります。
受傷5週~(29~35日)
三角巾を除去し疼痛を確認しながら、肩甲骨面より前方の挙上・外転から可動域訓練を実施していきます。
腱板機能訓練も輪ゴムなどを使用し内旋位~中間位までの範囲で行う。
また、肩甲骨の動きの改善を目的に僧帽筋中部・下部を中心とした肩甲骨周囲筋の筋力トレーニングも実施していく。
受傷6週~(36日~)
肩関節第二肢位の外旋運動も含め段階的に全方向の可動域訓練を開始する。
また、上肢の筋力訓練についても段階的に負荷量を上げていく。荷重位での運動は 前額面よりも前方の運動範囲に限定して行っていく。